甲斐路ってどんなブドウ?

甲斐路は山梨県甲府市にある植原葡萄研究所で育成されたブドウで、1955年に育成され、1977年に旧農産種苗法により名称登録されました。
皮は赤色で甘味が強く、酸味が適度にあり、ジューシーなブドウです。皮はシャインマスカットと同じぐらいかやや厚い程度で、種はありますが皮ごと食べられるとされています。
しかし、皮の厚さはかなり絶妙で、人によって「皮ごと食べられる」「いや、皮は食べられない」と判断が分かれるぐらいの厚さではないかと思います。この品種は皮ぎしにうまみが詰まっているため、皮が気になる場合は、皮ごと噛んだあとに皮だけ吐き出すといいでしょう。
香りは控えめで、ものによっては香りのないものもありますが、甲斐路独特のうまみがあり、生産者からの人気も高い品種です。
交配親はフレームトーケー×ネオマスカット。非常にうまいが栽培しづらいと言われるフレームトーケーと、マスカット・オブ・アレキサンドリアを改良し、露地栽培ができるようになったネオマスカットを交配することによって、露地栽培可能な赤いマスカットを育成しました。

9月半ば、収穫にはまだ半月ほど早い時期の甲斐路
熟期は遅く、収穫は山梨県で9月末から10月。寒い地域ではさらに熟期が遅れるため、熟すころには雪が降る季節になってしまうことや、赤ブドウと言いながらも着色がよくないこと、山梨県を強く想起させるネーミングなどから、現在はそのほとんどが山梨県で作られています。
かつては晩生の高級品種の代表格でしたが、現在ではさまざまな赤ブドウが出回るようになったため、種ありで熟期の遅い甲斐路の生産は下火になっています。
甲斐路から派生した品種として、「早生(わせ)甲斐路」、「赤嶺(せきれい)」、「ガーネット」、「シャインレッド」があります。これらの品種はどれも、甲斐路の欠点である熟期の遅さと着色の悪さを改善した枝変わり品種で、派生品種間に差はほとんどありません。

9月半ば、収穫期を迎えつつある早生着色系甲斐路のガーネット。色の入り方が本甲斐路とはまったく違う
現在では、この4種の早生着色系の品種たちが「甲斐路」の名前で流通し、本家本元の甲斐路は現在ほとんど作られなくなっていますが、味の面では従来の甲斐路が一番いいとされており、中には「本甲斐路」の名で生産を続けている農家もいます。
甲斐路の特徴
独特のうまみ
ブドウで重視される味わいは主に甘味や酸味ですが、甲斐路には巨峰やシャインマスカットとは違う、非常にコクのあるうまみがあります。
これは甲斐路系品種の大きな特徴で、この味わいを後代に引き継ごうと多くの方が育種に取り組み、ルーベルマスカットやクルガンローズなど、さまざまな品種が誕生しました。甲斐路の子品種、孫品種は非常に多く、シャインマスカットもそのひとつです。
マスカットの香り
今でこそ赤いマスカットはたくさんありますが、甲斐路が育成された当時は他に赤いマスカットはありませんでした。
香りはあまり強いほうではなく、生産者によってバラつきがあるうえ、国の研究機関である農研機構が出したブドウの香りに関する論文では「香りなし」と記載されているほどですが、本当においしい甲斐路にはほのかなマスカットの香りが乗ります。
マスカットの香りは巨峰のように嗅げば匂うわけではなく、甲斐路を食べて飲み込むときに、ふわっと鼻の奥から抜けてくるものです。甲斐路を食べて、マスカットの香りを実感してみてください。
種がある
甲斐路は基本的に種ありで栽培されます。多くのブドウはジベレリンという植物ホルモンによる処理を行い、種なしにします。しかし、甲斐路はこのジベレリンの感受性が悪く、完全な種なしにはならないとされています。
そのため、種なし栽培が主流となった現在でも、数少ない種ありのブドウとして作られています。
赤くなりにくい

