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勝手に増やすと法律違反!?農家が知っておきたい種苗法「品種登録制度」のキホン

勝手に増やすと法律違反!?農家が知っておきたい種苗法「品種登録制度」のキホン

種苗法の「品種登録制度」をご存じでしょうか。これは、一定の条件を満たした植物の新品種を農林水産省に登録することで、開発した人に「育成者権」が与えられ、知的財産としてその権利が守られる仕組みです。2021年と22年に改正法が施行され、この制度について耳にする機会も大きく増えました。
しかし、制度が広く知られるようになった一方で、現場では思わぬトラブルも起きています。“気づかないうちに違反していた”というケースも少なくありません。では、生産者はどんな点に注意すればよいのでしょうか。この記事では、「品種登録制度」の基本から、実際の農業現場で起こりがちなNG例までわかりやすくご紹介します。「法律の名前は聞いたことあるけれど、実はよくわかっていない…」という方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。

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そもそも種苗法の「品種登録制度」って?

種苗法の「品種登録制度」は、稲や野菜、果樹などの新しい品種を開発した人(=育成者)を守るための仕組みです。
この制度で保護されるのは、新しく開発され、農林水産省に新品種として登録された植物(=登録品種)で、育成者には「育成者権」という権利が与えられます。

育成者権が及ぶ範囲

  • 種苗の増殖
  • 種苗の譲渡
  • 一定の場合の収穫物の生産および譲渡

育成者権を持つ人(=育成者権者)は、その登録品種の種苗や収穫物※、一定の加工品を独占的に利用できます。そのため、育成者権者以外の人が登録品種を使いたい場合は、必ず育成者権者の許可を得る必要があります
※収穫物や加工品にまで育成者権が及ぶのは、「種苗」や「収穫物」を使う段階で、本来その権利を行使できなかった場合に限られます。
ただし、正規に購入した種苗を使って収穫物や加工品をつくることについては、自由に行えます。

育成者権を侵害した場合、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(あるいはその両方)が科される可能性があります。さらに、育成者権者から利用差止めや損害賠償などの民事上の請求を受けるおそれもあります。

「すべての種や苗が対象なの?」 → “登録品種だけ”が対象です

では、種苗を扱うときには、いかなる場合でも育成者権者の許可が必要なのでしょうか。実は、必ずしもそうではありません。
種苗法に基づく登録品種のみが対象です。たとえば「ゆめぴりか」や「シャインマスカット」などが該当します。

一方で、在来種や、これまで一度も品種登録されていないもの、また存続期間の満了等により登録が失効した品種(「はえぬき(稲)」や「とちおとめ(イチゴ)」など)等は、「一般品種」と呼ばれ、これらは誰でも自由に利用することができます。

登録品種か一般品種かを確認する方法は、主に2つあります。
まず、登録品種を販売する場合は、事業者がPVPマークや「登録品種」といった表示を包装やラベル、カタログ等での広告に付けることが義務づけられています。そのため、購入時の包装やラベル、カタログ等を確認しましょう。また、「流通品種データベース」で検索することで、登録品種か一般品種かを調べることができます。

また、以下のような行為については登録品種であっても、育成者権者の許可は不要です。

  • 購入した種苗をそのまま栽培する
  • 購入した種苗をそのまま栽培し、収穫したものを販売、お裾分けする
  • 購入した種苗を第三者に譲ったり、転売したりする

「増殖」に注意!生産現場でやりがちなNG例

生産者が特に気をつけたいのが、登録品種の「増殖」行為です。

  • 登録品種の果樹の剪定枝を新たな苗木のもととなる穂木として近所の生産者に渡す
  • 登録品種のサツマイモからツル苗を得て直売所で販売する
  • 登録品種のイチゴのランナーによる苗の増殖をし、フリマで販売する

といった行為は種苗法違反となるため、注意が必要です。もちろん有償・無償を問わずNG「もったいないから」「実習生が欲しそうにしているから」「お金を取らなければ大丈夫だろう」という安易な発想は危険です

増殖してなくても種苗法違反となるケース

自家増殖以外にも生産者が気を付ける場面があります。

登録品種の海外持ち出しに注意

種苗法の改正で、育成者権者は登録品種の海外への持ち出しを制限することができるようになりました。「海外持出禁止」と表示されている種苗は、海外へ持ち出すと種苗法違反になります
近年では海外からの果樹園ツアー客が登録品種の穂木を持ち帰るなどして、登録品種が海外に流出する事例も問題になっています。これらの被害を防ぐために、品種名が外部から識別できないようにしたり、剪定した枝を放置せず適切に処分したりするなどの取り組みが、現場で求められています。

栽培地域の限定に注意

2021年4月以降に出願された登録品種の中には、収穫物の生産をできるエリアが育成者権者により指定されたものがあります。指定されたエリア外で収穫物の生産を行うことは、育成者権の侵害となります。「〇〇県内のみ栽培可」などと表示されている登録品種は、指定された地域以外で収穫物の生産をしないようにしましょう。また、自身のエリアのみで栽培が許可されている登録品種の種苗を、他エリアの生産者に譲渡することは、育成者権の侵害につながる恐れがあります。

種苗法を守ることは生産者のメリットにもつながる

種苗法の品種登録制度は、育成者権者の権利を守るだけでなく、日本の農業競争力を守り、農業全体の発展に貢献することを目的としたものです。生産者一人ひとりが制度を正しく理解し、運用することが大切です

「このケースは育成者権違反?」など、判断に迷うことがあったら、近隣のJAや関連機関が提供する最新情報や相談窓口を活用しましょう。
また、農林水産省のHPに掲載されている「種苗法に関する一般的なご質問」ページでは、種苗法の基本から、登録品種の扱い、自家増殖や譲渡の可否、罰則までQ&A形式で解説されています。

そのほか、マイナビ農業でも動画やクイズ形式で種苗法を学べるサイトを公開中です。
ぜひチェックしてみてくださいね。

お役立ちサイト

知ってますか?種苗法の「品種登録制度」(マイナビ農業特設サイト)
農業知財基礎セミナー(JATAFF)
そのタネ、ほんとに大丈夫?~育成者権侵害について~(農林水産省)

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