ヤブガラシとはどんな雑草?

ヤブガラシは驚異的な繁殖力を持ち、根絶することが大変難しい雑草です。つる性のためフェンスにも樹木にも絡みついて旺盛に生い茂り、特に夏場はその勢いに圧倒されます。コンクリートの隙間から生えてきたり庭木や街路樹に絡みついたりと日常生活でも困った雑草ですが、ビニールハウスの隅から何度抜いても生えてきたり、果樹の根元から伸びて若木に被さってしまうなど、農家にとっても厄介な存在です。暖地では作物の大敵であるアブラムシの宿主となることも知られています。
原産地はオーストラリア・アジア地域で、東南アジア、インド、オーストラリアなどに広く分布しています。学名がCayratia japonicaとなっているように、初めて学名が付けられたのは江戸時代に日本で採取されたヤブガラシでした。
日本では北海道から沖縄まで全国的に分布しており、野原、河原、堤防、やぶ、空き地などに自生します。樹木の植え込みや路傍、フェンスの脇、果樹園、造林地、畑にも生えており、非常に逞しくあちこちから生えてきます。沖縄県によると、サトウキビ畑では難防除雑草として収量低下を招くなど大きな問題となっています。

発生初期のヤブガラシ
ヤブガラシの葉は鳥の足のように広がる独特な形をしており、色は鮮やかで深みのある緑色です。葉の縁にはギザギザがあります。つるは若い時は赤紫色、成長すると鮮やかな緑色、古くなると茶色っぽい色になります。若芽は赤紫色の茎に同色の芽がついています。芽はキュッと内側へ丸まっていて、山菜のような見た目です。花は直径約3〜5ミリと小さく、開花後約12時間までにオレンジ色からピンク、白へと3回も色が変わるのが特徴です。

ヤブガラシの新芽

ヤブガラシの花
ヤブガラシの基本情報と分類
| 分類 | ブドウ科 |
| 学名 | Cayratia japonica(Thunb.) Gagn. |
| 繁殖 | 種子、根断片 |
| 分布 | 北海道~沖縄 |
| 雑草化 | 果樹園、道路、鉄道、空き地、植栽、フェンス |
| 地上部生育期間 | 4~11月 |
| 開花・結実期 | 7~10月 |
| 生活型 | 多年生 |
名前の由来と「ビンボウグサ」と呼ばれる理由
ヤブガラシのつるはうねうねと伸び、他の植物に覆い被さるようにして光を奪います。葉が覆われた植物は光合成ができずに枯れてしまうため、「薮を枯らす草」という意味でヤブガラシと呼ばれるようになったと言われています。草木の生い茂る薮まで枯らすという尋常じゃない勢いをよく表している言葉だと思います。
また、ビンボウグサやビンボウカズラとも呼ばれ、こちらは「庭の手入れができないほど貧しい家に繁殖する」「ヤブガラシがあると土地が荒れて家が貧乏になる」など、由来には諸説あります。
驚異的な生命力の理由
刈れば刈るほど増える!ゾンビのように恐ろしい性質

ヤブガラシの最大の特徴は、切れば切るほど増えるというほどの繁殖力です。茎を切って土に挿すだけで発根します。つまり、刈り払い機でバラバラになった茎を土の上に放置しておくと、そこから増える可能性があります。
「挿し木で増える植物なんてたくさんあるだろう」と思った方もいるでしょう。ヤブガラシの繁殖パワーはそれだけではありません。なんと切断された根の断片からも芽が出て活着するのです。そのため、トラクターやクワで畑を耕す時にヤブガラシの根が切れると、その断片からどんどん増える可能性があります。まさにゾンビのような生命力です。
抜いても抜いても生えてくる!地下組織の秘密
ヤブガラシの根はクリーピーングルート系という構造を持っています。このタイプは、地表近くを横に広がる根と、深く下に垂直に伸びる二種類の根が組み合わさっています。水平に広がる根は地上の茎より広範囲に広がっていることが多く、また、垂直に降りる根は1メートル以上潜っていることもあります。

