平群町の風景の中で育つ、小菊と花木

中尾園芸の圃場(ほじょう)がある奈良県平群町は、生駒山系のふもとに広がる地域。都市部へのアクセスにも恵まれた立地でありながら、農地の風景が身近に残る場所でもあります。そうした環境の中で同社は、小菊と花木の生産に取り組んできました。
花は、暮らしの中で必要とされるタイミングが明確な作物でもあります。日々の彩りとして、あるいは大切な気持ちを伝える存在として。だからこそ求められるのは、品質はもちろん「必要なときに、必要なかたちで届ける」安定性です。中尾園芸が大切にしているのは、まさにその“当たり前”を丁寧に積み重ねていく姿勢だと言います。
人と人との感謝や気持ちに寄り添う花づくり
有限会社中尾園芸 代表の中尾行利(なかお・ゆきとし)さんが掲げるのは、「人と人との感謝や気持ちに寄り添う花づくり」という考え方です。

花は、言葉にしきれない思いを代弁することがあります。贈る人、受け取る人、供える人、手向ける人。花が介在する場面には、たいてい“誰かの気持ち”が存在します。中尾さんは、その背景まで想像しながら、花をつくり届けたいと語ります。
単に「きれいに咲かせる」だけでは終わらないのが、花づくりの奥深さ。どのタイミングで、どんな状態で手元に届くのか。中尾園芸は、花が使われるシーンを意識しながら、日々の管理を積み重ねています。
取引先の要望に、できるだけ真摯に。フットワークの軽さが強み
中尾園芸の“らしさ”を形づくるものの一つが、取引先からの要望にできるだけ真摯に対応するという姿勢です。
花や花木の流通では、用途や販売先の事情によって求められる仕様が変わることがあります。中尾園芸は、そうした現場の声を受け止めながら、できる限り柔軟に動くことを大切にしてきました。
中尾さんは「会社として行動する」ことも意識していると言います。個人の頑張りに依存するのではなく、チームとして判断し、動き、改善していく。その積み重ねが、取引先との信頼や次の仕事につながっていく——。同社の強みである“フットワークの軽さ”は、こうした考え方に支えられています。
耕作放棄地の解消へ。規模拡大と品目追加で“農地を守る”
中尾園芸の創業背景には、取引先の拡大に加え、今後の高齢化に伴う耕作放棄地の解消という目的がありました。
地域では、担い手不足や高齢化により、耕作が難しくなる農地が増えていく可能性があります。農地が荒れてしまえば、景観だけでなく、地域の農業基盤そのものが弱ってしまう。そこで同社は、規模拡大や品目の追加に取り組み、受け皿としての役割を強めていく方針を掲げています。
中尾さんは、規模を広げることをゴールにはしていません。目指しているのは、規模拡大をしつつ、産地としての品目を守り、盛り上げていくこと。地域の中で生産が途切れてしまえば、取引も技術も次世代へつながりません。だからこそ、増やすだけでなく“守る”視点も同時に持ち続けています。
産地の品目を守り、若手農家を育てたい。中尾園芸のこれから
今後、力を入れていきたいこととして中尾さんが挙げるのが、新しい品目への挑戦、そして取引先と提携した栽培です。

変化のスピードが上がる時代、従来のやり方だけに頼ると、産地はじりじりと縮小してしまうかもしれません。だからこそ中尾園芸は、「新しいことにチャレンジして、さらに産地を盛り上げていきたい」と考えています。
さらに、地域で担いたい役割として掲げるのが、地域の農地を守り、若手農家を育てていくこと。農地を引き継ぐだけでなく、次の担い手が育つ土壌をつくっていく。中尾園芸が描く未来は、自社の成長にとどまらず、地域全体の持続性へとつながっています。
花は“気持ち”と一緒に届けられる作物です。中尾園芸は、感謝に寄り添う花づくりを軸に、取引先の声に誠実に応え、地域の農地を守りながら、新しい挑戦で産地の熱を絶やさない——。奈良・平群町から、そんなまっすぐな営みを積み重ねています。
企業情報
■企業名
有限会社中尾園芸
■所在地
奈良県生駒郡平群町福貴畑904















