追熟が必要な果物、追熟してはいけない果物
世の中にはさまざまな果物がある。収穫してすぐに食べられるものもあれば、青い状態で収穫した後に「追熟」という期間を経て、おいしく食べられるようになるものもある。また、収穫後にある程度保存できるものもあれば、傷みが早く、できるだけ早く食べた方がよいものもある。
例えば、バナナやアボカドなどは追熟が必要な果物である。適切な成熟段階で収穫した後、しばらく置くことで果肉がやわらかくなり、香りや甘みが増して食べ頃を迎える。

追熟室で追熟処理されているキャベンディッシュバナナ(台湾の工場での様子)
一方で、アセロラやジャボチカバ、イチジクなどのように、収穫した時点ですでに食べ頃を迎えており、収穫後はできるだけ早く食べたい果物もある。こうした果物は傷みが早いため、長距離輸送や長期間の販売には向かず、広域流通が難しい場合もある。前述した「追熟」を行うのはもってのほか。糖度は上がらず、かえって品質の低下を招くだけである。

木から完熟収穫してすぐのイチジクは最高に美味しい(品種:イスラエル)
品種や保存条件にもよるが、反対にリンゴやナシ、カキなどのように比較的日持ち性に優れた果物もある。保存性の高い果物は収穫地から離れた地域へも流通させやすい。
筆者は、果物が好きすぎて毎年、品種の食べ比べを趣味で開催しているが、リンゴやナシ、カキなどは日持ち性がよく、色々な品種が一度に手に入りやすい。

リンゴの色々な品種

ナシの色々な品種

カキの色々な品種
日持ち性の良い果物は、手に入りやすいので、読者の皆さんもぜひ一度は食べてみていただきたい。ただ、ここで知っておきたいのは、「追熟するかどうか」と「日持ちするかどうか」は別の性質だということだ。追熟する果物だから日持ちするとは限らず、追熟しない果物だからすぐ傷むとも限らない。それぞれの果物に、収穫後の成熟の仕方と保存性がある。
こうした果実の成熟に深く関係しているのが、「エチレン」という植物ホルモンである。バナナやマンゴー、リンゴ、アボカドなどは「クライマクテリック型果実」と呼ばれ、成熟に伴って呼吸量やエチレンの生成量が増える。エチレンには果実の成熟を促す働きがあり、果肉をやわらかくしたり、香りを強くしたりする。
ただし、追熟する果物であっても、未熟なうちに収穫すればよいというわけではない。果実が十分な成熟段階に達する前に収穫すると、その後いくら置いても本来の甘みや香りが十分に出ない場合がある。
つまり、果物をおいしく食べるためには、「どのタイミングで収穫するか」だけでなく、「収穫後にどのように追熟・保存するか」まで考えることが重要なのである。
【食べ頃の目安】果物ごとの追熟の必要性と期間
日本で手に入るさまざまな果物について、追熟が必要かどうか、また適切に保存した場合にどのくらい日持ちするのかを、筆者の栽培経験やこれまで多くの果物を食べてきた経験をもとに下記の表へまとめた。
ただし、同じ果物でも品種や収穫時の熟度、保存する温度などによって、食べ頃や保存できる期間は大きく変わる。例えばマンゴーは、アーウィンのように樹上で十分に成熟させて収穫するものがある一方、夏小紅やキンコウのように、収穫後の追熟によって食べ頃を迎えるものもある。そのため、以下の表はあくまで家庭で保存する際の一つの目安として参考にしてほしい。
なお、「○」は基本的に追熟させてから食べる果物、「△」は品種や収穫時の熟度などによって追熟の必要性が異なる果物、「×」は基本的に追熟を必要とせず、食べ頃で収穫・購入して早めに食べたい果物としている。
亜熱帯果樹の追熟の有無と保存期間早見表
| 品目 | 追熟の必要性 | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| アボカド | ○ | 3~5日 |
| バナナ | ○ | 3~10日 |
| マンゴー | △ | 1~3日 |
| アテモヤ | ○ | 2~4日 |
| チェリモヤ | ○ | 2~4日 |
| パパイヤ | △ | 3~5日 |
| グアバ | △ | 2~4日 |
| パッションフルーツ | × | 3~5日 |
| カニステル | ○ | 3~5日 |
| ブラックサポテ | ○ | 3~5日 |
| パイナップル | × | 3~5日 |
| ドラゴンフルーツ | × | 5~7日 |
| スターフルーツ | × | 3~5日 |
| ライチ | × | 3~5日 |
| アセロラ | × | 1~2日 |
| ジャボチカバ | × | 1~2日 |
※保存期間は、果実が食べ頃になった状態から、常温または冷蔵などそれぞれの果物に適した方法で保存した場合のおおよその目安。品種、収穫熟度、果実の状態、保存温度などによって大きく前後する

