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投資を通じて、世界の食料安全保障の実現を目指す。JICAが発行する債券「アグリボンド」

投資を通じて、世界の食料安全保障の実現を目指す。JICAが発行する債券「アグリボンド」

JICA(ジャイカ/独立行政法人 国際協力機構:Japan International Cooperation Agency)は、日本の政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)を実施する非営利の組織。開発途上国に対して様々な国際協力を行っています。そのJICAが2026年11月に発行予定の債券、アグリボンドをご紹介します。投資先としての信頼性があると同時に、世界の食料安全保障にも貢献できる、JICAならではの債券です。

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■独立行政法人 国際協力機構
経済開発部
次長 兼 農業・農村開発第一グループ長
中村貴弘さん

財務部 有償財務課
企画役 高畠千秋さん
調査役 伊藤萌さん

■Green Carbon株式会社
代表取締役 
大北潤さん

食料安全保障のために、世界の一次産業の成長はもちろん、そこに従事する人の幸せの実現も目指す

JICAと聞くと青年海外協力隊などのボランティア派遣をイメージする方が多いのではないでしょうか。それ以外にも途上国の政府や民間企業に対して貸し付けを行う有償資金協力や、学校・医療・インフラ整備のための無償資金協力、人材育成や制度づくりを支援する技術協力や国際緊急援助など手がける事業は多種多様。様々な事業を通じて多くの国の発展に貢献しています。

JICAの活動は国際的でスケールも大きく、2026年の有償資金協力事業規模は2兆円以上。営利を目的としない政府系機関であるため、政府出資金等を活用して事業が推進されています。2008年からは有償資金協力事業の資金調達の一環として、今回ご紹介するJICA債と呼ばれる債券を発行し、資金の獲得に努めています。

JICA債は、世界共通でルールが定められているソーシャルボンド・サステナビリティボンドという、一般の債券とは異なる債券。獲得した資金の充当先が限定されており、医療・教育・福祉・雇用支援などの社会課題の解決のためのプロジェクトに充当するのが、ソーシャルボンド。サステナビリティボンドは、環境と社会の両方の課題解決に資する事業に充当されます。

2019年以降は、特定の地域や課題のために限定して資金を充当する「テーマ債」を発行しています。2020年は新型コロナ対応ソーシャルボンド、2024年はジェンダーボンドなど、その時々の世界情勢に応じてテーマを決定しています。2026年11月に発行される最新のJICA債は、アグリボンド。名前の通り、農業・水産など一次産業がテーマ。世界的な食料安全保障の重要性の高まりを踏まえ、発行される債券です。2年限を予定しており、発行額は100億円程度となっています。

充当先には、インドの農場への灌漑施設や点滴灌漑設備の導入支援プロジェクト、栽培作物の多様化支援プロジェクトなどが予定されています。どのプロジェクトも、ただ産業の成長を支援するだけではなく、収量や収入が向上することで、従事する女性の増加や社会進出を支援するといったことまで目指しています。

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ジャルカンド州「トマトを収穫する女性農家」

「例えば日本の私たちが食べているパンの材料のほとんどは、海外産です。日本は食料自給率が40%程で、世界の一次産業に食卓を支えられているといっても過言ではありません。だから日本の食料安全保障は、日本国内だけでなく、世界に視野を広げて考えなければ実現しません」

そう話すのは、JICAで世界の農村開発に携わっている中村貴弘さん。アグリボンドでは農家の収量や収入の向上だけでなく、従事する人たちの社会進出まで支援していくと話します。

「生産を担う国の一次産業が発展することはもちろん、従事する人たちの生活が豊かにならねば、後継者は生まれない。持続可能性は高まらないのです。それが実現できれば、翻って日本の私たちの食料安全保障につながります。たとえばJICAも協力したモーリタニアのタコ漁。実は日本が輸入しているタコの3分の1はモーリタニア産です。アフリカの国のタコ漁を支え、発展させ、魅力的な産業に育て、持続可能性を高める。それが、私たちが今後も当たり前にタコを食べられる日常につながるのです」

JICAの手がける様々な事業・プロジェクトが、国境や組織の垣根を越え、それぞれ影響し合って相乗効果を発揮し、世界をより良くするのが理想、と話す中村さん。次章ではその理想を体現しているようなベトナムの好事例をご紹介します。

日本の3倍以上の水田を舞台にしたメタンガス削減プロジェクトが創出する、世界への大きなインパクト

ベトナムでの水田メタンガス削減プロジェクトが、その好事例。
プロジェクトを担ったのは、Green Carbon株式会社(以下、GC社)。GC社は、国内外でカーボンクレジットの創出・販売を手がけるほか、大学や研究機関と協力して植物・微生物の研究も実施している、日本の企業です。2023年度、JICAが行う「中小企業・SDGsビジネス支援事業」にGC社が採択され、プロジェクトがスタートしました。

目覚ましい経済発展を遂げているベトナムですが、都市部と農村部での収入格差は大きく開いています。農村部では多くの農家が米の生産に従事していますが、生産技術や灌漑技術が発展途上であるため、十分な収量を上げられていないのがその原因のひとつ。日照りの多いベトナムでは、水管理ができないこともあり、水を張りっぱなしという水田が多いのです。その状態では、土壌に存在するメタン生成菌が有機物を分解してメタンガスを発生させ、稲の生育を阻害します。それでは収量が向上しません。結果、ベトナムの米生産者の年収は日本の3分の1ほどに留まっているのです。

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白い箱は「チャンバー」と呼ばれるメタンガスを箱の中にため計測する装置

