僻地のアボカド園にDIYため池を作る理由
筆者が山の中に「ため池」をDIYで作ることになった背景には、新たに開拓したアボカドの森に「水源が一切ない」という切実な問題があった。この園地は、これからアボカドの森として育てていく予定の新規開拓地である。しかし場所は山間部の僻地にあり、水道も引かれていない。
当然ながら、水を簡単に運べる環境ではなく、ポリタンクでの運搬にも限界があった。特に問題になるのが、アボカドの幼木を植え付けた直後のかん水である。アボカドは定植初期の活着が非常に重要で、根が張るまでの期間は安定した水分供給が必須になる。
この問題を根本的に解決するために行きついたのが、雨水を貯めるため池を自分で作るという発想だった。
このため池の役割
今回の池づくりは、庭のビオトープなどというおしゃれなものではなく、植え付け直後の果樹苗木へのかん水用としての貯水を目的にしている。そのため、幼木のかん水に実用レベルで使える、ある程度まとまった水量を確保できるサイズであることや、将来的にホースで汲み上げやすい構造などを目指した。サイズの目安としては、縦4m × 横2m × 深さ1mとした。貯水池は全体にかん水ができるように、園地の一番高いところにした。

ため池の容積
【DIY1】スコップ一本で掘りまくる
この場所は大きな重機が入らない地形ではあることから、スコップ一本による手掘りという何とも古典的な方法で穴を掘り進めることにした。

こちらのやや開けた場所に貯水池を作っていく。

掘り進める中で、かなり古いバッテリーや、家庭用品などもでてきた。
大きな石などもかなりあって、当初の想定よりも時間がかかった。

今となってはもう絶対にやりたくない作業であるが、当時はこのような泥臭い作業が心底楽しかった記憶がある。不思議なモチベーションで楽しく穴掘りを進めていく。

穴の周囲も20cm程度、掘り下げておく。後々、農業ハウス用の厚手のビニールをかけるために使うための段差である。

完成。土の中からは、想像以上のたくさんのゴミが出てきて驚いたものの、何とかスコップ一本で掘りあげた。
とはいえ、溜め池を作る上で、特に調べもしなかったし、どのように水を溜めたら良いのかという計画を立てないまま勢いだけで掘り進めていた。後先考えずに掘られた穴でもある。
さて、、さて、ここから水を貯めるためにどうしよう。掘った後に思考を巡らせた。
【DIY2】農業用ハウスの厚手ビニールで覆ってみる
一番安価な方法として、まず真っ先に思い浮かんだのは、厚手のビニールで覆って水を貯める方法だ。
厚手のハウス用ビニールは、農村地ということで、すぐに切れっ端が手に入った。4m×2m×1mのサイズであるため、そこまで大きくはない。

余っていた厚手のネットを下に敷いたら、ちょっとはビニールの耐久性が上がるかな?という素人考えでまずはそうしてみる。
山の頂上は風が強いので、重たい石でネットを抑えながら敷いていく。

上から、ハウス用ビニールを被せていく。穴が空いていない状態のものだ。

落とし穴を作る要領で、ビニールの周囲に土を被せていく。

そして、ついに完成した。あとは雨が降るのを待つだけである。
【DIY3】池に水を貯める
数日後、ありがたいことに夜中に雨が降った。

周囲の土を通して雨水が混入して濁っていたが、水は溜まっているようである。
まだまだ足りないので、もう少し待ってみる。
また数日後、ありがたいことに沖縄県は豪雨が数日あって、DIYした貯水池に水がかなり溜まった。

縁を超えて水が溜まっていた。この状態だと、組み上げ式のポンプを設置して幼木にかん水できた。
思った以上に、ハウス用ビニールは頑丈で、水漏れもなく貯水池として機能していた。

下町を山頂から見渡しながら、ここからさらに色々な果樹を植えることができると構想がめぐる。

数日経つと、オタマジャクシが泳いでいたり、アメンボがいたりした。

また、時には、ネズミが貯水池に落ちたりして、救出したりした。
このようなシンプルな仕組みでも、きちんと水を貯めることができ、「農業用水として活用できるんだな」と感動したことを、つい昨日のことのように思い出す。
【DIY4】池の下にタンクを設置する
それでも、DIYした貯水池は容量に限界がある。アボカドの森の下の方へさん水するのに多少手間があったこともあり、タンクを設置することにした。