色々な熱帯果樹の写真
温帯果樹の追熟の有無と保存期間早見表
| 品目 | 追熟の必要性 | 保存期間の目安 |
|---|---|---|
| リンゴ | × | 1週間 |
| 和ナシ | × | 1週間 |
| モモ | △ | 2~4日 |
| スモモ | △ | 3~5日 |
| キウイフルーツ | ○ | 5~7日 |
| 柿 | △ | 3~7日 |
| メロン | △ | 3~5日 |
| ブドウ | × | 5~7日 |
| イチゴ | × | 2~3日 |
| サクランボ | × | 2~3日 |
| イチジク | × | 1~2日 |
| ブルーベリー | × | 5~7日 |
| スイカ | × | 5~7日 |

温帯果樹にも色々な品種がある

それこそブドウは品種の数がすごい!
表を見ると、追熟が必要な果物と保存性の高さは、必ずしも関係がないことが分かる。アボカドやバナナのように追熟させて食べる果物もあれば、アセロラやジャボチカバのように収穫後すぐに食べたい果物もある。また、リンゴや和ナシのように、追熟を目的として常温に置く必要はほとんどないものの、適切に保存すれば比較的長く品質を保ちやすい果物もある。
ちなみに、リンゴはクライマクテリック型果実なので、収穫後もエチレンを生成して熟度が進む。したがって、生理学的には「追熟する果実」であるが、「追熟する」と「追熟させてから食べる必要がある」は別である。一般的なリンゴは、食べられる熟度まで樹上で成熟させて収穫されることが多く、家庭でわざわざ常温に置いて追熟させる必要はない。
では、実際に追熟が必要な果物は、どこに置き、どのタイミングで冷蔵庫へ入れればよいのだろうか。ここからは、筆者が実際に栽培している果物も例にしながら、具体的な追熟・保存方法を紹介していく。
追熟が必要な果物はどう保存する?
追熟が必要な果物は、収穫した直後や購入した直後に冷蔵庫へ入れればよいというものではない。まだ硬く、十分に熟していない果実は、まず適切な温度で追熟させ、食べ頃を迎えてから冷蔵庫を利用するのが基本である。
追熟中は、直射日光が当たらず、極端に暑くならない室内で管理したい。筆者は沖縄の夏場では、追熟が必要な果実を26℃程度に設定したエアコンの効いた室内で管理している。温度が高すぎると追熟が急激に進んで傷みやすくなり、反対に低すぎると追熟が進みにくくなったり、熱帯果実では低温障害を起こしたりすることがある。
また、「収穫してから何日たったか」だけで食べ頃を判断するのではなく、果皮の色、香り、果実のやわらかさなどを毎日確認することも大切である。同じ果物でも、収穫時の熟度や気温によって追熟にかかる期間は大きく変わる。
バナナは暑すぎる場所にも、冷蔵庫にも置かない
筆者が追熟の重要性を特に実感するのがバナナである。バナナは緑色の状態で収穫し、その後追熟させて黄色くなってから食べることが多い。追熟が進むと果肉がやわらかくなり、でんぷんが糖へと変化して甘みも強くなる。
以下は、筆者の育てている島バナナであるが、2026年9月19日に緑の状態で収穫し、9月23日に追熟中の状態である。

収穫直前の島バナナ(2026年9月19日に緑の状態)

追熟4日目
果皮が黄色くなり、やや柔らかくなり、バナナらしい香りがあらわれてきたら食べ頃のサインである。さらに熟すと、果皮に「シュガースポット」と呼ばれる黒い斑点が現れる。この頃になると甘みもかなり強くなる。
量が多くて、一度に食べ切れない場合は、十分に追熟した後に、皮を剥いて冷凍保存をすると1ヶ月以上保存できる。冷凍保存したものは、スムージーなどに利用するととても美味しい。
アボカドはやわらかさを見ながら追熟させる

色々な品種のアボカド
アボカドも、収穫後の追熟が重要な果物の一つである。収穫直後のアボカドは果肉が硬く、そのままでは食べにくいことが多いが、常温で数日置くことで果肉が徐々にやわらかくなり、なめらかな食感へと変化する。
スーパーで売っている輸入物のアボカドはほぼ「ハス」という品種で、こちらは果実の色が黒くなるので食べごろが分かりやすい。ただ、アボカドは近年、国産で作られたものも多く、ハス以外の品種も見かけるようになった。例えば、ピンカートンやフェルテなどは、追熟しても色が黒くならないため、注意が必要である。

