畑全体を一気に整えようとすると挫折しやすい

自然農法の畑は草に埋もれてしまいやすい
草地から畑を始めるとき、最初から畑全体をきれいに整えようとする人は少なくありません。草を刈り、土を整え、あちこちに畝を作って、できるだけ早く畑らしい形にしようとします。
もちろん、耕運機などを使って一気に作業を進める方法もありますし、畑の広さや土の状態に応じて機械を取り入れるのも一つの選択肢です。ただ、自然農法的な畑づくりでは、土を大きく耕さず、できるだけ人の手で少しずつ整えようとする人も多いと思います。
しかし初心者のうちは、畑づくりに使える時間も体力も限られています。知識や技術が十分でないなかで畑全体に手を広げると、一つひとつの作業が中途半端になり、本当に押さえるべきポイントが後回しになってしまいます。
畑の形だけはできても、土づくりが十分でなければ野菜はうまく育ちません。通路や畝の位置が曖昧(あいまい)なままだと、その後の草刈りや手入れもしづらくなります。管理を続ける仕組みができていないため、少し作業が遅れただけで畑全体が草に覆われ、どこから手をつければよいか分からなくなってしまいます。
野菜は育たず、畑は草に埋もれ、手入れの負担だけが増えていく。こうした状態が続くと、畑へ行くこと自体が億劫になり、やがて心が折れてしまいます。
反対に、野菜を植えられる場所がきちんと整い、その状態を無理なく維持できるようになれば、その後の畑づくりはぐっと楽になります。毎回、畑全体を整え直したり、畝を一から作り直したりする必要がなくなるからです。
大切なのは、最初から畑全体を完成させることではありません。限られた時間と体力を、本当に必要な場所へ順番に集中させること。そして、無理なく続けられる作業から習慣にしていくことです。
ここからは、そのために踏んでほしい順序を紹介します。
ステップ1:通路を作り、草刈りを習慣にする

畑の周囲と、間の通路を作っていく
最初に取り組んでほしいのは、畝づくりや土づくりではなく、畑の中を歩けるようにすることです。
特に土地が広い場合、慣れていない人にとっては、草刈りを定期的に行うだけでも大変です。最も避けたいのは、「草刈りができていない」という罪悪感から畑へ行くのが億劫になり、さらに手入れが遅れるという悪循環です。
そこで、まずは畑の周囲と、畑の中を移動するための通路だけを定期的に刈ります。通路の幅は1メートルほどが目安です。夏の暑い時期でも、たとえば週に一度、朝の1時間だけ草を刈るなど、自分が無理なく続けられる形を決めて習慣にします。
畑の周囲の草刈りを問題なく続けられるようになったら、畑全体に通路を張り巡らせていきます。どこからでも畑の様子を確認できるようにし、目の行き届かない場所を作らないことがポイントです。
通路があると人が歩きやすくなるだけでなく、風の通り道ができ、畑全体の通気性も保ちやすくなります。反対に、風通しが悪くなって草が茂り放題になる「薮(やぶ)化」が起きると、草刈りそのものが重労働になり、一気に手をつけにくくなります。
通路の管理ができると畑全体を見渡しやすくなり、次に手を入れる場所も決めやすくなります。すぐに畑として使わない場所の草は、当面そのままでも構いません。草は根を張り、土を守ってくれる存在でもあるため、すべてを敵にして刈り込む必要はありません。
まずは「通路だけは管理する」という小さな習慣を作ること。これが、畑づくりを長く続けるための土台になります。
ステップ2:区画を決め、土づくりを集中させる