貯水池に溜まった水を、余すことなく活用するために、池に溜まった水をタンクへ移動させる。


タンクは池よりも下側に設置したため、動力を使わなくてもサイフォンの原理で、貯水池からタンクへ水を移動することが可能だ。ちなみに、サイフォンの原理というのは、高い位置にある液体を低い位置に移動する時によく活用される方法だ。ホースの内部が液体で満たされていれば、動力を使わずとも、自然に流れ続ける物理現象である。
この方法で、満水になった貯水池から、タンクへ水を移動することができる。
3ヶ月後の悲劇。池の崩壊
ビニールによる貯水池に悲劇が起きたのは、設置から3カ月ほど経った8月のこと。沖縄の猛烈な紫外線のダメージにより、ビニールが破れてきたのである。
DIYをしたのがゴールデンウィーク。これまで順調だった貯水池が、8月ついに崩壊した。


1年~2年くらいは持つかなと安易な考えがあったのだが、沖縄の日光は強い。
すぐに貯水池のビニールはボロボロになった。
亀裂は、池の縁から入り、その後すぐに破れていった。これによって、雨水は満水まで貯まらずに、徐々に水位を減らしていき、池として機能しなくなっていった。
【DIY5】耐水モルタルで作り直し!

ビニールが3ヶ月で使い物にならなくなったため、耐水モルタルで貯水池を作り直すことにした。
セメントと砂を3:1で混合したものに、マノールという防水剤を適量流し込む。

砂を入れる

セメントを入れる

セメントと砂を混ぜ合わせる。これを池の表層に入れる。

セメントや砂を山頂まで運ぶのも一苦労だ。

モルタルが割れるのを防止するために、ワイヤーメッシュを入れている。
ネットはそのまま活用するが、ハウス用ビニールは取り外した。

モルタルを塗っていく


モルタルを作っては塗りを繰り返す

そして完成!!!!!!耐水性のモルタルで周囲をガチガチに固めた。

日が暮れる直前に終わって、その後、用具などの後片付けを行う
貯水池の今
穴掘りを開始してから約6年が経過した今も、この貯水池は機能し続けている。
山頂のオアシスとして、そしてアボカドの散水用の貯水池として、長年に渡ってその役割をまっとうしてくれている。

周囲は雑草に覆われてもいるが、6年間、雨にも負けず、雨を味方につけて頑張ってくれている。おかげでアボカドは立派に成長しているし、この小さな貯水池は、この山の中の果樹園の生命線として良い働きをしてくれている。

まとめ
今回紹介したDIYため池づくりは、決して効率の良い方法とは言えない。しかし、水道もなく、水を運ぶことすら難しい僻地で農業を始める場合、水源をどう確保するかは避けては通れない問題だ。作物を植える以前に、農地として成立させるためのインフラ整備が必要であり、その一つが水源づくりである。
実際にビニールによる簡易的な貯水池は短期間で劣化し、沖縄の強烈な紫外線の前ではまったく長持ちしなかった。一方で、耐水モルタルによる再構築は結果的に6年以上機能し続け、現在もアボカド園の散水用水源として役立っている。失敗と試行錯誤を繰り返しながら、現場に合った方法を見つけていく過程こそが、農業のリアルと言える。
水がなければ果樹は育たない。しかし水源は、最初から整っているとは限らない。条件の悪い土地でも、「どうすれば成立させられるか」を考え、実際に手を動かすことで、農地は少しずつ形になっていく。今回のため池づくりは、その出発点のひとつであった。計画性は全くなかったものの、農業をはじめたてという状況であれば、こうしたDIYの手法も、選択肢の一つだろう。これから新規果樹園開拓や果樹栽培を考えている方たちへ「水をどう確保するか」という視点も含め参考になれば幸いである。
















