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三井住友カード株式会社

100年後も住み続けられる町を目指して。三井住友カードの「持続可能な森づくり」~林業日本一を目指す岩手県住田町の事例~

公開日:2022年10月24日

「Have a good Cashless.」をブランドメッセージとして、キャッシュレスを通じた社会課題の解決を目指す三井住友カード。その一環として、毎月の利用明細を紙からWEBへ切り替えるデジタル化の利便性を追求しながら、持続可能な森づくりを目指す「三井住友カードの森づくり」の活動を実施しています。

全国に5箇所ある「三井住友カードの森」では、植樹だけでなく間伐も行いながら、森を健全な状態に整備する作業が行われています。それは一朝一夕で結果が出るものではなく、50年、100年、場合によってはそれ以上の歳月を要します。

 

本記事では、三井住友カード株式会社 マーケティング本部 部長代理 金子真友と、三井住友カードが寄付を通じて森づくりを支援している岩手県住田町の林政課 課長 菊田賢一さんの対談により、「持続可能な森づくり」の事例を紹介します。

持続可能な森づくりは、100年単位で考えるべき

―2020年から寄付を開始した「三井住友カードの森」は、持続可能な森づくりを支援する取り組みです。そもそも持続可能とは、どういう状態を指すのでしょうか?

金子:

当社では、その土地に合った適切な木が植えられていて、人の手をかけることなく、何十年何百年と森が在り続けられる状態を「持続可能な森」と考えています。これは、「三井住友カードの森」の活動でパートナーシップを組んでいる一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)さんが推進されている森づくりの考え方です。

森林業界では、「適地適木(てきちてきぼく)」といって、その土地に適した木を植えて、適切な手入れをしてこそ、土壌の豊かさや土砂災害に対する適応力が高くなり、持続可能な森ができるという考え方があるそうです。

国土の約7割が森林である日本は、非常に自然が豊かです。一方で、その内訳は約4割が人工的に植えられた人工林で、大半を成熟したスギとヒノキが占めており、伐採の時期を一斉に迎えています。それらの人工林を伐採した後、適切な樹木を植える、あるいは適切に間引いて健全な森に誘導する必要があるということを、この活動を通じて学びました。

三井住友カードの森で間伐をしている様子

―持続可能な森は、短期で達成できるものではないのでしょうか?

金子:

当社の支援する持続可能な森づくりは、目標林形(目標となる林の形)を定めて、バッグキャスティング(※)の手法を用いて植林する苗木を選定、実践していくのが基本的なスキームと伺っています。

1本の木が育つまでには、成長が早いスギやヒノキでも50年、広葉樹なら80〜100年、中には150年かかるものもあるとか。その間、野生動物が植物を食べてしまう、天候などの環境要因により育ちが悪いなど、あらゆる問題が起こります。また、適切なタイミングで間伐をしなければ、太陽の光が降り注がず、木々の成長を阻害することもあります。

※バッグキャスティング……複数の環境変化のシナリオを想定して、その影響を検討する方法

さまざまな仮説に基づき、トライアンドエラーを繰り返しながら、時には目標を再設定するといった調整を経て、徐々に地域に根ざした持続可能な森になっていくそうです。森の育成は繊細な作業であり、過去のデータやプロの知見を参考にしても、なかなか予想通りには育ちません。だからこそ、50年、100年といった長い目で検証しなければなりません。これは、全国各地の三井住友カードの森を訪問して学んだことです。

全国に先駆けてFSC認証を取得。岩手県住田町の「森づくり」

―全国に5箇所ある「三井住友カードの森」のひとつが、岩手県住田町にあります。なぜ、この地域への寄付を決めたのですか?

金子:

寄付をする地域は、パートナーのmore treesさんからいただいた候補地から選定しています。住田町は「森林・林業 日本一の町」を目指しており、豊富な森林資源と木材加工施設があります。適正に管理された森林から産出した木材であることを示すFSC認証も積極的に取得するなど、当社が目指す持続可能な森づくりにおいて最先端だと感じました。

2011年の東日本大震災では、近隣地域の被災者のために木造仮設住宅をいち早く建設するなど、森を通じた地域との営みにも注力されています。森づくりは地域ごとに理想形が異なりますが、全国に展開できるモデルケースになればという期待を持って住田町を選定し、2020年から寄付を継続しています。

―住田町では、どのようなビジョンを掲げて森づくりに取り組んでいますか?

