多くの猟師が自作する“くくりわな”って?

くくりわなで捕獲されたイノシシ
法定猟具(法律で使用が認められている猟の道具)の中には、「くくりわな」や「箱おとし」、小型の「箱わな」など、自作できるものもあります。
その中でも猟師がもっとも作っているであろうわなが、バネ式くくりわな。踏み板にワイヤーを巻きつけておき、野生動物が板を踏むと圧縮したバネによってワイヤーが締まって獲物を捕らえるという仕組みです。
このくくりわな、猟師によって作り方もさまざまで、工夫次第で捕獲率がグッと変わります。わな猟免許が取れた以上、「獲れるわな」も自作できるようになりたい!というわけで、くくりわな作りの第一歩に踏み出してみました。
わなやパーツはインターネットで購入できる

こちらは参考のために完成品を購入したもの。猟友会の先輩たちの間でも評判の「鎌田スプリング」というメーカーが出している踏込み式くくり罠
最初はホームセンターで道具が揃うだろうと軽く考えていましたが、いざ調べてみるとホームセンターに売っている材料だけでは心もとないことが分かりました。特に、スプリングやワイヤーはちゃんとしたものを使わないとすぐにへたったり切れたりするそうです。
そこで、「くくりわな」「通販」とインターネットで検索してみると、思ったよりも多くの専門店やメーカーがヒットします。パーツはもちろん、完成品も販売しているものの、メーカーによって良し悪しがあるみたいですし、一式5000~8000円と結構高くつきます。くくりわなを仕掛ける上限は法定制限で1人当たり30個までですが、すべてを完成品で用意するとなると、安くても15万円かかる計算に。新米猟師にとっては痛い出費です。
一方、パーツを購入してくくりわなを手作りする場合、約1/3の価格に収まることが最大の魅力と言えるでしょう。筆者がわなを30個作る計算で材料を仕入れたところ、約5万5000円で済みました(※後述する踏み板を除く)。
まずはくくりわなの材料を揃えよう

いろいろな種類のバネを購入して、使いやすさと捕獲率のバランスがいいわなを目指す
猟友会の先輩からもらった、くくりわなの作り方の冊子と、わな猟免許の講師に教えてもらったYoutube動画を参考に、まずは材料を揃えました。
Youtube動画では、おすすめのメーカーや作る際のポイントなどを熟練ハンターが詳しく紹介しているので、材料を揃える前に見て大正解でした。
狙う獲物や狩場の状況によっても理想のわなは変わるので、これからくくりわなを作ろうと思っている人は本記事を参考にしつつ、ぜひ動画や狩猟関連サイトでの情報収集もしっかり行ってください。
くくりわなに必要なパーツはこれ!

くくりわなに必要なパーツは以下の通り。前段でも書いたように、標的や使う場所によってさまざまな作り方があるので、「踏み込み式のくくりわなの一例」として参考にしてください。
| ① | 4mmワイヤー …2m×2本 | シカやイノシシ用のわなは4mm以上の太さが必要 |
| ② | バネ …1本 | 荷重が強いほど締まるスピードが速いが、圧縮に力が必要。今回は荷重13kgのものを使用 |
| ③ | 塩ビ管キャップ …1個 | 塩ビ管の太さに合わせて用意 |
| ④ | 塩ビ管 …1本 | バネを圧縮して収納する。バネの外径と圧縮時の長さに合わせて用意。今回は20mmパイプを使用 |
| ⑤ | 4mmスリーブ …4個 | ワイヤーを輪にしたりパーツを取り付けたりするた際に必要 |
| ⑥ | 留め具 …1個 | 捕らえた動物の脚を締め付けすぎないために必要。法定猟具として必須 |
| ⑦ | ワッシャー …1個 | バネを圧縮する際の受け皿として装着 |
| ⑧ | 蝶ネジ …2個 | 圧縮したバネを留める |
| ⑨ | よりもどし …1個 | ワイヤーが切れたり絡まったりするのを防ぐために2本のワイヤーをよりもどしでつなぐ。法定猟具として必須 |
| ⑩ | シャックル …1個 | ワイヤーを木などに固定する際に使用 |
| ⑪ | 踏み板(外枠) …1個 | 法定猟具は直径12cm以内。地域によって緩和されていることもあり、筆者の住む千葉県は15cm以内 |
| ⑫ | 踏み板 …1個 | 動物が踏み込むことでワイヤーが外れる。どれくらいの圧で踏み込めるかの調整が大事 |
| A | 脚切れ防止バネ …1個 | 鎌田スプリングというメーカーのオリジナル商品で、必須ではないがあると便利。脚切れを防止することで獲物の逃走や逆襲を防止できる |
| B | Oリング …1個 | 同上。ワイヤーの動作をスムーズにし、わなの動作を早める |
この中で、特に捕獲率に大きく関わるパーツが「バネ」です。バネのスペックにもいろいろあって、荷重(バネの圧縮に必要な力)が高いほど締め付けスピードが速い代わりに、圧縮するために力が必要です。
女性の筆者は、あまりに強いバネだと架設に時間がかかるため、荷重が高すぎないものをメインに、荷重13kg~21.6kgの幅を持たせて4種類購入しました。今回は最も荷重の低い13kgを使用します。
くくりわな作りに必要な工具はこれ!

