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廃校を活用し、「パックご飯」年間9600万食を製造! 計2000haの作付けを目指す、コメビジネスの最前線

kumano_takafumi

ライター:

連載企画:コメ記者熊野の水田行脚

廃校を活用し、「パックご飯」年間9600万食を製造! 計2000haの作付けを目指す、コメビジネスの最前線

パックご飯の需要拡大が続く中、安定的な原料米確保が業界の課題となっている。こうした中、株式会社大潟村あきたこまち生産者協会のグループ企業は、秋田県男鹿市の廃校を活用し、新たなパックご飯工場を今春から本格稼働。独自の原料米確保戦略に打って出た。カギを握るのは「生産現場からのアプローチ」。多収穫米「しきゆたか」の積極導入や機能性品種の活用、直播栽培による低コスト化を進め、将来的には自社と契約栽培を合わせて2000haの作付面積を目指す。生産と加工を結ぶ、アグリビジネスの最前線を追った。

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最小人員で年間約9600万食の生産体制を構築

3月から本格稼働するパックご飯工場「ジャパンパックライス男鹿」。その稼働を前に、親会社である株式会社ジャパン・パックライス秋田の涌井徹(わくい・とおる)社長に工場を案内してもらった。

工場のラインを説明する涌井徹さん

同工場は、2020年に秋田県大潟村で稼働した第一工場に次ぐ第二工場として、約40億円を投じて2025年10月に完成した。最大の特徴は、2011年に閉校となった旧野石小学校(男鹿市)の校舎や体育館をそのまま活用している点だ。年間製造能力は約6000万食に上り、第一工場の約3600万食と合わせると年間約9600万食という国内有数の生産体制となる。
製造工程はフルオートメーション化されており、最少人員での運営を実現している。最終工程には、容器ごとの気圧を自動計測し、ピンホールやシールの剥がれがないかを一つひとつ確認する最新機器が備えられている。体育館を改装した巨大な自動ラック倉庫には、この日もふるさと納税返礼品用のパックご飯がうず高く積まれていた。
これだけの製造能力を持つと、最大の課題となるのが「原料米の確保」だ。特に一昨年前からの「令和の米騒動」とも呼ばれたコメ不足では同社も対応に苦慮し、男鹿工場の本格稼働を慎重に進めざるを得なかったという。この原料米確保を最前線で担うのが、グループの中核企業である株式会社大潟村あきたこまち生産者協会だ。

「パックご飯」筆頭に、時代を先読みした事業展開

大潟村あきたこまち生産者協会は、1988年に涌井現会長が地元の生産者とともに設立。当時は食管法による厳しい流通規制があったが、宅配便による消費者への直接販売という先駆け的モデルを確立した企業だ。

大潟村は戦後の食糧増産計画により八郎潟を干拓して誕生した村だが、皮肉にも本格的なコメ作りが始まる矢先に国の減反政策が導入された。涌井さんはこれに真っ向から反対する「自由作付け派」として、村を二分する激しい論争を繰り広げた歴史を持つ。

転機となったのは、後の戸別所得補償制度の導入だ。主食用米以外に、加工用米や米粉用米、飼料用米を作付けすることで生産調整をクリアできるようになった。同社はこの制度を最大限に活用し、加工用米の生産を拡大。無洗米や発芽玄米にとどまらず、米粉麺や甘酒、レトルト食品など多種多様なコメ加工食品事業を矢継ぎ早に展開していった。

その中でも需要の伸びが著しい「パックご飯」事業に着手したところ、引き合いに対して生産が追いつかないほどのヒットとなった。生産体制を拡大するために第二工場の候補地を探していた際、男鹿市から直線距離で約20kmの位置にある旧野石小学校の利活用提案を受けたという。廃校と言っても、2011年まで使われていた校舎で建屋がしっかりしていること、パックご飯の生産に不可欠な「水」に関しても男鹿市の名水「滝の頭湧水」を水源とする清流を活用できることが決め手となった。

体育館を改装した自動ラック倉庫

銘柄米から多収穫米まで多彩な品種、作付面積2000haを目指す

原料米の確保策について、あきたこまち生産者協会代表取締役社長の涌井信(わくい・しん)さんは今年の水稲作付計画を提示してくれた。自社の農産部が直接手がける面積だけで158ha(育苗箱数約3万4250箱、種子量約4825kg)にも及ぶ。

作付品種は驚くほど多彩だ。主食用の秋田県ブランド米「サキホコレ」「あきたこまち」をはじめ、多収穫米「ちほみのり」「しきゆたか」、加工用原料米のもち米「たつこもち」、そして高アミロース米「あみちゃんまい(※農研機構育成品種)」まで名を連ねる。米粉用米だけでも30haを確保しており、これだけまとまった面積で用途別品種を栽培している法人は全国でも珍しいだろう。

特に同社が近年注力しているのが、水稲生産技術研究所、名古屋大学が共同開発した多収穫ハイブリッド品種「しきゆたか」だ。一昨年前から大潟村で試験栽培したところ、「大潟村の土壌に合ったのか、10a当たり14俵(約840kg)を収穫した生産者もいた」と、経営企画部の伊藤慶彦(いとう・よしひこ)部長はいう。自社の直営圃場でも平均13俵という高い収量性を実証したため、今年からは男鹿市の生産者にも作付けを呼びかける説明会を開催した。

さらに今年は、農研機構が開発した新たな多収穫米の試験作付けも計画中だ。また、低コスト化に向けて直播栽培の本格導入にも踏み切るという。

パックご飯市場は大手メーカーだけでなく異業種からの新規参入も相次ぎ、競争が激化している。その中で同社の最大の強みは「自ら原料米の生産から手掛けている」という点にある。多収穫米による安定確保だけでなく、低・高アミロース米といった特徴ある品種を活用することで、商品価値の向上も図ることができる。

涌井信社長は「現状の自社生産や契約栽培の量ではまだまだ足りない。将来的には自社生産で1000ha、契約栽培で1000haの合計2000haまで原料米の生産基盤を拡大したい」と力強く抱負を語ってくれた。

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