バナナの基礎知識

バナナのそれぞれの器官(台蕉2号という品種)

青いバナナを収穫して数日経つと黄色くなり、さらに数日おくとシュガースポットという黒い斑点が現れる!甘味が強くなって美味しい!
バナナは、東南アジアからニューギニア周辺を原産とする多年生草本植物である。
「果樹」として扱われることが多いが、実際には木本ではなく巨大な草本であり、地上に見える幹のような部分は「偽茎(ぎけい)」と呼ばれる葉鞘の集合体である。
野生のバナナは種子を持つが、現在私たちが食べている食用バナナの多くは、長い栽培化の過程で種子を失い、果実が大きく、皮が剥きやすく、食べやすくなった。バナナは、種子から増やす多くの果樹とは違い、親株の周囲から出てくる吸芽(子株)と呼ばれるものを株分けで増やすようになった。
バナナの世界的な栽培状況

調理用バナナを育てている園地
世界のバナナ生産量は年間1億トンを超え、世界で最も生産量の多い果実作物のひとつである。興味深いのは、世界で栽培されているバナナの多くが、必ずしも巨大プランテーションだけで作られているわけではないという点である。実際には、家庭の庭先や、小規模農家の畑で、色々な果樹と一緒に栽培されているもの、さらには、山や森などで半野生的な環境で育っているものなど、多くの場所で育てられている。
これは、バナナが多少の土壌差や管理のばらつきを許容できるほど、育てやすいということを示している。つまり、世界的に見てもバナナは「高度な技術がなければ作れない作物」ではなく、人の生活圏に寄り添って広がってきた植物なのである。
最近は、日本も沖縄県をはじめ、暖かい場所で、徐々に広がってきている現状でもある。
国内でのバナナ栽培の現状

島バナナを育てている園地
日本では沖縄県を中心に栽培が行われている。沖縄県では古くから島バナナが栽培されているが、最近はタイで有名なナムワ系のアップルバナナと呼ばれる品種や、台湾で育てられている台蕉シリーズのバナナ、または世界的にも人気なグロスミッチェル系やキャベンディッシュ系のものなどが栽培されている。

沖縄県で古くから育てられる島バナナ(小笠原種とも呼ばれる)

近年沖縄で人気が出てきたアップルバナナ(トールナムワ)

1960年以前はとても人気であったグロスミッチェル種
インターネットの普及に伴って、とにかく多くの品種が入手可能になったことや、それら品種の特性が徐々に明らかになってきたことから、沖縄だけでなく、本州以南でもバナナ栽培の事例が徐々に増えている。
例えば、草丈が低いドワーフ品種を活用した施設栽培や、比較的耐寒性のある系統の露地栽培などが行われている。

耐寒性があるアイスクリームバナナ(別名ブルージャワ)
バナナは南国でしか無理という従来のイメージは大きく変わりつつある。本土では、冬季の管理さえ工夫すれば、家庭菜園やベランダ栽培でも十分に楽しめる作物となってきた。
主な栄養素と効能
バナナは「手軽に食べられる果物」というイメージが強いが、栄養面では非常にバランスの良い果実であり、世界中で主食・準主食として利用されている。ちなみに、生食でそのまま食べるデザートバナナ以外にも、火にかけて調理するタイプも存在する。

