個人経営の農業を継がせるために必要なことは?
ある農村部で、妻と二人で30年以上にわたって個人で農業を営んでいます。2年ほど前、都心で就職していた長男が、仕事を辞めて実家に戻り、農作業を手伝うようになりました。最近になり、長男が私たちの後を継いで農家となりたいと真剣に相談されるようになりました。私たちとしても、一人息子の長男が後を継いでくれるのはうれしいのですが、個人事業として営んでいる農業経営を継がせるとして、実際に何をどうすればよいのかよくわからないところがあります。
長男に農業を継がせるためには、何から始めればよいのでしょうか。
弁護士の見解
まずは、経営承継の最初の一歩として、現状の経営状況及び資産の状況をきちんと把握することから始める必要があります。そのうえで、誰に何をいつ承継するのかを決定し、具体的な承継の計画を策定するとよいでしょう。これらを行う場合には、専門家に相談することがより適切であるといえるでしょう。
経営承継の最初の一歩

どのような経営者であっても、必ず引退をしなければならない時が来ます。経営者が引退をしたとしても、事業の運営を停止することなく連続して事業を継続して行うためには、必要不可欠な経営資源を後継者に引き継がせる必要があります。これが経営承継の目的です。
農業において経営承継に失敗した場合、従前の事業をそのまま継続することが困難になることとなります。例えば、農地はあるものの、実際に農業を行う人員が決まっていなかったために遊休農地化してしまったり、相続により農地を複数の子供が分散して相続してしまったため、規模を縮小せざるを得なくなったりするなどが考えられます。
このような事態に陥ることなく、経営承継の目的を達成するためにはさまざまな要素を検討したり、合意書等の作成や税務申告などの法的手続きを履行したりするなど、多くの工程を経る必要があります。しかしながら、経営承継の最初の工程は、「誰に」「何を」承継させるのかを決めることにあります。
ここでいう「誰に」というのは、承継者を誰にするのかという問題であり、「何を」というのは、承継させるべき経営資源は何かという問題となります。そして、そのどちらを決めるためにも、その前提として、承継の対象となる事業について、現在の経営状況及び資産の状況を正確に確認する必要があることとなります。従って、経営承継の最初の一歩は、現在の経営状況及び資産の状況を正確に把握することであるといえます。
承継しなければならない資産

後継者に承継しなければならない「必要不可欠な経営資源」の中には、土地や施設・機械など「目に見える資産」だけでなく、「目に見えない資産」も含まれています。
ここでいう「目に見えない資産」というのは、顧客情報や、ノウハウなどの知的財産だけでなく、経営理念や経営者本人が有する信用など、目に見えないものの、事業を継続するうえで経営の強みとなるような抽象的な情報を含んでいます。特に、農業においては、優れた経営理念や経営ノウハウなどが現経営者個人の頭の中にだけ存在しており、目に見える形で明確化されているとは言えない場合が多いとものといえます。従って、現経営者の頭の中にある情報を棚卸して、これまで事業を支えてきた経営の強みとなるような情報を聞き取りなどによって見える化することが重要であるといえます。

経営承継計画の策定
経営状況及び資産の状況を把握し、「誰に」「何を」承継させるかが決定したとしても、それだけで経営承継が成功するわけではありません。経営承継が成功するためには、一定程度の時間が必要となります。
そこで、経営承継の時期や具体的な対応を盛り込んだ経営承継計画の策定を行う必要があります。この経営承継計画には、設備・機械等の資産の承継とともに、目に見えない資産を承継することを念頭において、後継者にどのような仕事をどのような順序・方法で任せるのかといった点を具体的に記載する必要があります。
専門家への相談
経営承継は、税務や法務などさまざまな観点からの検討が必要となり、経営者個人だけでは対応できないことが多いものといえます。そこで、支援機関や専門家へ相談することが重要となってきます。専門家等に相談することによって、より適切かつ合理的な判断が行えるだけでなく、経営者自身で解決できる事項とそうでない事項をはっきりと区別することができ、経営者は自身で解決できる問題に集中できるというメリットもあります。従って、経営承継を検討する場合には、積極的に専門家等に相談しながら行うことが適切であるといえます。
本事案のポイントを整理
✅経営承継の最初の第一歩は、現在の経営状況及び資産の状況を正確に把握することである。
✅「誰に」「何を」承継するのかを決定し、経営承継計画を策定することが日宇町である。
✅経営承継は、専門家に相談しつつ行うことが望ましい。
弁護士プロフィール
杉本隼与
2003年早稲田大学法学部卒業。2006年に旧司法試験合格(第61期)
2016年東京理科大学イノベーション研究科知的財産戦略専攻卒業 知的財産修士(MIP)
同年に銀座パートナーズ法律事務所を開設し、現在に至る。
銀座パートナーズ法律事務所















