【時系列順】乾田直播に使われる機械
乾田直播に使われる機械と作業全体の流れは、次のとおりです。
| 項目 | 作業内容 | 主要機械 |
|---|---|---|
| ステップ1 | 土台作り | プラウ、レベラー、畔塗り機 |
| ステップ2 | 播種床作り | ケンブリッジローラー |
| ステップ3 | 種まき | グレンドリル |
| ステップ4 | 仕上げ | ケンブリッジローラー |
以下では時系列に沿って、各機械の役割や具体的な作業内容をお伝えします。
【ステップ1:土台作り】耕起・均平・畔づくり
乾田直播の成功は、丁寧な土台作りが肝心です。この最初のステップは、その後の作業全体の精度を左右します。
耕起:プラウでほ場をリセット

乾田直播の土台作りは、前年の秋収穫後を目安に始まります。そして、最初の作業である「耕起」は、ほ場の状態を一度リセットし、理想的な播種環境を作るための重要なステップです。
耕起の主な目的は、ほ場を十分に乾燥させることと、前作の刈株などを土中に完全に埋め込むことです。特に、前作の刈株が地表に残っていると、後の均平作業や播種作業の精度が大きく下がる原因となるため、「プラウ」や「スタブルカルチ」を使った耕起が基本となります。
プラウ耕を行うことで、移植栽培で不可欠な耕盤層が不要となり、ほ場の排水性も改善できます。
均平:レベラー(均平機)で高低差10センチ以内を目指す
乾田直播のほ場では、レーザーレベラーもしくはGPSレベラーを使った均平化(整地)が必須です。ほ場に凹凸があると、低い部分では水が溜まり、種が酸欠を起こして苗立ちが悪くなります。反対に、高い部分では土が露出し、除草剤の効果が得られず雑草だらけになってしまいます。このため、田面の高低差は最大でも10センチ以内、目標は2センチ以内に仕上げるのが理想形です。
なお、レーザーレベラーとGPSレベラーの特徴は以下の通りです。
レーザーレベラー
レーザー光を基準に、排土板の高さを検出し、一定にします。乾田直播の普及を支えてきた、信頼性の高い定番の機械。
GPSレベラー
高精度GPS(GNSS)を利用します。レーザー発光器の設置が不要で、他の機械との電波干渉もしないため、大規模なほ場や複数台での同時作業において、真価を発揮します。
畔づくり:畔塗り機で水漏れ、水の侵入を防ぐ

乾田直播でも、畔(あぜ)塗り機を用いた水漏れ対策は欠かせません。一口に乾田といっても、実際は入水を要する時期もあるため、安定した水管理を実現できるほ場づくりが必要です。
また、畔塗りと合わせて以下の対策を行うことでも、漏水リスクは低減できます。
トラクターで畔の際を踏む
畔塗り後に畔の際をトラクターのタイヤで踏み固める一手間が、水漏れ防止に有効です。
溝を掘る(明渠:めいきょ)
トレンチャー(溝掘り機)を使って、隣接する水田との境界線に溝を掘ることで、水の侵入を防ぎます。
施肥:肥料の散布と混和

肥料の散布には、他の作物にも幅広く利用される「ブロードキャスタ」を使用します。ほ場全体に肥料を均一に散布するのに便利な機械であり、特に可変施肥対応機種はGPS情報に従い、精密な施肥管理が行えます。
施肥後は、「パワーハロー」や「バーチカルハロー」を使い、肥料と土を混ぜ込みます。
乾田直播は、播種後しばらく水のない状態で管理するので、すぐに溶け出す速効性の肥料だと雨で流れてしまいます。そのため、「緩効性肥料(肥効調節型肥料)」を基肥として使うのが基本です。
【ステップ2:播種床作り】砕土・鎮圧
ステップ2では、種子の発芽を確実にするための「播種床」を作ります。この工程によって、播種後の苗立ちが安定し、水管理が容易になります。
砕土・鎮圧:ケンブリッジローラーで硬いベッドを作る
ステップ2では、ケンブリッジローラー(またはパワーハロー)で砕土と鎮圧を行います。播種床となる地面を固めることで、播種機が沈み込まず、種をまく深さが安定します。ほ場の状態によっては、鎮圧を2回行うなど柔軟な対応が求められます。
理想の播種床を作るためにも、以下の2つを押さえておきましょう。
硬さの目標:かかとで踏んで5センチ沈むくらい
硬さの目安は、片足のかかとに全体重をかけて踏み込んだ時の足跡の深さが5センチ程度くらいです。これより柔らかいと、播種深度が安定しません。
細かさの目標:2センチ以下の土塊が70パーセント以上
土塊が大きすぎると出芽に影響するため、2センチ以下の土塊が全体の70パーセント以上を占める状態を目指します。ただし、細かくしすぎると逆に種が深く埋まりすぎる可能性もあるため、注意が必要です。
【ステップ3:種まき】播種
ステップ3では、グレンドリル(ドリルシーダー)を使用し、播種床に種もみをまいていきます。高速・高精度の作業を実現できるのが特徴です。
播種:グレンドリルの役割と使い方