バナナは調理用でも食べられる
バナナのその栄養特性は、単なる甘い果物という枠を超え、「エネルギー補給」「体調維持」「消化のしやすさ」という3つの点で優れている。
エネルギー源として優秀
バナナの主要成分は炭水化物であり、特にデンプンと糖類が豊富に含まれる。未熟な段階ではデンプンが多いが、追熟が進むにつれて糖(ブドウ糖・果糖・ショ糖)へと変化し、甘味が増していく。この性質により、バナナは、スポーツ時のエネルギー補給や体調不良時の食事、朝食や間食として非常に適している。胃腸への負担が少なく、消化吸収が速いため、「食べてすぐエネルギーになる」果物として重宝される。
豊富なカリウムが、体内の水分バランスを整える
バナナは果物の中でもカリウム含量が特に高い。カリウムは体内の水分バランスや血圧調整に関与し、余分なナトリウムの排出を助ける働きを持つ。
そのため、バナナは、むくみが気になる人や運動後のミネラル補給、塩分を多く摂りがちな食生活において、理にかなった食品である。
充実したビタミンB群が代謝をサポート
バナナにはビタミンB1、B2、B6などのビタミンB群が含まれている。これらは糖質・脂質・タンパク質の代謝に関与し、体を動かすエネルギー産生を支える役割を持つ。特にビタミンB6は、神経伝達物質の合成にも関わるため、精神的な健康やストレス耐性とも関係があるとされる。
食物繊維による整腸作用
バナナには水溶性・不溶性の食物繊維がバランスよく含まれており、腸内環境の改善に寄与する。とくにペクチンという水溶性食物繊維が含まれ、腸内の善玉菌の働きを助けると考えられている。このため、便通が気になる人や胃腸が弱い人、食生活が不規則な人にとって、日常的に取り入れやすい果物である。
市販のバナナは流通の都合上、完全に熟す前に収穫されることが多い。一方、家庭栽培では自分の好みに合わせて完熟まで待つことができる。
完熟バナナは、糖のバランスが最適化され甘味が強く、香りが豊かである。「栄養」と「おいしさ」が最も高まった状態で食べられる。そういった点においても、家庭でバナナを育てることは、大きな魅力のひとつである。
初心者におすすめのバナナ品種
バナナには非常に多くの品種が存在するが、家庭栽培でも十分に収穫できて楽しめるものもある。家庭向けとして適しているのは、背の低いドワーフ系品種がまずはオススメだ。ドワーフ系の中では、三尺バナナ(ドワーフキャベンディッシュ)や台蕉2号、ドワーフナムワなどは、育てやすく収量も多い。
背丈が低いドワーフ系品種
ドワーフタイプのものは、収穫もしやすく台風にも強いということで、バナナ栽培初心者には特におすすめしたい。ドワーフタイプにもいくつか品種があるので紹介したい。

島バナナの突然変異だと思われるドワーフタイプの島バナナ

ドワーフタイプの島バナナの株の様子(収穫後
島バナナは、古くから沖縄で栽培されており県民にも人気が高い品種だ。キャベンディッシュと異なり、小ぶりだが酸味が強いのが特徴である。

キャベンディッシュ系のグランドナイン種

果実はスーパーのキャベンディッシュバナナに近い
スーパーのバナナが好きな方は、グランドナインという品種がおすすめだ。こちらはかなり矮性で、胸の位置くらいで収穫でき驚いた。

三尺バナナと呼ばれるドワーフキャベンディッシュバナナ
沖縄県では、グランドナインのほか、三尺バナナとしてドワーフタイプのキャベンディッシュ系バナナが流通している。こちらはグランドナインほど収量は多くはないが、結実位置も低くおすすめだ。味はスーパーのバナナに似ている。
耐寒性が認められている品種
耐寒性が認められていて、本土でも結実例があるのはアイスクリームバナナと呼ばれるものだ。筆者は、10月に千葉県に住む果樹農家の友人から、露地栽培で採れたアイスクリームバナナをいただいたのだが、とても美味しかった。

アイスクリームバナナはかなり収量も多い

アイスクリームバナナは樹勢も強く、2年程度で木が3~5mに達する
また、ドワーフタイプでやや耐寒性が認められているカリフォルニアゴールドという品種もある。
こちらも育てやすいのでおすすめだ。味は酸味が強くもっちりしており美味しい。

