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東日本電信電話株式会社

エッジコンピューティングの品質制御による遠隔収穫ロボット操作に成功

公開日:2025年05月12日

東日本電信電話株式会社
~ユーザビリティの高いスマート農業の促進に貢献~

発表のポイント:
◆ 東京都の収穫ロボット操作者が、イチゴの収穫適否の画像処理を付加された映像を見ながら秋田県の圃場にあるロボットを遠隔操作して、秋田-東京間直線距離約400km離れた場所のイチゴを収穫する実証を実施。
◆ 通信品質の変動にも高い操作性を維持し、ロボットを精度高く操作しイチゴを傷つけずに収穫できることに成功。
◆ ネットワークとサーバが連携しエッジコンピューティングの品質制御することで、高度なイチゴ収穫動作でも遠隔操作が可能となり、ユーザビリティの高いスマート農業の実現につながる。

 日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)、東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:澁谷 直樹、以下「NTT東日本」)、株式会社NTTアグリテクノロジー(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:酒井 大雅、以下「NTTアグリテクノロジー」)は、圃場にある収穫ロボットをネットワーク越しに遠隔操作し(秋田-東京間直線距離約400km)、イチゴを収穫する実証実験を行いました。本実証実験では、ネットワークの品質状況に応じたリアルタイムな動作制御により、高い操作性を維持した遠隔収穫作業が可能であることを確認しました。これにより、農業業界のみならず、様々なシーンで遠隔操作が可能となり、人手不足解消につながります。
 なお、本技術については2025年5月15日、16日に開催される「つくばフォーラム2025*1」にて展示予定です。

1.背景
 日本の農業は現在、担い手の減少や高齢化などに伴う労働力の不足に直面しており、その解決策としてスマート農業技術の導入が進んでいます。これまでのスマート農業は、主に水やり、追肥などの量や時期を最適化することで収穫量の安定化を図るものでしたが、農作業の多くは、依然として人手に頼っているのが現状です。そのため、農業用ロボットによって農作業の稼働を削減することが求められています。
 特に、植物を扱う農業では、収穫や農薬散布などの作業を一律に自動化することが難しいため、人の判断を伴う遠隔操作ロボットの活用が重要です。本実証では、農作業支援者が遠隔地から収穫作業を行うことを想定し、操作性に優れた収穫ロボットの遠隔操作実証に挑戦しました。
 遠隔操作の実用化には、操作性の向上や収穫判断をするために、ネットワーク遅延などの不可視情報を画像処理により可視化することが有効です。この利用形態においては、遠隔操作に欠かせないネットワークやサーバ処理の低遅延化だけでなく、万が一、高負荷状態により遅延が大きくなってしまった場合にも操作性を低下させない仕組みが、広く遠隔操作を普及させるために必要となっています。
 このような背景から、農業用ロボットとAIによる画像処理を活用した収穫作業を、遠隔にいる農作業支援者がスムーズに実施できることをめざし、操作性の高い遠隔収穫ロボットの操作実証に取り組みました。
2.実証実験の概要と結果
 本実証では、東京都の収穫ロボット操作者がネットワークを通じて伝送されたカメラ映像を見ながら、秋田県の圃場にあるイチゴを収穫するロボットを遠隔操作する環境を構築しました。収穫ロボットのカメラが撮影した映像を画像処理用サーバがイチゴの収穫適否を判定し、その結果を映像に追加します。操作者はモニタに表示された収穫適否の情報が表示される映像を見て、ロボットを遠隔操作して秋田にあるイチゴを収穫します。
 システム構成として、秋田県のイチゴ圃場に収穫ロボットと画像処理用サーバを設置し、東京都の拠点に操作端末を配置しました。両拠点は直線距離で約400km離れており、光アクセス回線とインターネット回線で接続されています(図1)。この環境で、収穫ロボットを遠隔から精度高く操作し、イチゴを傷つけずに収穫できることを確認しました。
 また本システムに、モニタの表示情報とロボットアームの速度をエンドツーエンドの遅延時間に応じて変更する機能を実装し、本機能がイチゴの収穫作業の操作性をどの程度向上させたのかを検証しました。具体的にはイチゴの位置にロボットアームを1回の操作で正確に移動できた割合(成功率)を測定しました。その結果、遅延が変動する環境では成功率が約50%でしたが、本機能を活用することで成功率は約80%に向上し、約30%の改善が確認されました。さらに、被験者の5名全員が本機能による操作性の改善を実感したと評価しました。

図1 遠隔収穫システム構成図

3.技術のポイント
 ネットワークコンピュート高速クローズドループ制御技術*2は、エッジサーバでの処理時間とネットワークの遅延時間をリアルタイムに状態把握し、エンドツーエンドでの遅延時間が性能要件を満たさなくなる場合には別の経路および別のサーバ処理に即座に切り替えることで安定した低遅延サービスを提供する技術です。この度、本技術の高度化を図り、スマート農業に適用可能な機能を付加しました。

(1)アプリ外からの処理時間計測
 従来は、画像処理アプリに独自機能を追加し、その機能を用いてアプリと連携することで、画像処理時間を計測していました。機能の高度化により、アプリ外から入出力データを汎用画像フレームのヘッダ特性を用いて解析し、データの通過時間から処理時間を計算できるようになりました。これにより、画像処理アプリに手を加えなくても、アプリ外のサーバのみで処理時間計測を行えるようになります(図2)。

図2 システム連携機能

(2)品質通知によるシステム連携
 従来は、通信品質が性能要件を満たさない場合、別の経路やサーバ処理に切り替える制御を行っていました。より汎用的な使い方として、通信品質の状態をリアルタイムに遠隔収穫システムに通知し、システム側で制御を行うようにしました。本機能では、通信品質を分析し、それを3段階に分類し、遠隔収穫システムへの通知を行います。遠隔収穫システムは、図3に示すように、ロボットから操作端末に流れる映像に通信品質を表示し、操作者にタイムリーに通知します。また、ロボットアームを制御する情報に対して通信品質に応じた速度制御を行い、アームを減速または停止させます。これにより、エンドツーエンドでの遅延時間が長くなった場合でも、操作者はその状況を把握し、操作上のストレスを軽減することが可能です。さらに、遅延時間が長くなると操作精度が低下しますが、アームの速度を調整することで、その誤差を軽減することができます。

図3 システム連携機能

4.各社の役割
NTT:ネットワークコンピュート高速クローズドループ制御技術の実装と、遠隔操作における本技術の有用性検証
NTT東日本:ICTを活用した遠隔営農支援システムのビジネス化の検討、実証における通信環境の提供
NTTアグリテクノロジー:農業フィールドの提供と、ロボットを用いたスマート農業の有用性検証
5.今後の展開
 本実証の成果は、通信品質の変動に対して農業用ロボットの操作性を改善するメリットがあります。人とロボットが融合した日本の新しい農業の形の実現に向け、本実証実験の成果の実用化に向けて取り組んでまいります。
 また、ネットワークコンピュート高速クローズドループ制御技術は、農業のみならず、他業界でも直面する人手不足・技術者不足を解決する技術です。引き続き、この技術の実用化・汎用化を推進し、場所にとらわれない新たな働き方・労働生産性向上を具現化し、産業界の社会的課題解決をめざします。

【用語解説】
※1.つくばフォーラム2025
https://www.rd.ntt/as/tforum/
※2.ネットワーク&コンピュート高速クローズドループ制御技術
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/05/16/230516a.html
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