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食品の消費税0%で農家は損する?得する?これからの影響と対策

連載企画:農業トレンド解析局

食品の消費税0%で農家は損する?得する?これからの影響と対策

2026年2月の衆議院総選挙では、多くの政党が物価高対策として消費税減税や食品の消費税の期限付きの0%案などを公約として掲げた。今回は、その中でも実現が有望視されている「食品の消費税0%」が実現した場合の農業生産者への影響について考えてみよう。

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売上や収益に関する影響

これについて、実際に影響を考える場合は、様々な仮定を置かねばならない。しかし、詳細に考えるためには実際にどんな制度になるのか、明確な情報が必要になるため、今回はできるだけシンプルに考えていきたい。

まず、農業生産者でインボイス制度(※)を使っていない「免税事業者」については、消費税の納入義務が無いことから、影響は販売方法などで分かれる。農協特例などで、もともと消費税対応を農協等に任せていた場合で、消費税抜きで売上計上をしていた生産者は、ほとんど影響はないだろう。しかし、免税事業者で販売時に消費税を受け取っていた場合は、消費税8%分を請求できなくなるため、純粋に売上と収入が8%減少することになる。

次に、インボイス発行事業者に登録している場合であるが、これも簡易課税方式か、本則課税方式をとっているか、で状況が変わる。
本則課税方式は、消費税の仕入税額控除について、受取分と支払い分の両方を明確にして、消費税の納税をする際に、売上にかかった消費税から仕入や経費にかかった消費税を差し引いて消費税額を計算する方式である。

そのため、本則課税方式の場合は売上にかかる消費税が0%になり、0円になる一方、農業資材や農機具、燃料費などにかかる消費税10%はそのままとなるため、決算・確定申告時に支払った消費税の還付を受ける形となる。

よって、基本的には収益のマイナスは生じないが、売上における消費税分が減る一方で、支払うコストには消費税が生じることから、キャッシュフローが悪くなる可能性がある。現金の状況と、資金繰りには、今まで以上に気を付ける必要があるだろう。

簡易課税方式の場合が、最も影響が大きくなる。簡易課税方式は、5,000万円以下の課税事業者が、売上に係る消費税額に、みなし仕入率(農業は80%)を乗じて算出した金額を仕入に係る消費税額として、売上に係る消費税額から控除できる仕組みである。

例えば、売上2000万円の生産者が、売上に対して160万円の消費税を受け取っていた場合、仕入にかかる細かい消費税の計算をすることなく、仕入にかかる消費税額は160万円×80%=128万円として、160万円-128万円=32万円の消費税納入、とする制度である。

ここで問題となるのが、この簡易課税の場合、売上に係る消費税が0%になった場合、0円×80%となり、仕入税額控除の計算が不能になり、仕入にかかる消費税の控除額が0円になってしまうことである。これは場合によっては、生産者の消費税負担が増してしまう可能性がある。

インボイス制度(※)

インボイス制度は2023年10月1日~スタート、売手がインボイスを交付し、買手がそれを受け取って保存することで、消費税の仕入税額控除を受けられる制度。インボイス発行事業者に登録すると、インボイスを交付できるようになり、買手に渡すと。買手は消費税の仕入税額控除を受けられる。

どう対応していくか?

免税事業者で今まで、消費税分を利益として受領していた生産者は、同じ収益をあげようとする場合は、消費税が0%になるタイミングで、その分を本体価格に上乗せする必要がある。
ただ、その場合、他の商品は消費税8%分だけ価格が減少するため、価格競争に負けてしまうリスクや、消費税が0%になることでの需要増(消費者の購入増)の恩恵を受けられなくなるリスクがある。

課税事業者で、本則課税方式を採用している場合は、資金繰りとキャッシュフローに気をつける必要があるが、大きく何かを変える必要性は少ないだろう。
ただし、売り先、取引先の状況については注意が必要である。売り先が簡易課税方式の事業者である場合など、何かしらの要請がある可能性がある。

一方、簡易課税方式を採用している場合は、対応を考えなければならない。一つは本則課税方式に転換し、しっかりと仕入れ税額控除を受けられるようにすることだ。
ただし、事務処理の工数は大幅に増える可能性があるため、会計ソフトウェアの活用なども含めた検討が必要である。

もう一つは、仕入れ税額控除ができなくなる点を踏まえ、そのコストを販売価格に転嫁することである。ただし、これは免税事業者のところで述べたような販売量の減少を招くリスク等がある。
実際には、簡易課税方式を継続した場合の負担額の変化について、税理士などの専門家に相談したうえで、どうしていくかを考えていく必要があるだろう。

特に2年間という時限が付く場合は、どの程度まで時間とコストをかけて対応するべきか、熟慮が必要となるだろう。

消費税0%をチャンスにしたい

いろいろと対応が必要になるなど、面倒かもしれない消費税0%であるが、販売面から見れば消費者の支払金額が減少することで、需要の喚起や売上増を見込めるチャンスでもある。
消費税0%への対応にかかるコストや手間よりも売上増加による利益の方がプラスになれば、経営上ベストであろう。

大きな制度の変化の裏側には新たなビジネスチャンスが眠っていることが多い。今回の消費税0%についても、営業や販促活動とうまく組み合わせ、売上増加、収益増につなげていきたい。

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