ドワーフで耐寒性が認められているカリフォルニアゴールド
【押さえておきたい】バナナの苗木の選び方

バナナはこのような大苗を選ぶと良い
バナナの栽培が成功するか否かは、苗木選びで8割決まると言っても過言ではない。
裏を返せば、良い苗さえ選べば、その後の管理はそれほど難しくない作物でもある。
バナナ苗の種類|株分け苗と組織培養苗
市販されているバナナ苗は、大きく分けて、組織培養苗と吸芽を株分けした苗の2種類がある。
組織培養苗は病気が少なく、均一性に優れるという利点がある一方で、苗が小さい段階で流通することが多い。ただし、初心者には小さい状態の苗はあまりおすすめはできない。果実収穫までに枯らしてしまうリスクが高い。
草丈30~50cm程度の小苗は、一見すると扱いやすそうに見えるが、実際には、根量が少なく、乾燥や過湿に弱かったり、温度変化や日照ストレスの影響を強く受ける。また、球茎が未成熟で、養分の蓄えが少ないといった理由から、環境変化に非常に弱い状態にある。露地に定植したあとに、すぐに枯れてしまう可能性もある。
小苗の場合は、まずは直射を避けて、鉢植えで大きくしつつ、ある程度大きくなったら露地に植えるというのが無難である。
初心者に強くおすすめしたいのは、草丈1.5m前後まで育った大苗である。

筆者らもこのように1.5~2mの苗木を販売しているが、このような状態を畑にすぐ植えたほうが生育が良い
吸芽を株分けした苗では、大きな球茎がついていることが大切である。この球茎が十分に肥大していると、ある程度養分を蓄えているため、植え替え後の生育も早い。また、多少の乾燥や過湿に耐えられ、環境変化への耐性も高い。大苗は植え付けから収穫までが早く、春に定植したら翌年の夏には収穫できる。

60cm程度掘って、球茎の土や根っこなどを落とさないまま植え付ける
小苗から育てる場合、株が大きくなるまでかなりの時間がかかり、結果として収穫まで3年程度かかることもある。
また、苗木選びでは、なるべく大きな苗が良いが、他にも苗木選びでチェックしたいポイントがある。
● 葉色が濃く、黄化や斑点がない
● 根茎部が腐っていない
● 茎がしっかりしていてみずみずしい
大きさも重要であるが、健全さもある程度大切である。
バナナ栽培基本のキ

筆者らの島バナナ園地の様子
バナナの栽培は、非常にシンプルである。
植物を育てた経験がほとんどない人でも、ポイントさえ押さえれば十分に育てることができる。
バナナが好む環境とは?

バナナの栽培特性
バナナが好む環境は、一言で言えば「明るく、暖かく、水分がある場所」である。
生育適温は26~30℃程度で、人間の感覚的には、過ごしていて心地よい環境の状態であれば問題なくバナナは育つ。もちろんそれよりも高温になっても問題はない。また、日当たりの良い場所が好ましい。特別な設備は必要なく、日向の庭先や畑の一角で十分である。多少日照が不足してもすぐに枯れることはなく、問題なく育つことも多い。ただ、強風は苦手なので、風が直接当たりにくい場所が良い。風当たりが強い場合は、防風林を設置しよう。

強風で倒れてしまった島バナナ

2023年の台風6号で倒れたり折れたりしてしまったバナナ
バナナの栽培に適した用土

沖縄県南部のジャーガルと呼ばれる粘土質土壌でも十分に育つ(ドワーフ島バナナ)
果樹栽培では「水はけの良い土が大切」と繰り返し語られることが多い。しかし、バナナ栽培においては、水はけの良さに過度にこだわる必要はない。
バナナは本来、降雨量が多く、土壌水分が比較的高い地域で進化してきた植物である。
そのため、一時的に水分が多い環境に対しても、問題ない場合が多い。
もちろん、常に水が溜まり続けるような完全な水浸し状態は望ましくない。根が酸欠状態になれば生育は低下する。しかし、やや粘土質で乾きにくい程度であれば、問題なく生育するケースが多い。
実際、沖縄県で広く分布するジャーガル土壌は、粘土質土壌であり、水はけが良いとは言い難い土である。それにもかかわらず、バナナはジャーガルにおいて非常に旺盛な生育を示す。
これは、バナナが保水力の高い土壌をむしろ好む性質を持っていることをよく表している。
日当たりの良い位置に植える

