法人経営体の増加と個人経営体の減少
以下の図は、組織経営体別の農業経営体数(いわゆる農家数)の推移である。組織経営体は、団体経営体(農協などの団体を全て含む)と、株式会社や農事組合法人といった法人経営体、個人の経営体に分けられるが、ここでは全体の数と、個人経営体の数、法人経営体の数に注目してグラフ化した。

出典:2025年の農業センサス
まず、全体の農業経営体は平成17年の約200万件から、令和7年で約83万件まで減少、現在は平成17年の4割程度の生産者数になってしまったといえる。次に個人経営体数は平成17年の約198万件から、令和7年には約79万件になっており、農業経営体数の減少は個人経営体の減少によるものが大きいことがわかる。法人経営体に着目すれば、平成17年の約1.9万件から令和7年には約3.3万件まで増加しており、1.7倍となっている。
ここから個人経営体はこの20年で大きく減少し、その代わりに法人経営体の数が増えていることがわかる。なお、都道府県別に経営体数の全体に占める法人経営体数を法人化率として算出した結果は以下の通り。

出典:2025年の農業センサス
北海道が最も法人化率が高く14.5%であり、富山(9.6%)、石川(7.4%)、鹿児島(6.4%)が続く。北海道や鹿児島は農業生産額が大きい都道府県であるため、規模の大きい生産者が法人化しており、それが反映された結果であると考えられる。富山、石川は水稲などを中心とした集落営農が盛んな地域であることから、集落営農法人の割合が大きいことが結果として表れていると言えるだろう。
一方、法人化率が低い都道府県としては和歌山(1.2%)、大阪(1.9%)、奈良(2.1%)、東京(2.3%)、福島(2.4%)があげられる。東京や大阪といった大都市では、圃場の確保が難しいこともあり、大規模化が困難なこと、産地と消費地の距離が近く、個人生産者が直販等を行うことでも十分な収益をあげられることなどが、この要因であると考えられる。同様に、和歌山や福島などは、果樹の生産が盛んな地域であることから、個人生産者であっても通販や軒先販売などで十分な利益をあげられる傾向にあることが影響していると考えられる。
進む大規模化
生産者(経営体数)の減少について語るとき、よく言われる1つに「生産者が減少することで、生産量が大きく減少してしまうのではないか」という話がある。これもデータで確認してみよう。
経営耕地を持つ経営体数は、平成17年の約199万件から、令和7年で約82万件まで減少、平成17年の4割程度の数になってしまった。しかし、経営耕地面積は平成17年の約369万haから、令和7年では約305万haと、約18%程度の減少にとどまっている。この理由は、1経営体あたりの経営面積が増加(平成17年1.9ha→令和7年3.7haで約2倍に増加)しているためである。

出典:2025年の農業センサス
つまり、個人を中心に減少した経営体の農地を、増加している法人経営体が引き受けるような形になり、生産面積は8割以上が維持されてきた、ということである。ただし、圃場の種類別にみた場合、田(水田)や畑(園芸)は80%以上が維持されているのに対し、果樹の面積は減少幅が大きい。果物の消費量の減少に合わせてきた結果ともいえるのだろうが、今後の国内の果樹生産を考えた場合、何かしらの対策が必要かもしれない。特に果樹は植樹してから収穫できるようになるまで時間がかかるケースも多いことから、廃業する生産者から、引き継げる生産者への円滑な圃場の引継ぎができる体制構築などが求められるだろう。
さて、ここで「大規模化といっても、どれくらいの面積をみんなやっているのか」と思う方もいるだろう。もちろん経営規模は作柄によっても異なる(水田、園芸、果樹で大規模の定義は大きく違うと思われる)が、農業センサスでは耕地面積別の経営体数を集計しているため、その結果から見てみよう。

出典:2025年の農業センサス
平成17年から令和7年までの結果を見たとき、10ha未満の経営体数は大きく減少していること、10ha以上の経営体数は規模にかかわらず増加していることがわかる。特に注目したいのは面積が大きくなるほど経営体数の増加率が大きい点である。ここから、10ha以上の耕作面積を持つ経営体が農業のメインとなっていく傾向があること、そうした経営体は耕作面積の拡大を続けていっていることがわかる。
これからの日本の農業

ここまで、農業センサスで経営体の状況と農地の状況について見てきたわけだが、こうした統計調査は「現在・もしくは過去の結果」のみを表している点に注意が必要である。つまり、今の農業の全体的な状況は、20年間で高齢化等を理由に個人で農業を営む経営体が半数以下になるものの、彼らの農地を大規模化を進めていく法人経営体が引き受けることで全体的には耕作面積は減少しているが一定の生産基盤が維持されている状況であると言える。そして品目によって異なるものの、10ha以上の耕作面積を持つ経営体が増加していること、経営耕地の面積が大きい経営体ほど増加率が大きいことから、規模拡大を目指す法人に農地の集約が進んでいることが伺える。これが「現状」なのである。
では、農業経営の正解が「法人化と大規模化」にあるのか、と言われれば、それが正しいとは言えない。法人化率のデータを見るに、農業生産と販売のバランスを取り、収益があげられる場合は、法人化しない個人経営体であっても持続的に営農が継続できるからだ。経営の多様性があることも、農業の産業としての魅力の1つになりえる。家族経営、個人経営でワークライフバランスを保ちながら働いても良いし、大規模法人を経営し、上場を目指しても良い(農地所有の関係で直接の上場は困難だろうが)。
今の農業全体の動きを見ながら、今一度、自分の農業経営について、どれくらいの経営規模を、どれくらいの時期に目指していくのか、など中長期的な方向性を考えてみるのも良いかもしれない。
