スーパーで販売されている早生着色系の甲斐路
一般的に赤ブドウは着色(色付き)がよくありませんが、甲斐路はまさにその典型的な例です。
ブドウは昼夜の温度差が激しいほどよく着色するといわれていますが、甲斐路の主な産地である甲府盆地は暑く、夜温も下がりにくいので、着色においては不利な地域です。
甲斐路は果実に直接日光が当たらないと着色が進まないという特性があるため、生産者は葉の面積を減らして棚を明るくしたり、地面に反射マルチシートを敷いて日光を反射させたりするなど、色付きをよくするための工夫をしています。
それでも、思ったように着色が進まないケースがよくあるため、甲斐路は赤と緑(黄色)が混ざったような色になってしまうことがあります。そのため、現在では熟期も早く、色素が甲斐路の3倍あると言われている赤嶺が主に「甲斐路」として出荷されています。

早生着色系甲斐路のひとつ、早生甲斐路
赤嶺や早生甲斐路など、早生着色系の甲斐路もおいしいブドウですが、栽培農家は口を揃えて「やはり本家本元の甲斐路が一番うまい」と言っています。山梨県の観光ブドウ園でも「甲斐路」は主に赤嶺で、昔ながらの甲斐路は「本甲斐路」と言わないと出てこないケースもあるようです。
栽培が大変
甲斐路は病気に弱く、栽培性はあまり優れているとは言えません。山梨県では露地栽培されることもありますが、それはそのぶん手間をかけて防除をしているため。もし家庭で栽培をしてみたいのであれば、最低限雨よけが必要になるでしょう。
また、甲斐路は直接日光に当てないと着色しないため、着色期には袋を外して傘にかけかえたり、地面に日光を反射するマルチと呼ばれるシートを敷く必要があるなど、シャインマスカットと比べると栽培には高度な技術が必要です。
甲斐路の旬の時期
主に赤嶺などの早生着色系の甲斐路が9月半ばごろから出回り始め、本甲斐路は10月が主なシーズンです。
スーパーで販売されている「甲斐路」は、基本的には早生着色系のもので、昔ながらの「本甲斐路」はめったに流通しません。本甲斐路を食べてみたいという場合は、山梨県の道の駅や直売所、観光ブドウ園に行くといいでしょう。
おいしい甲斐路の選び方

早生着色系甲斐路のひとつ、ガーネット
軸がみずみずしいか
まずチェックしたいのが軸の色。新鮮な甲斐路は、軸がみずみずしい緑色をしています。乾燥して茶色くなっている場合は、収穫から時間が経っている可能性があります。
粒の張り・つや
果粒に張りとつやがあり、指で軽く触れて弾力があるものは新鮮な証拠です。逆にシワが寄っていたり、押して柔らかすぎたりするものは避けましょう。
甲斐路は色が付きづらい赤ブドウ。スーパー等で販売されている甲斐路は早生着色系のものが多いですが、それでも綺麗に真っ赤になっているブドウはほとんどないという印象です。
そのため、色に関してはあまり気にしすぎず、それよりも張りやつやを重視して新鮮なものを選んだほうがいいと言えるでしょう。
果粒にブルーム(白い粉)がついているか
粒の表面に白っぽい粉がついていることがありますが、これはブルームと呼ばれるロウ状の天然成分。果実の水分蒸発を防ぐ役割があります。
このブルームは時間が経つと失われるほか、ぶつけたりこすったりすると簡単に取れてしまいます。ブルームがない=新鮮でないというわけではありませんが、ブルームがしっかり乗っている甲斐路はそれだけ畑や店頭で丁寧に扱われている証拠というわけです。
まとめ
甲斐路は昔ながらの種ありで晩生の赤ブドウです。皮が薄い代わりに着色が悪く、栽培には高度な技術が必要な品種です。
もし店頭で見かけたら、この記事でご紹介したポイントを参考に、ぜひおいしい甲斐路を選んでみてください。そして、ブドウ狩りやブドウ農園の直売所など、甲斐路がなっている現場を見てみるのもおすすめです。赤嶺などの早生着色系の甲斐路もいいですが、今では貴重になってしまった「本甲斐路」も、ぜひ食べてみてください!

















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