日当たりの良い平地でも多くの品種が問題なく育つ(筆者らの遺伝子保存園地)
果樹栽培では、強い日差しに当てすぎると葉焼けしてしまうこともあり、直射日光は避けたほうがよいと言われる作物も少なくない。
しかし、バナナは日当たりを好む果樹である。一日を通して直射日光が当たる環境でも、生育が極端に悪化することはない。むしろ、日照量が多いほど葉の展開が良くなり、果実の付きも良い。ただし、苗が小さい場合はそういった日当たりが良すぎる場所に植えると、枯れてしまうことがあるので注意する。
もうひとつ、バナナの面白い使い方として、他の果樹のための影を作る植物(シェードツリー)という役割がある。
バナナの大きな葉は、直射日光をやわらかく遮る天然のシェードとなり、アフリカや南米などでは、コーヒー栽培のシェードツリーとして活用されていることもある。
直射日光に弱い果樹や、葉焼けを起こしやすい作物を露地で育てたい場合には、近くにバナナを植えることで、強すぎる日差しを和らげる環境を作ることができる。しかもバナナ自体は日照を好むため、同じ環境に違う二種類があったとしても、お互いに無理が生じにくい。筆者らも、バナナとバナナの間に、色々な果樹苗を植えている。
バナナの水やり
水やりも、バナナ栽培では難しく考える必要はない。感覚的には乾かしすぎないことを意識するだけでよい。 真夏は、特に乾燥しやすいため注意が必要であるが、地植えの場合は雨天に任せる程度でも十分に生育する。地植えであれば多少の水やり忘れが致命的になることは少なく、初心者でも安心して管理できる。
バナナは水を好む種類ではあるが、常に水浸しは逆効果である。根がずっと浸水していると根腐れや生育不良が起きる。水が溜まるような場所では、植え付けは避けよう。
バナナの袋がけ

袋がけは房ごと包み込む

内側から確認して果実肥大をその都度確認する
果実が結実したら、袋がけをしよう。袋がけによって、質の良いバナナを作ることができる。袋がけをしないと、葉っぱが擦れてバナナ表面に傷ができてしまう。また、袋がけをすることによって、冬場の寒さをある程度防ぐことが可能だ。
バナナの収穫タイミング
バナナ栽培において、最も迷いやすいのが収穫のタイミングである。
バナナは基本的には緑色のうちに収穫する果実であるので、初心者には採るタイミングが難しい。目安としては、果実が十分に肥大し、角張った形から丸みを帯びてきたタイミングである。果皮の色自体も濃い緑から、やや淡くなることが多い。夏の気温が高い時期であれば、開花から収穫まで3か月程度、少し涼しい秋や冬の開花であれば、収穫まで4~6か月程度かかることもある。

収穫時期のバナナ(島バナナ)

収穫時期のトールナムワバナナ(別名:アップルバナナ)

収穫時期の三尺バナナ

収穫後は、水洗いをしながら房ごとに切り分ける

汚れをある程度落として乾かす
収穫が不安な場合は、バナナの一番上の房だけを試し採りすると良い。
収穫タイミングが良ければ、3日~1週間程度で食べ頃になる。直射日光を避け、風通しの良い常温環境で追熟させる。
バナナは追熟型果実であり、樹上で完熟させる果物ではない。収穫後、常温で保存していくと徐々に色が黄色くなって食べ頃になる。
バナナの増やし方

バナナは株分けで増やす
バナナは、タネから育てる植物ではない。現在栽培されている食用バナナの多くは種子を持たず、人の手によって株を分けて増やしてきた植物である。ここでは、そんなバナナの株分けの方法について解説する。
基本は「株分け(子株の分離)」

株分の手順。子株の周囲の土をきちんと掘って転がすように子株を外すとうまくいく
バナナの増やし方は非常にシンプル。基本的には株分けで行う。
親株の地下にある球茎から、自然に子株(吸芽)が発生するため、これを分けて植え替えるだけでよい。苗が小さい場合は、子株の中でも剣吸芽と呼ばれるタイプが、定植後の活着が良く、初心者でも失敗が少ない。
株分けは、子株の周囲をしっかりと掘り下げて、地下部の球茎を傷つけないように親株から切り離す。地上部だけを引き抜くのではなく、必ず地下の球茎が付くようにする。スコップ一本でできる簡単な作業ではあるが、子株が大きいと大掛かりではある。
株分けのタイミングは、春か秋の時期に行うのが良い。生育が活発な時期であれば、多少根を傷めてもすぐに回復しやすい。逆に、低温期に無理に分けると、活着が遅れ、生育不良の原因となる。暖かくなってから分けるというシンプルな判断で問題ない。
組織培養苗
市販苗として多く流通している組織培養苗も、増やし方としては優れた方法である。
ただし、個人で組織培養苗を作るのは少々困難である。小さな組織培養苗を購入するのも初心者の方にとっては難しいため、こちらは熟練者向けの技術と言えるだろう。