つまり、地上に見えているよりもずっと広く深く巨大な地下部が張り巡らされており、そのどこからでも芽を出す機会を狙っているのです。ヤブガラシが「抜いても抜いても生えてくる」という謎は、この巨大な地下組織が原因でした。
植物を覆い尽くす成長スピード
強い繁殖力のもう一つの理由となっているのが、「つる性」という特徴です。つる性の植物は、自力で直立できず、他の樹木や構造物に絡みついたり、這ったりして上へ伸びます。これにより、茎を強くしなくても高いところまで到達し、光合成に必要な光を効率よく得ることができます。
また、あらゆる方向に伸びていけるので、生育が優位な方にどんどんつるを伸ばすことができます。そのため成長が早く勢いが強くなる一方、他の植物や人間にとっては厄介者になるのです。ハウスの電子制御盤や、電柵に絡みついて困ることもあります。
ヤブガラシの効果的な駆除方法
除草剤を使う
農耕地以外であれば多年生広葉雑草に適用のある除草剤が使用できます。グリホサート系除草剤も効果がありますが、葉が枯れても根まで完全に薬剤が浸透しておらず再生することが多々あります。そんな時は複数回散布する、茎の切断面に直接薬剤を塗りつけるなどの方法を試してみてください。筆者はどうしても枯れなかった根深いヤブガラシを、知人に教えてもらった「茎の切断面を除草剤に浸す」という方法でついに駆逐した経験があります。どうしても枯れない場合はやってみるといいかもしれません。
使用上の注意点
作物を育てている場合は、必ず除草剤の適合作物の欄を見て、自分が育てている作物があるかどうか確認してください。記載がない場合は使うことは出来ないので注意してください。
手作業での駆除
タネが飛んできて芽が出たばかり!という場合は手作業で駆除できるかもしれません。(なんと茎や根からだけでなくタネからも繁殖します。)茎の根元から丁寧に掘り進め、根こそぎ掘り出してください。そして掘ったあとは圃場に放置せず必ず持ち出して処分しましょう。
張り巡らされた地下組織との戦い
しかし、すでに地下根が発達している場合、残念ながら地下の巨大組織を全て手作業で掘り出すのはかなり絶望的です。根は引っ張ると切れやすいですし、縦に横に規則性もなく縦横無尽に張り巡らされている根を探すのは大変な労力が必要です。どうしても除草剤は使いたくないという方も、他の草には一切かからないようにヤブガラシだけに直接塗りつけるなどの工夫をして限定的な使用を検討する価値が十分あるでしょう。
効率的な駆除の時期と環境条件

暖かい時期は生育が旺盛で駆除が困難なため、生育が止まる寒い時期がチャンスです。冬季はヤブガラシは休眠しているので、その間に薬剤の土壌処理や灌注処理を行うといいでしょう。耕転後の切断根からの発芽を防ぐ土壌処理も春になってくると効果が弱まってしまうので冬のうちに実施します。
駆除後のメンテナンス方法
根断片やタネを持ち込まないことを徹底!
ヤブガラシは道路脇や空き地などあちこちに生育しています。ヤブガラシが発生している場所から土や植木を持ち込むと、根断片やタネが混入して再発の原因になるので絶対にやめましょう。また、夏から秋には実が熟し、鳥によってタネが運ばれます。そのため、実が付く前に除草することが再発防止につながります。
複数回の駆除作業を念頭に!
いくら除草しても生えてくるのがヤブガラシです。一度では駆除し切れないことが多いため、効果のあった方法を根気よく繰り返しましょう。継続することで徐々に勢いが弱まり、最終的に発生がなくなります。
ヤブガラシの意外な活用法
山菜としての利用
厄介者のヤブガラシですが、若芽であれば食べることも可能です。茹でておひたしや和物に、また天ぷらも美味しいそうです。ただし、シュウ酸が含まれているので、水に晒してから調理してください。シュウ酸の摂りすぎは結石の原因となります。ちなみに東京大学大学院農学生命科学研究科によると、ヤブガラシはつるの巻きひげの先端でシュウ酸の濃度を感知することで、同種同士で巻きつかないようにしている能力を有していることが確認されています。
生薬としての活用
根は「ウレンボ(烏斂苺)」と呼ばれ、古くから生薬として利用されてきました。中国の明の時代や、日本では江戸時代にも利用されていたようです。煎じて飲んだり、すりつぶした汁を外用したりします。
効果、効能
消炎、解毒、鎮痛、利尿作用があるとされています。また、虫刺されや腫れ物には生の葉や根茎をすり潰して塗布する方法も伝えられています。
生態系への貢献

花は小さくてあまり目立ちませんが、蜜が多く、いろいろな虫がよってきます。これは生態系へ貢献していると言えそうですが、困ったことにスズメバチもたくさん集まってきます。ヤブガラシの花が咲いていたらスズメバチを警戒した方がいいでしょう。
また、耕作放棄地などに生い茂った草や低木のさらに上に被さるように生育している姿も見ます。雑草を枯らしてくれるのは良いのですが、ヤブガラシの地下根が張り巡らされた土地を耕作するのはもっと厄介です。作物を植える予定があるなら、一刻も早く勢いを止めたいところです。
まとめ
ヤブガラシは、切れば切るほど増える繁殖力、広範囲に広がる地下根、つる性による圧倒的な成長スピードなど、非常に厄介な特徴を持つ雑草です。一度定着すると駆除は容易ではありませんが、適切な時期に除草剤を活用したり、発芽初期に対処したりすることで、着実に勢力を弱めることができます。
再発防止には「持ち込まない」「実を付ける前に処理する」「効果のあった方法を継続する」ことが重要です。厄介者ではありますが、食用や生薬としての一面もあり、植物としての生命力の強さを感じさせる存在でもあります。ヤブガラシとうまく向き合いながら、畑や庭の環境を健全に保っていきましょう。
















