タラの芽を専門で栽培している農家は少なく、それゆえにネット上に信頼性のある情報は多くありません。筆者の私自身もタラの芽の栽培経験がないため、今回の記事では、主に信頼できそうな機関の文献を参考に、園芸指導員の視点でまとめてみました。参考URLは最後にまとめておきます。皆さんも一緒に勉強していきましょう!
タラの芽って何者?
タラの芽は「タラノキ(ウコギ科)」の若芽です。落葉低木で、樹高はだいたい2〜4メートル。幹や枝にトゲがあるタイプが多いので、触ると“痛っ”と春の洗礼を受けます。
タラの芽は食味の良さや栄養価の高さなどから「山菜の王者」と呼ばれる一方で、「新芽の展開が早く、採取時期を逃すと食用にならないので注意」とも言われています。つまり、旬は短い。ぼーっとしてると春が終わります。
栽培適地の結論:日当たり+排水(この2つで8割)
タラの芽が健やかに育つかどうかは、日当たりと排水でほぼ決まります。この2つを押さえるだけで、成功にぐっと近づきますよ。
①日当たり:タラノキは「陽樹」です
タラノキは、日当たりの良い場所が適地とされる「陽樹」です。
基本は山菜なので、山の中で自然に育つ訳ですから、何がなんでもという訳ではないでしょうが、日当たりが良いに越したことはないということです。
だから:まずは日当たり優先で場所決め(土より先に)。
②土と水:深い土、腐植・排水良好
土層が深く、腐植質に富み、十分な水分がありながらも排水性の良い土が適しています。停滞水のある場所や湿地、地下水位が高い場所は排水性が悪いため避けましょう。
また、完全に平坦な土地よりは緩やかな傾斜がある土地の方が適しています。
タラノキは日当たり同様、土の状態にも幅広く適応できますが、タラの芽を毎年収穫し続けることを考えると、なるべく上記に近い条件の環境を選ぶことが理想です。
だから:湿りやすい土地は避ける/高畝・排水の工夫が前提。
③風:強風より「風当たり少なめ」が無難
基本的には風当たりの少ない場所がおすすめです。家庭菜園でも、風が強い場所は乾きやすく、芽や枝の管理も難しくなりがちですからね。
根を使って増やそう!
タラノキは根から発芽しやすいため、根を短く切って土にさし、増殖させる「根ざし法」がおすすめです。
だから:苗や種を買う前に“根で増やす”手段を模索する。
さし根用の根の採取時期は休眠期
採取時期は地域にもよりますが、休眠期である秋~春頃です。葉がなく、樹液の流動が始まる前に採取しましょう。
さし根用の根の採取と植え付け

さし根用の根は長さ15センチ、太さ4ミリ以上(鉛筆くらいあると安心)を目安にして、準備しましょう。
3月上旬~4月上旬を目安に植え付けします。約30センチ間隔、根の先を下に約10~20度の角度をつけて行いましょう。
1年目は雑草対策をしっかり
さし根を植えたらそこで終わりではありません。発芽1年目のタラノキは雑草に負けやすく、放置すると雑草に光や栄養を奪われてしまいます。特に、雑草が勢いづく5月以降はこまめに除草を行いましょう。2年目以降は枝葉が繁茂すれば除草が不要になるので、1年目の雑草対策が重要です。
だから:発芽までの期間を見越して「除草する体制」を先に作る(マルチ・敷き草・見回り)。
収穫のベストは「葉が開く前」「10センチ前後」

収穫のタイミングは頂芽が約10センチに伸び、かつ、新葉の開く前がベスト。この時期は品質も良く収量も多いため、このタイミングを逃すと価値が下がってしまいます。
例えば長野県(平地)の露地栽培では、収穫は4月上旬〜下旬、価値が高いとされる頂芽(一番芽)は4月中旬までが目安なので、わずかなタイミングを逃さないように注意しましょう。
収穫後の管理:切る。低くする。毎年“更新”させる