「日本には、栽培期間中に水田から水を抜く中干しでメタンガスの発生を防ぐ方法がある。ベトナムにも中干しを行う間断灌漑を導入できれば、収量を増やし、農家の収入を向上させることができる。さらに、削減されたメタンガスをカーボンクレジットとして販売すれば、副収入も増やせる。その実現可能性を探るため、まずは当社がすでに関わりのあったゲアン省の30,000ヘクタールの圃場で調査を開始したのです」
そう話すのは、GC社の代表取締役である大北潤さん。もともと関わりがあったとはいえ、与えられた時間はわずか3年。大規模なプロジェクトを進めるには、不安も大きかったそうです。

「現地の生産者や村や町の長などとは交流もありました。ですがこれだけ規模が大きいと、行政を巻き込まねばなりません。海外でネックになるのは、やり取りの遅さ。メールなどで申し入れても、一向に返事が来ないことも多々ある。もちろん、やり取りのない日本の一企業がいきなり連絡を取ろうとするのです、向こうも構えてしまうのは当然。行政との交渉をどれだけスムーズに進めるか、それが最大の難関だな、と思っていたのです」

その心配は杞憂に終わります。JICAがゲアン省で過去にODAによって灌漑施設を整備していたこともあり、日本への信頼が厚かったのです。そのJICAの事業に採択されたということで、トントン拍子に話が進みました。

「JICAにも要人へつないでもらい、交渉はとてもスムーズに進みました。何より、間断灌漑のために必要なダムがJICAのおかげで既にできていた。これは大きかった。すぐに実証実験を進めることができたのです」

結果、3年後には事業を完遂でき、ベトナムで間断灌漑を導入するメリットがはっきりと立証されました。間断灌漑で米の収量は10%ほどアップ。さらに、米の栽培に使用する水の量が約40%削減されました。その水は、他の作物の栽培や別の工業、そして生活に使うことができ、地域全体が潤ったのです。
ゲアン省の生産者たちは、間断灌漑の成果を知って、次々と「自分も始めたい」とGC社に声をかけるようになり、3年で30,000人ほどの農家が間断灌漑をスタートしたそうです。行政からも高く評価され、GC社の事業に参画する自治体は15まで増えました。

「間断灌漑の導入は、大きな作業の負荷はありません。それで、農家の年収は10%アップする。家族が栄養価の高い食事を毎日摂れたり、子どもにより良い教育を受けさせることができたりする、そんな選択ができるのです。今後、カーボンクレジットの販売がスタートすれば、ヘクタールあたり3万円ほど生産者の収入は増加するでしょう」

ベトナムの水田は約700万ヘクタールと日本の3倍以上あります。GC社は、カーボンクレジットの創出ポテンシャルと経済効果を840億円(6t-CO2/ヘクタール、2000円/トンで計算)と試算。収量アップや使用水量の削減で、実際のメリットはもっと大きなものとなるでしょう。

「もちろん、簡単には実現しません。ゲアン省と違い、ダムのない地域も多い。でも、成功事例ができたことで、他自治体へ売り込むハードルは一気に下がった。これもJICAがODAの灌漑施設整備で先に道筋をつけていてくれたから。JICAの活動とその成果が、私たちを助けてくれたのです」

これまでのJICAのベトナムでの事業が様々な所で自分たちのプロジェクトを助けてくれた、と大北さんは話します。その大北さんも、今後はより高い収量を上げられる日本の農業技術をベトナムに持ち込んだり、人材を交流させたりなど、日本の農業へも貢献できる方法を模索する予定と話します。

「ベトナム国内の米生産者への支援が、日本国内の生産者に活かされるよう波及していく。あるいはベトナムの生産量が上がることで、世界や日本の食料不足を救うことにつながるかもしれない。食料安全保障の一端が、GC社のプロジェクトで拓かれたと感じています」
中村さんは笑顔でそう話します。

投資対象としての安心感だけでなく、世界への貢献の意義も感じられるJICA債「アグリボンド」

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ラジャスタン州「カリフラワーを栽培するプロジェクト対象農家」

11月に発行されるアグリボンドも、充当先のプロジェクトの成果が、いつか世界の、そして日本の食料安全保障につながるかもしれません。通常の投資とは違い、世界の国々そして人々に貢献できるという実感が得られるのが、JICA債の特長のひとつとも言えます。

また、投資先としての高い信用力もJICA債の特徴です。 実はソーシャルボンドを日本で初めて発行したのはJICA。JICAは、日本のソーシャルボンド市場を早い段階から牽引してきた存在なのです。
JICAは53.1%という高水準の自己資本比率を維持するなど、堅固な財務基盤を有しています(2025年度末時点)。さらに、日本政府と同等の格付を取得しており、Moody’sなどの格付機関からも「安定的」と評価されています。
こうした信用力に加え、社会課題の解決に資金を役立てるという考え方に共感する投資家も広がっています。ソーシャルボンド発行以降、その趣旨に共感した377件の投資家から投資表明を受けています。その中には、私たちにもなじみのある企業や学校法人などが数多く名を連ねています。
こうした投資家からの支持もあり、JICA債は着実に発行実績を積み重ねてきました。これまでに発行された国内市場向け円建て債の総額は1兆470億円。2014年からは海外市場向けの政府保証外債も発行され、その総額は82.3億米ドルに上ります。

11月に発行されるアグリボンドは、機関投資家向けですが、年度末には個人投資家向けの債券の発行も予定されています。国際貢献でき、いつかは自分の生活が恩恵を受けるかもしれない、そんな海外プロジェクトを支えるために、なにより安心感ある投資のために、JICA債に注目してみてはいかがでしょうか。

お問い合わせ先

独立行政法人国際協力機構 財務部有償財務課
TEL:03-5226-9279 FAX:03-5226-6383

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