グレンドリルは、もともと麦や大豆などの大規模畑作で使われる汎用型の播種機です。時速10キロ程度の高速作業が可能で、作業幅が3メートルある機種なら一度に4〜5ヘクタールを播種できる能力を持ちます。
そして、播種作業で大切なのが、深さ1〜2センチを目安に種をまくことです。深すぎると芽が出るまでに力尽き、出芽がバラバラになります。一方、浅すぎると、根張りが悪くなり、倒れる原因にも。
この深度を安定させるためにも、ステップ2で解説した「硬い播種床作り」は重要なのです。
播種作業の失敗を防ぐには以下のポイントを押さえましょう。
枕地(外周)から先にまく
グレンドリルを用いた播種作業において、枕地(まくらじ)はトラクターの旋回で踏圧を受け硬くなるため、枕地を含む外周を先に播きます。これは、硬い地面に後から種をまくことによる播種深さの不安定化を防ぎ、均一な出芽を実現するための方法です。
重複播種(二度まき)を避ける
同じ場所に二度まいてしまうと、その部分だけ種と肥料が倍量になり、稲が異常に密集して育ちます。その結果、病気や害虫の温床となり、収穫前の倒伏の起点にもなってしまいます。特に最後の列を合わせる時などは、細心の注意を払いましょう。
【ステップ4:仕上げ】播種後の鎮圧

種まきが終わってもまだ気は抜けません。仕上げの鎮圧作業が、乾田直播の成功を確実なものにします。
播種後の鎮圧:ケンブリッジローラーで仕上げ
播種後の鎮圧は、苗立ちの安定と水漏れ対策の観点から外せない作業。ステップ2に続き、ここでもケンブリッジローラーが活躍します。
播種後の鎮圧は、種と土をしっかりと密着させて発芽を安定させるのと、土のすきまをさらに埋めて水漏れを防ぐという、2つの重要な仕上げの役割を担います。特に水漏れしやすいほ場では、土が適度に湿っている状態で鎮圧を行うと、水漏れ防止の効果が格段に高まります。
乾田直播の機械化がもたらす経営メリット

乾田直播の機械化によるメリットは、作業の省力化と、人件費・農機具費のコスト削減にあります。
実証試験(岩手県・(有)盛川農場)では、10アールあたりの労働時間が約4.8〜6.4時間まで短縮され、米60キロあたりの生産コストが、2010年「東北平均」の約54〜69パーセントにまで低減できたというデータも報告されています。
また、これらの機械は麦や大豆にも使えるため、「輪作」することで投資効率を最大化できるのも、経営者にとって大きな魅力です。
乾田直播のメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【導入検討】経営にマッチした機械を選ぶためのポイント
乾田直播の栽培技術は、米の生産費の半分を占める労働費と農機具費を削減すること、そして高速作業が可能な機械で作業時間を削減することを目的としています。
この低コスト化の目標を達成するために、機械導入の検討時に考慮すべき3つのポイントを解説します。
1. ほ場規模とトラクターの馬力

乾田直播の魅力は、グレンドリルなどの大型機械による高速作業です。しかし、ほ場が小さいと、旋回ばかりでスピードを出すことができません。
目安として、ほ場の一辺の長さが170メートル以上あれば、機械の能力をフルに活かした効率的な作業が可能になります。長辺が100メートルのほ場と300メートルのほ場では、播種作業の能率に2倍近い差が出るというデータもあります。
トラクターの馬力と機械の選択肢
乾田直播では、機械と同等の馬力を持つトラクターが欠かせません。一例として、作業幅2.5メートルクラスのグレンドリルなら50馬力程度の中型トラクター。作業幅3メートルクラスの大型グレンドリルなら70馬力以上のトラクターといったように、作業機の規模に見合ったトラクターが必要です。
2. ICT・精密技術の活用
大規模なほ場で高速作業を行う上で、オペレーターの負担を減らし、作業精度を飛躍的に向上させるには、ICT技術の導入が有効です。
例えば、GNSS(GPS)を利用した自動操舵システムは、ハンドル操作を完全に自動化できます。オペレーターは作業機の監視に集中できるため、長時間の作業でも疲労が大幅に軽減されます。
その精度は驚異的で、目標経路からのズレはわずか3〜5センチ。これにより、播種時の重複による肥料の無駄や倒伏リスクをほぼゼロにできます。
3. 機械導入コストと複合経営について

乾田直播の機械は高価ですが、その投資を早期回収し、利益を最大化するための明確な考え方があります。その基本戦略が「輪作」による機械のフル活用。
乾田直播のコスト削減効果は絶大で、米60キロあたりの生産コストが慣行栽培の半分近くにまで下がるという試算もありますが、その恩恵を最大限に引き出すカギは、輪作にあります。
乾田直播で使う機械のほとんどは、麦や大豆でも使えます。米・麦・大豆の輪作体系を組み、一年中機械をフル稼働させることで、一台あたりの投資コストを複数の作物で分散し、利益を高めるという仕組みなのです。
なので、乾田直播の導入には、稲作単体で考えるのではなく、経営全体の最適化という視点が求められます。
まとめ|乾田直播に使われる機械
乾田直播の成功は、ただ高性能な機械を買いそろえるだけでは達成できません。重要なのは、一連の作業を、最適な機械でスムーズにつないでいくことです。
この記事では、春の作業を4つのステップに分けて、各工程で主役となる機械の役割と、作業のポイントを解説しました。
これらの機械体系を、あなたの作付規模やトラクタの馬力、そして輪作といった経営戦略として全体の中にどう組み込むか。その視点こそが、成功へのカギを握っています。
※本記事は以下のマニュアルなどの情報を元に作成しています。
出典
農研機構:乾田直播栽培技術マニュアル Ver.3.2
いしのまきグリーンな農業推進協議会:グリーンな栽培マニュアル
石狩農業改良普及センター:水稲乾田直播栽培 栽培体系紹介
近畿中国四国農業研究センター:飼料用稲乾田条播直播栽培マニュアル


















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