タラノキは放っておくと4メートルほどにまで伸びてしまうので、収穫後は毎年、4~5月頃に枝を切断する「切り返し」を行うことが大切です。古い枝を取り除くことで、新しい枝の成長が促され、寿命を延ばすことができます。
具体的には、2年目(定植から1年後)には地上30センチくらいで芽を4〜5芽残して剪定(せんてい)、以降は新枝に1〜2芽を残して剪定するとよいです。
だから:毎年切り返しを行い、高さを維持しよう。
【番外編】ふかし促成
ここまで根ざし法について詳しく説明してきましたが、冬から春にかけて、土に植えずビニールハウスなどの暖かい場所で芽を出させる「ふかし促成」という栽培方法もあります。
具体的には枝を25~30センチに切り、温床(おがくず床または水浸法)で成長を促進させ(これを“ふかし”と言います)、新芽を出します。おがくず床の場合は20センチ程度の深さになるようにおがくずを入れ、十分に水を含ませます。水浸法の場合は3~5センチの深さになるように水を張ります。いずれも、切った枝を立ててビニールやポリのフィルムで覆います。
温度は地域や条件によっても異なりますが、腐敗を避けるため高温多湿にならないように注意することが大切です。
栽培を始めてからおよそ1カ月で収穫できますよ。
だから:自分の設備条件に合わせて、まずは“腐敗しない範囲”を優先し、芽の伸びを見て微調整。
データで見る現実:「繁殖力・盗難・草」がクセ者
タラの芽は人気が高い一方で、繁殖力が強く畑での生育管理が難しいことや、盗難のリスクがあることなどから、栽培が普及していないという面もあります。
ここは筆者の推論ですが、家庭でも“人目につく場所に植える”のは慎重にするのがよさそうです。明らかに家の敷地内であれば盗難も少ないでしょうが、野生の山菜なのか誰かが管理して所有している山菜なのかは、一般の人からは区別しづらいものです。
これは意外に多い事象で、筆者の敷地の道路沿いにあるクリの木も、成果物の7割ほどは盗難にあっています。元々日本で自生している原産の植物は、盗んでいるという感覚なく採取されてしまうものです。商売で植えている訳ではないので厳重に注意するのも気が引けますし、気持ちの良いものではありませんので、植えつける場所は気にしておいた方が良いかもしれません。
【まとめ】タラの芽栽培で押さえるポイント6つ
①日当たり最優先(陽樹)
つまり:日陰だと良品が取りにくい。
だから:場所は日当たりで決める。
②排水性・地下水位も重要(停滞水NG)
つまり:湿地は根が呼吸できない。
だから:排水性の良い場所を選び、停滞水が出そうな場所は避ける。
③増殖は「根ざし法」が現実解
つまり:根が主役。
だから:長さ15センチ前後、太め(4〜5ミリ以上、できれば鉛筆級)を意識。
④1年目は雑草がラスボス
つまり:草に負けると終わる。
だから:マルチ・敷き草+こまめな除草(特に発芽まで)。
⑤収穫は10センチ前後、葉が開く前
つまり:旬が短い。
だから:芽を見たら素早く収穫(“春の短距離走”)。
⑥収穫後は低く切って更新(切り返し・剪定)
つまり:放置すると高くなって採れなくなる。
だから:収穫後の切り返しを行い、背丈程度に仕立てる。
今回はタラの芽の育て方について紹介しました。根を使って増やす「根ざし法」がおすすめで、6つのポイントを押さえることで成功がぐっと近づきます。ぜひ本記事を参考にして、この春育ててみてくださいね!
【参考資料】
山菜の栽培技術指針(徳島県農林水産部林業課)
タラノキの育て方とタラの芽収穫時期の調整(地方独立行政法人北海道立総合研究機構)
タラノメ(一般社団法人熊本県野菜振興協会)
技術情報No.174(長野県林業総合センター)


















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