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ヴィーガンレザーとは? 農業廃棄物が生まれ変わる仕組みと農家が知るべき活用の最前線

相馬はじめ

ライター:

ヴィーガンレザーとは? 農業廃棄物が生まれ変わる仕組みと農家が知るべき活用の最前線

規格外で弾かれた野菜や残渣(ざんさ)の処理に対し、「活用する手立てはないか?」と考えたことはないでしょうか。実はその悩みの解決策として注目されているのが「ヴィーガンレザー(植物由来の革)」です。このヴィーガンレザーは、ファッション業界の流行という面だけでなく、農業における資源活用の新しい選択肢として注目を集めています。そもそもヴィーガンレザーとは何なのか。どのような作物が使われ、どんな課題があるのか。農業と異業種をつなぐその可能性と共に、現状の実態にも迫りながら解説します。

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ヴィーガンレザーとは?植物由来(プラントベース)への進化

ヴィーガンレザーとは?植物由来(プラントベース)への進化

これまでの革製品といえば、動物の皮を使った「本革」か、石油由来の樹脂で作られた「合皮(合成皮革)」のどちらかが一般的でした。
しかし今、この2つに次ぐ「第3の革」として世界中で注目されているのが、植物由来の原料で作られたヴィーガンレザーです。
ヴィーガンレザーは、動物の皮を使わないだけでなく、本来なら廃棄されてしまう農作物の皮や搾りかすなどを原材料の一部に活用しているのが特徴。いわば農業とファッションが融合した、次世代の素材として期待されています。

国内でも進む実用化

ヴィーガンレザーは、国内のブランドでもすでに実用化が進んでおり、サボテンやリンゴの皮・芯、トウモロコシの殻などが活用されています。
「植物で革ができるの?」と思われるかもしれませんが、細かくした植物原料と樹脂を混ぜ合わせる技術により、本物の革と見分けがつかないほどの質感や耐久性が再現されています。

アパレル業界が「農作物」に注目する理由

アパレル業界が「農作物」に注目する理由

ヴィーガンレザーへの取り組みが進むようになったきっかけは、衣料に使われる素材の調達から製造までの工程における環境負荷への懸念からでした。
UNIDO(国連工業開発機関)の資料によると、「皮革(ひかく)生産は水と化学物質の使用量が多く、世界でも特に汚染負荷が大きい生産部門の一つ」であることが述べられています。
そこで「動物でもなく石油でもない環境に優しい素材はないか?」と探した結果、本来なら捨てられてしまうはずだった農作物の「規格外品」や「残渣(ざんさ)」に注目が集まったのです。

野菜や果物がヴィーガンレザーになる仕組みと農家のメリット

野菜や果物がヴィーガンレザーになる仕組みと農家のメリット

「農作物が革になる」といっても、葉っぱや皮をそのまま貼り合わせて使うわけではありません。現状は、一度粉のような状態にしてから加工するのが一般的です。

乾燥・粉砕して樹脂と混ぜる

国内の事例を元に、具体的な製造工程を見てみましょう。
長野県で開発された「リンゴレザー(りんごレザレット)」の場合、原料となるのはジュースやシードルを作る際に出る「搾りかす」です。
まず水分を含んだ搾りかすを乾燥させ、細かく粉末化します。次にこの粉末をつなぎとなる樹脂(ポリウレタンなど)に練り込み加工。この工程により、リンゴの繊維を含んだ革のような素材が出来上がります。
これまでの一般的な合皮は、石油由来の樹脂が主成分でした。対してヴィーガンレザーは、植物由来の原料に置き換えることで、石油の使用量を抑えたエコな素材を実現しています。

農家のメリット:規格外や廃棄物が「資源」に

農家のメリット:規格外や廃棄物が「資源」に

農家に期待できるメリットは、これまでお金をかけて処理していた廃棄コストを削減でき、さらに新たな価値を生み出せるという点です。

廃棄ロスの解決

ジュース加工後の残りかすや、台風被害で傷ついた果実など、市場に出せない「規格外品」も、粉末にしてしまえば立派な原料になります。これにより、「育てた作物を廃棄しなければならない」という農家の心理的な負担も軽減されます。
作物をムダなく資源として生かすことは、作る責任と同時に、最後まで使い切る責任を果たすことにもつながるのです。