小さい区画に区切って、時間のある時に一つずつ土づくりや畝たてを仕上げていく
通路を継続して管理できるようになったら、次に、実際に野菜を育てる場所を「区画」として決めます。
僕の畑では、基本的に1区画を15平方メートルほどにしています。初心者でも、週末に一人で管理しやすい広さだからです。もっと小さく始めたい場合は、1平方メートルほどの畝一つからでも構いません。
大切なのは、自分が確実に管理できる範囲から始めることです。畑全体に少しずつ手を入れるのではなく、まずは一つの区画に時間や労力、土づくりの資材を集中させます。
区画の周りには、幅と深さが10センチほどの軽い溝を掘り、通路との境界を分かりやすくしておきます。深く掘る必要はありません。どこからどこまでを畑として管理するのか、後から見ても分かる状態にしておくことが目的です。

通路と区画が分かりやすいように維持する。区画は円形でも四角形でも良い
土づくりも、まずはこの区画の中だけで行います。畑全体を一気に良くしようとすると、時間もお金も労力も分散し、どの場所も中途半端になりがちです。それよりも、一部の区画に力を集中し、確実に野菜が育ちやすい場所を一つ作る方が、成果を実感しやすく、その後の管理も続けやすくなります。
どのような土づくりをするかは、実践したい農法や現在の土の状態に合わせて決めて構いません。まず一つの区画を整え、無理なく管理できることを確認してから、次の区画へ広げていきます。
時間があるときに、一つずつ。畑全体を急いで完成させる必要はありません。
ステップ3:区画の中は「固定畝」で使い続ける

畝は崩さず使い続ける。耕すときも畝の中だけ小規模に耕す
区画の中に畝を作ったら、その位置をできるだけ変えず、「固定畝」として使い続けます。
野菜を植えるたびに区画全体を崩し、畝を一から立て直すのは大きな労力です。せっかく整えた場所を毎回作り直していては、なかなか管理が楽になりません。
そこで、一度立てた畝はそのまま残し、耕したり土づくりをしたりする場合も、基本的には畝の中だけにとどめます。手をかける場所を明確にし、作業の範囲を広げすぎないことがポイントです。
畝の中では野菜が育ちやすい状態を整え、通路や畝の周囲は必要以上に手を入れない。このように管理する場所を絞ることで、畝立てや土づくりにかかる労力を少しずつ減らせます。
野菜を植えられる状態を維持できるようになれば、次の作付けも始めやすくなります。この積み重ねによって、週末だけの畑仕事でも無理なく続けられるようになります。
水はけが悪い場所や、土が硬い場所では周囲に溝を掘る

土地の周囲に溝を掘ると、不耕起でも土が柔らかくなりやすい
今回紹介した方法は、畑全体を繰り返し耕さない不耕起栽培の手法を用いていますが、もともと土が硬い場所や水はけが悪い場所での不耕起栽培は土の中の通気性が悪くなりやすく、土づくりが進みにくいです。
それを改善するために、土の中の通気性を確保する工夫が別途必要になります。畑全体の周囲に幅と深さが30センチメートルほどの溝を掘ります。周囲に溝があることで、余分な水が抜けやすくなり、土の中にも空気が入りやすくなります。
畑全体を耕して空気を入れる代わりに、溝を掘って水と空気の通り道を作るイメージです。土地の状態を見て、水が溜まりやすそうなところ、土が硬そうな場所から少しずつ取り入れてみてください。
暮らしを豊かにする習慣を身につけていく

自然農法に興味を持ち、実際に畑づくりへ一歩踏み出してくれる人が増えることを、僕はとてもうれしく思っています。だからこそ、途中で心が折れてしまう人が多いことを、とても残念に感じています。
畑づくりは長期戦です。特に自然農法では、すべてが人間の思いどおりに進むわけではありません。草や虫、土や天候と向き合いながら、その時々の状態に合わせて関わり方を変えていく。思いどおりにならないからこそ得られる気づきや面白さも、自然農法の醍醐味(だいごみ)の一つだと思います。
だから、一気に理想の畑を完成させる必要はありません。今回紹介した3ステップを押さえ、自分の体力や使える時間、ライフスタイルに合わせて、続けられる作業を少しずつ習慣にしていく。その時間が無理なく日常の一部となり、畑のある暮らしを長く楽しんでいくために、今回紹介した方法が少しでも参考になればうれしいです。


















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