フェルテ種は、緑色の状態で食べ頃になる

メキシコーラグランデのように収穫時に黒くなっているものもある
アボカドの場合は、果実を強く押すのではなく、手のひらや指で軽く触れたときに、わずかに弾力を感じる程度が食べ頃の一つの目安になる。品種によっては果皮の色が変わらないため、色だけでは判断しにくいものもあるため、やわらかさと合わせて確認したい。
ちなみに、沖縄では大型のタイプのアボカドが主流であるが、こちらも色が変わらなかったり、やや赤っぽかったりするものがある。ただ、追熟を経て、果肉が少しだけ萎み、果実を振ると内側のタネがカラカラと音を立てるものもある。

やや赤っぽくなるタイプのアボカド

シュガースポットのように斑点様が出るアボカド(筆者の育種するオリジナルアボカド)
アボカドは、硬い状態で家庭用冷蔵庫へ入れると追熟が大幅に遅くなる。そのため、家庭では基本的に常温で食べ頃まで追熟させ、十分にやわらかくなった後、すぐに食べない場合には冷蔵庫へ移すとよい。3~5日程度は持つが、追熟が完了したらなるべく早めに食べていただきたい。
マンゴーも品種によっては追熟でおいしくなる

左上からリリー、ギョクブン、左下からキンコウ、アーウィン、コウリュウ
国内で最も多く栽培されているマンゴーは、アーウィン(別名:アップルマンゴー)という品種である。アーウィンは樹上で成熟させ、自然落果した果実をネットで受け止めて収穫する方法が一般的である。自然落果した時点ですでに十分成熟しているが、果実の状態によっては常温で1~3日ほど置くことで、さらに香りや食感が整う場合もある。そのため、購入後は果皮の状態や香りを確認しながら食べ頃を判断したい。
一方で、近年はアーウィン以外の多品種も市場に出てくるようになってきた。それらのほとんどは、まだ硬いうちに収穫し、その後追熟させることで、美味しく食べられるマンゴーである。上の図で紹介しているアーウィン以外のリリー、ギョクブン、キンコウ、コウリュウも、追熟型であり、多くのマンゴーは追熟を必要とする。

追熟中のギョクブン
夏小紅は収穫後の追熟も楽しめるマンゴー

夏小紅という沖縄ブランドのマンゴーも追熟型
筆者がかなり美味しいと感じる品種の一つに、夏小紅(品種はリペンス)というものがある。夏小紅は、沖縄県で生産されるマンゴーのブランドの一つで、アーウィンとは異なる魅力を持った品種である。筆者は、アーウィンだけに依存しない沖縄マンゴーの選択肢として、夏小紅などもアピールしていきたいと考えている。
夏小紅は、収穫時には果皮に青みがかっている状態であるが、追熟させることで果皮の色が変化し、果肉もやわらかくなっていく。香りや甘みも強くなりとても美味しい品種である。ただ、逆に収穫が遅れてしまうと、果肉崩壊症などが出やすく注意が必要である。そのため、青みがかっている状態で販売されているものを購入する方が、美味しいものを手に入れやすい品種である。
反対に「収穫したらすぐ食べてほしい」果物もある
ここまでは、収穫後に追熟させることでおいしくなる果物を紹介してきた。しかし、筆者が栽培している熱帯果樹の中には、追熟を待つよりも「収穫したらすぐに食べてほしい」と思う果物もある。表で追熟の必要性に「×」をつけたものであるが、代表的なものをいくつか紹介する。
アセロラは収穫したその日に食べてほしい

アセロラは色が7分以上着いてきたら収穫して良い
完熟したアセロラは非常にやわらかく、果皮も薄いため、収穫後の傷みが早い。筆者もアセロラを栽培しているが、赤く完熟した果実を収穫したら、できればその日のうちに食べることをおすすめしている。
樹上で完熟したアセロラを摘み、そのまま食べたときのみずみずしさや香りは格別である。しかし、数日置いておくと、水分が抜けたり、果実がやわらかくなりすぎたり、傷みが出たりする。
すぐに食べられない場合には冷蔵庫へ入れるが、筆者の場合は冷蔵していても1~2日程度を目安に、できるだけ早く食べ切るようにしている。それでも食べきれない場合には、ざっと水洗いをして冷凍庫に保存すると長期保存が可能である。その後は、スムージーなどにするととても美味しい。