くくりわな作りには専門の工具が必要となります。特に、スエージャーは一般家庭にはなかなかないもの。とはいえ、必須工具となるため、比較的価格が安いハンドタイプでもいいので手に入れましょう。
| ① | スエージャー | スリーブをカシメるために必須。ワイヤーカッター付きのものがおすすめ |
| ※ | ワイヤーカッター | スエージャーにワイヤーカッターが付いていない場合は別途必要 |
| ② | セロハンテープ | ワイヤーに巻いてからカットすると切り口がほつれにくいほか、スリーブに通す際もセロハンテープを巻いて先を細くすることで通しやすくなる |
| ③ | ラジオペンチ | ワイヤーがほつれた時やスリーブを通す際に使用 |
| ④ | ペンチ | 広がったワイヤーの先端をより直したい時に使用。ラジオペンチのみでもよい |
| ⑤ | メジャー | ワイヤーや塩ビ管の計測に使用 |
| ⑥ | 電動ドリル(5mm) | 塩ビ管キャップに穴を開ける際に使用 |
| ⑦ | ノコギリ | 塩ビ管のカットに使用 |
竹やぶ用に自分なりのアレンジも

バネが入る太さの竹と直径が12cm近い竹を塩ビ管や外筒の代用に。踏み板は、Youtubeを参考にレジャーシートを使ってみることにした
今回、わな30個分ものパーツを仕入れたので自分なりのアレンジもしてみようと思います。
筆者がわなを仕掛けようと思っている場所には竹やぶが多くあります。春のイメージが強いタケノコですが、実は12月頃から土の中では小さなタケノコができていて、山中の竹やぶはイノシシが掘り返した跡だらけ。
冬から春まで、竹やぶは絶好のわなポイント。そこで、鼻がいい彼らを少しでも欺くために、塩ビ管と踏み板の筒部分を竹にしてみることにしました。
くくりわなを実際に作ってみた!
くくりわなの構造を大まかに分けると、「ワイヤー(くくり側)」、「ワイヤー(根付側)」、「踏み板」の3つ。それぞれの作り方を紹介していきます。
1.ワイヤー(くくり側)の作り方

ワイヤー(くくり側)のめざす完成形はこちら。先端の輪っかを間違えずに作ることができれば、あとはパーツを通すだけ!

スリーブにワイヤーの先端を通した状態。ここでは、輪の中に鎌田スプリングのOリングを入れている
【1】2mにカットしたワイヤーの1本をスリーブに通し、直径1cm程度の輪を作る。先端がスリーブから4~5mm出る状態にする。
※筆者はワイヤーの摩擦を少なくして動作を早めるために「Oリング」を装着しているが、なくてもよい

【2】スエージャーの3番でスリーブを加締める。先端がスリーブから出ていることを確認して、必ず2カ所以上加締めること。

【3】輪から指2~3本分ほどの場所に締め付け防止金具を付ける。


【4】塩ビ管キャップにドリルで穴を開け、内側に接着剤を塗って塩ビ管に装着する。接着剤が完全に乾かないとバネの収納時に外れてしまうので、前日にやっておくとベスト。

輪に先端を通してくくり部を作ったところ。パーツを通す順番や向きは本パートの冒頭の写真を参照
【5】3で作った輪に反対側のワイヤー先端を潜らせてくくり部を作ってから、ワッシャー、蝶ネジ、バネ、塩ビ管(キャップが後ろになるように)、蝶ネジの順番でワイヤーに通す。
蝶ネジのボルト紛失防止のためと、ワイヤーに通したパーツが外れないように蝶ネジを2カ所とも締めておく。
2.ワイヤー(根付側)の作り方