環境負荷の低減

廃棄物が腐るのを防ぐことも、実は重要な視点です。
例えば、フィリピンのパイナップルレザーが開発された背景には、収穫後に放置されたパイナップルの葉が腐敗し、強力な温室効果を持つ「メタンガス(CO2の20倍以上の温室効果)」を発生させていたことがありました。
これらを繊維として活用することにより、単にゴミを減らすだけでなく、地球温暖化の原因を減らすことにも直結しています。

【事例】国別・種類別ヴィーガンレザー活用の最前線

【事例】国別・種類別ヴィーガンレザー活用の最前線

世界のみならず日本国内でも、すでに多くの農作物がヴィーガンレザーとして製品化されています。ここでは代表的な事例を5つ紹介します。

パイナップルレザー:葉っぱが新たな収入源に【フィリピン】

まずは海外の有名な事例から、フィリピンなどで生産されているパイナップルレザーです。
パイナップルは実を1トン収穫するたびに、約3トンもの大量の「葉」が捨てられていました。この葉には強くてしなやかな繊維が含まれています。そこに着目し、葉から繊維を取り出して革のような素材に加工する技術が開発されました。
これまでゴミとして処理されていた葉が売れるようになったことで、農家には実の売り上げにプラスして「副収入」が入るようになりました。現在では、世界80カ国以上のブランドで採用されるほど普及しています。

参考|Dole:パイナップルのサプライチェーンマネジメントのこだわり

サボテンレザー:水不足を救うエコ素材【メキシコ】

サボテンレザー:水不足を救うエコ素材【メキシコ】

メキシコで開発されたサボテンレザーも注目を集めています。
原料となるウチワサボテンの特徴は、ヴィーガンレザーとしての機能性と、製造プロセスの省エネ化に直結しています。
まず製造面では、収穫した葉を機械を使わず太陽光だけで乾燥させるため、化石燃料をほとんど使いません。
水やり(灌漑)の設備も不要なため、一般的な革や作物に比べて、少ない水とエネルギーで素材化できるのが強みです。
さらに製品としての実用性も申し分ありません。サボテン由来のレザーは、傷や水分に強く、湿気を気にせず使えるタフさを備えています。
大切に使えば約10年は持つと言われており、環境に優しいだけでなく、これまでの革製品に引けを取らない品質になっています。

参考|ADRIANO DI MARTI COMPANY

リンゴレザー:青森と長野、二大産地の挑戦【日本】

日本国内では、リンゴの二大産地である青森と長野が、それぞれの地域性を生かした独自の取り組みを進めています。

青森県(Adam)

津軽平野を拠点とする「Sozai Center」などが中心となり、開発が進められています。ここでは、リンゴジュースの加工時に出る搾りかすをアップサイクル(高付加価値化)し、バッグや小物へと再生。産地の風土や、農家の丁寧な手作業への敬意が込められた、温かみのある素材作りが特徴です。

参考|Adam

長野県(りんごレザレット)

一方、長野県では飯綱町の「株式会社SORENA」などが開発を手掛けています。注目すべきは、シードル(リンゴ酒)醸造の過程で出る搾りかすを活用し、高い環境性能を実現している点です。粉末化した搾りかすを配合することで、従来の合皮よりも石油由来の原料を大幅に削減し、植物由来比率61%以上という数値を達成しています。

参考|株式会社SORENA

ライスレザー:クズ米が革に変わる【日本】

ライスレザー:クズ米が革に変わる【日本】

日本ならではの素材として、「お米」を使ったレザーも登場しています。原料は古くなって食べられなくなった「古米」や、精米時に出る割れた「砕米(くずまい)」、さらには飼料用としても使われにくいお米などです。これらをプラスチックに混ぜ込むことで、「ライスレジン®」と呼ばれるバイオマス素材が生まれます。この素材を加工し、革製品として生まれ変わったのがライスレザーです。