組織培養の馴化中の株
筆者らの苗木生産会社では、小さな組織培養苗を扱ってはいるが、それを大きくするのに時間がかかったり、馴化作業にとても気を遣っている。
収穫したバナナを長持ちさせる保存方法

収穫直後の銀バナナ
バナナは典型的な「追熟型果実」であり、収穫した瞬間が食べ頃ではない。バナナは果実自身がエチレンという植物ホルモンを発生させながら成熟する果物である。そのため、緑色の未熟な状態で収穫し、追熟させてから食べるのが基本となる。収穫後の保存によって、色合いや味、香りが大きく変わるのである。

追熟が完了した状態の銀バナナ
保存の際に大切なポイントは、緑色のうちは冷蔵庫に入れないことである。
緑色の段階で冷蔵庫に入れると、追熟が進まず、食べ頃にならない。場合によっては、低温障害を起こし、皮が黒ずむ。その後常温に戻しても、甘味や香りが十分に出ないことがある。
そのため、緑色のうちは常温保存が鉄則である。追熟の基本は、風通しの良い直射日光の当たらない場所で保存すると良い。家庭栽培の場合は、房のまま吊るしておくと、傷みにくく均一に熟しやすい。ただ、ブラジル系バナナなどは、追熟とともにバナナのクビの部分が柔らかくなり、吊るしておくと、果実の一つ一つがもげてしまうこともあるので気を付ける。

ブラジル系バナナはクビが脆い
また、キャベンディッシュ系やグロスミッチェル系のバナナは家庭で追熟すると、綺麗に黄色く熟す前に食べ頃になる場合もあるので、その場合は果肉の柔らかさで判断する。一本試しにかじってみて、食べられそうであれば問題ない。

グロスミッチェルバナナもやや緑色で食べられるようになることが多い
完熟したバナナを食べきれない場合は、冷凍保存しよう。
バナナは冷凍保存に向いており、長期間、風味や甘味が損なわれにくい。
冷凍保存をする場合は、皮を剥き、食べやすい大きさに切って(または丸ごと)、ジップロックなどの保存袋や密閉容器に入れて冷凍すると良い。
冷凍バナナは、スムージーやバナナアイス、焼き菓子など幅広く活用できる。
保存方法を理解することで、色々な楽しみ方ができる。
バナナ栽培でよく見られる病害虫
バナナは比較的丈夫な作物であるが、特有の病害虫も存在する。
どんな症状が出るのかを知っておくだけで、被害を最小限に抑えることができる。
バショウオサゾウムシ

バショウオサゾウムシの成虫

バショウオサゾウムシの幼虫(バナナの球茎を食害する)
バナナ栽培で最も注意したい害虫のひとつである。成虫や幼虫が地下の球茎を食害し、株を弱らせる。
主な被害のサインとしては、生育が急に悪くなる、株がぐらつくなど。球茎を掘ると、内部が食べられていることも。被害が進行すると、倒伏や枯死につながることもある。一度園地に入れると根絶が難しいため、健全な苗を選んで畑に導入するよう心がけたい。
被害株を見つけた場合は、早めに掘り上げて除去する。
また、果実収穫が終わった株は、放置せずにきちんと除去することが大切である。
バナナツヤオサゾウムシ

茎にゼリー状の液体が出てたら潜んでいることが多い

バナナツヤオサゾウムシの成虫
バナナツヤオサゾウムシと似た害虫で、成虫や幼虫が偽茎内部を食害する。外からは分かりにくく、気づいた時には被害が進んでいることがある。
主な被害のサインとしては、葉の展開が急に悪くなることや、偽茎を切ると内部に食害跡が見られることでわかる。
枯れた偽茎を放置しないことが最大の予防策である。収穫後や枯死した株は、早めに切除・処分しよう。