根付け側はシャックルを付けるだけなのでシンプル
もう1本のワイヤーの先端にスリーブを通し、シャックルが通せるくらいの大きさの輪を作って加締める。シャックルを取り付けてネジを締める。
より戻しで2本のワイヤーを連結

よりもどしは、捕獲した野生動物が暴れてワイヤーがねじれたり切れたりするのを防ぐために付けることが義務付けられている
くくり側と根付側のワイヤーをより戻しで連結してカシメたらワイヤー部分は完成。
3.踏み板の作り方

こちらは購入した踏み板。溝にワイヤーを巻いた踏み板(上部分)を外枠(下部分)に載せて架設する。獲物が踏むと板が外枠の中へ落ちてワイヤーが締まる仕組み
踏み板はわな発動のトリガーとなる部分なので、「獲物にばれにくい」「踏んだらすぐ作動する」といったポイントを押さえたいもの。
直径12cm以内(地域によって緩和されている場所もある)という法的ルールは遵守しながら、工夫を凝らせるパーツです。写真の既製品のように塩ビ管を使うのが一般的ですが、今回は竹とレジャーシートを使って作成してみました。

落差が大きいほど足の高い位置をくくれるため、土に埋もれて落差が少なくならないように底の節を残してみた。また、側面にワイヤーを掛ける場所を作ることで架設時に誤作動が起きにくいようにしている
【1】内径10~12cm程度の太めの竹を用意し、片側に節を残して高さ9cm程度で切る。側面にワイヤー幅の溝を2カ所掘る。

【2】ブルーシートを竹筒より大きめにカットする。こちらは解体で使った、本来使い捨てにしている薄いブルーシート。獣の匂いがついているので、これまたカモフラージュになるかも…と取っておいた。薄いので二枚重ねて100均のシーラーで端を接着。
厚手のものならそのままでOK。これを竹筒に被せて踏み板代わりに使用する。
実にシンプルですが、これで踏み板も準備OK。くくりわなが一式完成です!
実際にわなを作動させてみた!

左と真ん中のワイヤー部と竹の踏み板が今回自作したもの。右が見本として購入した完成品
完成したら、本当に作動するかの確認です。見本として購入した完成品とは使っているパーツの数も種類も違うし、一つに至っては竹だし、本当にちゃんと動くのか…。ドキドキしながら実験開始です。
また、せっかくなので踏み板とワイヤー部の組み合わせを変えて、動作の速さやくくる高さも確認することにしました。
1.メーカーの完成品

鎌田スプリングの「踏込み式くくりわな120mm」
まずは、見本として購入してみた完成品のくくりわな。今回、筆者はキャップを片側にしか装着しませんでしたが、こちらは両端にキャップがあるので埋めても塩ビ管内に土が入らず、バネの性能が落ちなさそう。
また、キャップの先端が丸いのでワッシャーがフィットしやすかったり、踏み板側のキャップの穴が縦の切り込みになっているため縦埋めもできたりと、細部まで工夫されています。

棒で踏み板を押すと、もちろん難なく作動しました。踏み込み圧もちょうどよく、土を被せたくらいでは落ちないだろうけど、獣が踏むと素早く落ちそう、というバランスです。
2.自作わな塩ビ管バージョン×メーカーの踏み板

自作わなの塩ビ管バージョン。片側にしかキャップを着けておらず、踏み板側にも蝶ネジを付けている
続いていよいよ自作わな。塩ビ管バージョンと竹筒バージョンがありますが、塩ビ管から。踏み板はメーカーのものから試します。
ちなみに、こちらは踏み板側に蝶ネジを付けていますが、わな猟試験で見た架設用のわながこうなっていたから真似してみました。
ワイヤーを踏み板に固定しやすくするためで、バネを塩ビ管に入れたあとは緩めます。ただ、今思えばこれは試験仕様だったのかもしれません。なくてもいいし、むしろバネの圧縮時に邪魔になりました。勉強になります。

問題なく作動! くくる高さも既製品と同じくらいの位置に上がりました。とはいえ、同じメーカーのバネだから当たり前…?
肝心の動作は、ご覧の通り。既製品と同じくらいの高さをしっかりくくることができました! 初めて一から作ったくくりわな、大成功。感慨深いです。
3.自作わな竹バージョン×竹の踏み板