参考|バイオマスレジンホールディングス

【番外編】野菜や果物が「和紙」に【日本】

ヴィーガンレザーとは異なりますが、農業廃棄物の可能性を広げるユニークな事例として、福井県の製紙会社・五十嵐製紙の取り組みを紹介します。
五十嵐製紙では、タマネギやジャガイモの皮、ミカンなど、あらゆる野菜・果物の廃棄部分を原料に混ぜ込み、伝統的な紙すきの技術で「和紙」へと再生させています。
この素材は「Food Paper(フードペーパー)」と名付けられ、ノートやカードといった文房具に生まれ変わりました。「捨てられるものを、生活を彩るものに変える」という点では、ヴィーガンレザーと同じ思いで作られています。

参考|株式会社五十嵐製紙

ヴィーガンレザーの課題。天然皮革との関係性

ヴィーガンレザーの課題。天然皮革との関係性

新しい素材が登場すると「どちらが優れているか」という議論になりがちですが、中立な視点で両者の関係を見てみましょう。

「天然皮革=悪」ではない

ヴィーガンレザーの台頭により、「動物の皮を使うのは残酷だ」というイメージを持つ方もいるかもしれません。しかしそれは一面的な見方です。
革製品の原料は、そのほとんどが食肉用の動物から出たものです。つまり食肉文化がなくならない限り、皮は出続けます。これを有効活用しなければ、大量に廃棄・焼却するしかありません。
つまり天然皮革を使うこともまた、資源を無駄にしないエコなサイクルの一部なのです。「天然皮革=悪」と決めつけるのではなく、それぞれの役割を理解することが大切です。

耐久性と成分の課題

耐久性と成分の課題

一方、ヴィーガンレザーにも課題はあります。
現在の技術では、植物原料だけで革のような強度を出すことは難しく、つなぎとして「樹脂(プラスチック)」を混ぜて作られるものが一般的です。そのため、製品のすべてが自然に分解されて土に還るわけではありません。
しかし技術は日々進歩しています。最近では、サボテンレザーで約10年、リンゴレザーで5年以上といった、耐久性を持つものも登場しています。
これからは「どちらが正解か」ではなく、使う人がそれぞれの特性を理解し、用途や好みに合わせて自由に選ぶ時代になっていくでしょう。

農家はどう関わる?導入へのアプローチ

農家はどう関わる?導入へのアプローチ

では実際に農家がヴィーガンレザーに関わるには、どうすればよいのでしょうか。いきなり革を作ることは難しくても、できることはあります。

自分の農園の「廃棄量」と「時期」を把握する

素材メーカーなどの企業と連携するためには、安定供給できるかが重要になります。
長野県の事例では、町内で1日に1トン以上も出るリンゴの搾りかすがあったからこそ、事業化が進みました。
まずはご自身の農園で、加工後の残渣や規格外品が「いつ(時期)」「どのくらい(量)」出るのかを記録し、数値化してみましょう。「年間〇〇トンの原料がある」という具体的な数字があれば、企業との商談やマッチングの際に武器になります。

地域の連携事例を探す・相談する

地域の連携事例を探す・相談する

一人で抱え込まず、周りと連携することも大切です。
先に紹介した長野県でも、廃校を活用した地域の交流拠点にあったシードル醸造所と、起業家が出会ったことが製品化のきっかけでした。
また「Food Paper(五十嵐製紙)」のように、Webサイトで「廃棄野菜や果物の受け入れ相談」を公募している企業もあります。

まずはJAや自治体、地元の加工業者などに「地域でアップサイクルに取り組んでいる企業はないか?」と、問い合わせてみるのも有用な一歩になるかもしれません。

【まとめ】ヴィーガンレザーは農業の未来を広げる新たな選択肢

【まとめ】ヴィーガンレザーは農業の未来を広げる新たな選択肢

ヴィーガンレザーの台頭は、単なる一過性のブームではありません。これまで「ゴミ」とされていた農業廃棄物を、価値ある「資源」に変える「循環型社会」への転換点です。

農作物を食べるものとしてだけでなく、ファッションや日用品として使うものへと捉え直すこと。それは農業経営の多角化につながるだけでなく、地域経済を循環させ、産地を守るための生存戦略にもなり得ます。
まずは身近な廃棄物の見直しと、小さな情報収集から始めてみませんか。

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