バナナの茎は収穫後、粉々にする
バナナセセリ
成虫はチョウの仲間で、幼虫が葉を食害する。葉を大きく食べられるため、見た目のインパクトが大きい。
主な被害のサインとしては、葉が裂けて、くるくると巻いたような状態になる。そのロールの中に幼虫がいることが多く、小さな黒い糞も多数見られる。
葉が多少食べられても、生育に致命的な影響が出ることは少ないが、見つけ次第、幼虫を取り除こう。

バナナの葉がくるくる巻いてる様子

中を開けたらバナナセセリがいる
パナマ病
パナマ病は、土壌中の病原菌によって引き起こされる非常に深刻な病害である。一度発生すると、その土壌での栽培が困難になる。
主な症状としては、葉が黄化し、下垂する。さらに、偽茎が裂けたり、内部が褐変する。最終的に枯死してしまう。
現在の日本の家庭菜園では発生リスクは高くないが、苗木の持ち込みには注意が必要である。信頼できる健康な苗を使うことが最大の予防策となる。
バンチートップウイルス
葉が束状に立ち上がるのが特徴的なウイルス病で、アブラムシによって媒介される。
主な症状としては、葉が小さくなり、密集し、生育が著しく抑制される。
発症株は早めに除去する必要がある。苗を植え付ける際には、健全な苗を導入しよう。
シガトカ病

シガトカ病の初期症状
葉に黒褐色の斑点が現れる病害である。主に葉の光合成能力を低下させる。
多少の斑点であれば、大きな問題にはならない。風通しを良くし、古葉を整理することで発生を抑えられる。
改善しない場合は株の更新をしよう。
バナナ栽培における病害虫対策で、最も効果的なのは、枯れた葉や偽茎を放置しないこと、風通しを確保すること、健全な苗から栽培を始めるという基本的なことが重要である。農薬に頼らなくても、これらのトラブルは予防可能である。
バナナ栽培でよくある質問 Q&A
Q1 種から育てることはできますか?
一般的な食用バナナは種子を持たないため、タネを手に入れることは難しい。基本的に増やす場合は株分け(子株)による。ただし、一部のナムワ系品種ではまれにタネが入ることもあり、そのようなものはタネから育てることができる。実生から育てると親株とは性質が異なってしまうので、どのような果実ができるのかはお楽しみ!

タネから発芽したバナナ苗
Q2 鉢植えと地植え、どちらが向いていますか?
どちらでも良いが、強いていうなら初心者には地植えがおすすめである。露地で越冬する場所であれば地植えをしよう。水切れや肥料切れのリスクが低く、管理が楽である。露地で越冬するのが難しい場合は、鉢植えでも良い。鉢植えは水管理に少し手がかかるが、他の果樹と比較してもそれなりに簡単である。
Q3 台風や強風は大丈夫ですか?
台風や強風では株が倒れやすいので注意が必要である。葉は風で裂けやすいが、生育には大きな問題にならない。ただ、株が倒れると果実生産ができなくなる。倒伏防止のため、防風林を設置したり、支柱などを用いて対策をしよう。
Q4 収穫後の親株はどうすればいいですか?
地際で切り倒し、処分しよう。収穫した後の株はそのままにしないこと。ゾウムシなど害虫の温床になる。筆者らはスコップで細かく刻んでいる。
Q5 子株は全部残してもいいですか?
全ての子株を育てるのは、おすすめしない。
元気な子株を2~3本残し、あとは間引くことで、収穫の安定につながる。
バナナは密集して日当たりが悪くなると途端に果実つきが悪くなる。程度に間引きをして、光を入れよう。
まとめ
バナナは初心者でも取り組みやすく、失敗しにくい果樹作物である。剪定や接ぎ木といった高度な作業はほとんど必要なく、日当たりの良い場所と最低限の管理さえできれば、旺盛に生育し、しっかりと果実を実らせることができる。 病害虫についても、必要以上に恐れる必要はない。枯れた偽茎を放置しない、健全な苗から始めるといった基本管理を守ることで、多くのトラブルは未然に防ぐことができる。本記事をきっかけに、ぜひ一度バナナ栽培に挑戦し、自分で育てたバナナを食べるという体験を味わってほしい。果樹栽培の楽しさを実感する最初の一歩になるはずだ。



