一気に原始的な雰囲気に…
さて、次は竹で作ったわなです。実は、すでにこの時点で改善点が目に見えています。そう、バネが入り切っていません。
なぜなら、バネを押し込んだ後に筒を抑える蝶ネジが竹の切り口に邪魔されてピタッと密着させられないからです。

痛恨のミス。もっとギリギリまで周囲の縁を切らないとだめでした
バネは圧縮すればするほど戻る力が溜まるので、緩んだままではスピードも落ちるし、土や枯れ葉が挟まるともっと性能が落ちてしまいます。これは実際に使用する前に直さないと…。

ちなみに、作動するかどうかといえば、この通り、問題なく作動しました。ただ、レジャーシートが意外にも、かなり強く踏み込まないと落ちませんでした。
竹筒の周囲に彫り込んだワイヤーを留める溝がいらなかったのか、竹とレジャーシートの摩擦のせいか…。竹筒に穴を開けて竹ひごを通してから薄い板を載せるなど、別案も試したいと思います。
4.メーカーのわな×竹の踏み板で縦埋め配置

もう一つ、「縦埋め」を想定した配置で竹の踏み板とメーカーのわなの組み合わせを試してみました。バネは縦に埋めた方が高い位置がくくれると聞きますが、どれくらいの差があるかを見てみたかったのです。
写真にはありませんが、自作のわなも同じく縦置きで試してみました。
その結果がこちら。

バネが横になるように設置した結果が7~8cmなのに比べて、縦置きは自作もメーカーのくくりわなも14cmまで跳ね上がりました! ほぼ倍の高さです。浅い位置だと外れやすくて怖いとよく聞きますが、これなら外れることもなさそうです。
2種類の自作わなを作ってみた結果、改善点こそあれどいずれもしっかり作動してくれて、高くくくるためのヒントも得られて大満足。これでわな猟にも安心して臨めます。
くくりわな作りについて、よくある質問
最後に、自分自身もくくりわなを作るまで不透明だったことも含め、よくあるQ&Aにお答えします。道具や材料選びの参考にしてください。
Q1:カシメる時に使うスエージャーはハンドタイプではだめ?
スリーブをカシメる時に必須のスエージャー(カシメ機)には手で締めるハンドタイプと、安定した場所に置いてレバーを倒すベンチタイプがあります。ハンドタイプの方がリーズナブルですが、正確性とスピードはベンチタイプが圧倒的に上!
価格は倍近くになってしまいますが、頻繁に使うなら断然ベンチタイプがおすすめです。ワイヤーカッター付きのものだとさらに便利。
ちなみに、2026年1月現在、ハンドタイプが7000円~、ベンチタイプが14000円~でした。
Q2:ワイヤーの種類にメッキとステンレスがあるけれどおすすめは?
メッキのメリットは安くて破断荷重がステンレスよりもやや高いこと。デメリットは、硬くてやや扱いにくく、すぐに錆びること。
ステンレスのメリットはやわらかくて扱いやすく、錆びにくいこと。デメリットは高価なことです。
「獲物をくくる側はへたりやすいのでメッキを使用し、木などに固定する方は長く使えるステンレスにする」(あるいはその逆)という使い分けをしているハンターもいます。まずはコスパのいいメッキで試してみながら、自分なりの最適解を見つけるのがおすすめ!
Q4:ワイヤーは何mmがおすすめ?
シカやイノシシを捕獲する場合、直径4mm以下のワイヤーは禁止されています。とはいえ、太すぎると重たくなったり切断や加工が大変だったりで、やはり使い勝手がいいのは4mm。大きなイノシシを狙う場合でも5mmくらいまでがおすすめです。
Q3:バネはどうやって選べばいい?
荷重によって動作スピードや圧縮に必要な力が変わるため、自分の力に見合ったものを選びましょう。女性でも15kgくらいまでの荷重なら扱いやすいです。
また、バネの外径や全長によってバネを収納する塩ビ管の太さも変わってきます。大きいと架設も大変になってくるので、バランスを考慮するのも大切です。
まとめ
わな猟試験で初めて実物を見た時は、「これを自分で作るの?嘘でしょ?」と思ったくくりわな。でも、実際に作ってみると、工具さえあれば女性でも簡単でした!構造を理解すると意外とシンプルで、初めて一から作ったわながちゃんと作動してくれたのも感動です。
今回は基本に忠実に(?)作ってみましたが、実践を重ねながら理想のくくりわなへとブラッシュアップしていこうと思います。わな猟ビギナーの皆さんも一緒にがんばりましょう!
