アセロラは食べきれない場合、冷凍保存する
ジャボチカバも日持ち性が非常に悪い

ジャボチカバも収穫したらすぐに食べよう
もう一つ、収穫後なるべく早く食べたい果物がジャボチカバである。ジャボチカバは幹や太い枝に直接、ブドウのような果実を付ける非常にユニークな果樹だ。完熟すると果皮が黒紫色になり、中には白く半透明のジューシーな果肉が入っている。非常においしい果物なのだが、日持ちしない。
そのためジャボチカバもできれば収穫したその日、遅くとも翌日までには食べることをおすすめしている。保存する場合には冷蔵庫に入れるが、それでも家庭では1~2日程度を目安に、できるだけ早めに食べ切った方がよい。
追熟の注意点:目安の日数だけで食べ頃を判断しない
最近は、追熟型の果物を購入する際に「食べ頃の目安」が表示されていることも多いが、それに頼りすぎるのは注意が必要である。
同じ果物であっても、収穫時の熟度や個体差、保存している場所の温度などによって、追熟の進み方は異なる。例えば「購入後3~5日が食べ頃」と書かれていても、夏場の暖かい室内ではそれより早く熟すこともあれば、逆に寒い部屋ではなかなか追熟が進まないこともある。
筆者らも果実を販売する際には、食べ頃の目安を記載したカードを同封している。しかし、特に追熟の見極めが難しいマンゴーの金煌(キンコウ)などでは、個体によって追熟速度に差があるため、食べ頃までの日数にはある程度の幅を持たせて案内している。

筆者らも果実を販売する際には、食べ頃の目安を記載している(マンゴーのキンコウ)
そのため、食べ頃を判断するときは日数だけでなく、「果皮の色」「香り」「果実のやわらかさ」など、果実そのものの変化を見ることが大切である。
ただし、やわらかさを確認する際に、果実を強く押すのは避けたい。特にマンゴーやモモ、アボカドなどは、何度も強く押すことで果肉が傷み、その部分から変色や腐敗につながることがある。手のひらや指先で軽く触れ、弾力を確かめる程度にとどめよう。
また、アボカドやマンゴーなど、ある程度重さのある果実では、追熟中に置く向きをときどき変えることも筆者は心がけている。長時間同じ面を下にして置いていると、果実自身の重さによって接地面がやわらかくなったり、傷んだりすることがあるためだ。
追熟中の果実は、一度置いたらそのまま放置するのではなく、毎日状態を確認しながら、色や香り、やわらかさの変化を観察する。表示されている日数はあくまで目安と考え、最後は果実そのものを見ながら食べ頃を判断することが、おいしく食べるためのポイントである。
追熟を早めたいときはどうする?
追熟型のフルーツを「なるべく早く食べたい!」という場合には、追熟を早める方法もある。ポイントになるのが、果実の成熟を促す植物ホルモン「エチレン」である。
バナナやリンゴなどは、成熟する過程でエチレンを放出する。アボカドなどの追熟型果実を、こうした果物と一緒に紙袋などへ入れておくと、袋の中にエチレンがたまりやすくなり、単独で置いておくよりも追熟を早めることができる。
また、エチレンを発生させる市販の「追熟剤」を利用する方法もある。特にキウイフルーツなどの追熟に利用されることがあり、筆者も果実を追熟させる際によく活用している。
温度も追熟の速度を左右する。一般的に、温度が低いと追熟はゆっくりになり、適温の範囲では温度が高くなるほど追熟も早く進みやすい。ただし、追熟に適した温度は果物によって異なるため、「早く熟させたいから」と極端に暖かい場所に置くのは避けたい。高温になりすぎると、果肉が過度にやわらかくなったり、カビや腐敗が発生したり、正常な追熟が妨げられたりすることもある。
そのため、追熟を早める場合でも、それぞれの果物に適した温度で管理しながら、毎日、色や香り、やわらかさなどを確認することが大切である。
なお、果実が未熟すぎる場合は、エチレンを利用しても本来のおいしさに到達しないことがある。追熟とは、未熟な果実を無理やり熟させるものではなく、適切な成熟段階まで育った果実の成熟を、収穫後に進めるものだと考えておきたい。
まとめ
筆者自身、これまで国内外のさまざまな果物を育て、取り寄せ、食べ比べてきた。その中で、同じ種類の果物でも、品種や熟度、食べるタイミングによって、これほどまでに味が変わるのかと何度も驚かされてきた。そうした経験を重ねるうちに、今ではすっかり果物の虜になっている。
少し大げさに聞こえるかもしれないが、筆者にとって果物との出会いは、人生を変えたものの一つである。知らなかった品種を知り、育て、食べ、その違いを知るたびに、果物の世界はどんどん広がっていった。そして、追熟や保存、食べ頃についての知識が増えるほど、以前よりもさらに果物が好きになった。
果物のおいしさを最大限に楽しむために必要なのは、高級な果物を買うことだけではない。その果物がどのような性質を持ち、いつが食べ頃なのかを知ることも大切である。
ぜひ果物を手に取ったときには、すぐに食べるだけでなく、色や香り、やわらかさの変化にも注目してみてほしい。食べ頃を知ることができれば、いつもの果物がこれまで以上においしく感じられ、果物の世界をもっと深く楽しめるようになるはずだ。
