菊田:

住田町は町の総面積に占める森林の割合が90%で、天然林と人工林の割合は面積比で約半々です。そのうち約40%を町が所有しています。行政として林業への関わりが深く、町内や周辺の自治体には、スギを中心とした針葉樹の伐採を得意とする林業従事者や、針葉樹を専門にした製材・加工工場がそろっています。したがって、町内で丁寧に育てた針葉樹を地元の工場で製材・加工して利用する一連の循環を効率的に進めることが当町の大きな方針です。

町内にある加工工場

ただ、近年は人工林が成熟して主伐期(しゅばつき)を迎えているため、伐採跡地のあり方を考えているところです。例えば、急な斜面の山奥や林道が乏しい場所は、針葉樹を植えて効率的な林業を行うのは適していません。そのような場所は水源林としての役割を第一にするなど、自然に近い形を残すことで持続可能な森をつくりたいと計画しています。

林業における経済的な価値創出も図りつつ、単純な数字では示せない環境にやさしい林業の手法も追求していきたい。さらに森林環境教育を実施することで、子どもから大人まで地元の林業に親しんでもらい、全国に胸を張れる林業のあり方を模索しています。

金子:

全国に先駆けてFSC認証を取得されている点も、模範的な取り組みだと感じました。

菊田:

FSC認証は、責任ある森林管理を認証するFM(Forest Management、森林管理)認証と、適切な加工・流通過程を認証するCoC(Chain of Custody、加工・流通過程)認証の2種類があり、住田町では2004年から町内の多くの森林がFSC-FM認証を取得しています。

金子:

more treesさんから「住田町には楓の樹液を使ってメープルをつくる取り組みもある」と聞きました。メープルを使ったクラフトビールも試作しているとか。多岐にわたって森林との向き合い方を模索されているのだなと感じました。

住田町のメープルを使った『KAEDE ALE』

菊田:

町としての取り組みではないのですが、森のツアーガイドなどを担当する森の案内人の方が、メープルを使ったクラフトビールの商品開発を進めています。林業従事者以外も巻き込んで森林に親しんでもらう、あるいは経済発展に役立ててもらうような取り組みは積極的に行いたいところです。

―三井住友カードの寄付は、どのような活動に使われているのでしょうか?

菊田:

三井住友カードさんからのご支援は今年で3年目となり、町が所有する森林の整備に充てさせていただいています。人工林の間伐や伐採跡地への植栽、植栽木を保護するシェルターの設置、森林の育成を妨害する笹を刈る作業費など、その内容はさまざまです。これらの整備によって森林の景観の変化がありました。一方で、まだ目には見えなくても、持続可能な森づくりにも確実に貢献しているだろうと思います。

白い部分がシェルターに覆われた植栽木 周りは笹で覆われている

笹で覆われた土地と、植栽部分の境界線

金子:

今年10月に念願の往訪が叶い、当社社員と役場の方含めた森づくりに関わる町の方と直接交流できたことは、非常に良い体験でした。引き続き、more treesさん、役場のみなさんと連携を取りながら、住田町の森林づくりを支えていけたら嬉しいです。

震災から3日後に着手、93戸の木造仮設住宅を建設

―2011年の東日本大震災の際、住田町では木造の仮設住宅を建設されたと聞きました。

菊田:

住田町は隣接する大船渡市や陸前高田市とあわせて「気仙地域」と呼ばれており、それらの地域とはとても近しい関係性です。東日本大震災では、海から20kmほど離れた住田町は幸いにも浸水被害はなく、後方支援として隣接地域をバックアップしました。

そのひとつが、地元の木材を利用した木造仮設住宅の建設です。従来の仮設住宅は、国の指示を受けて都道府県が設置するもの。ですが、まさに”隣の住民”が被災している状況下で、住田町は何ができるのかを考えた結果、町独自で木造仮設住宅の建設に踏み切りました。震災発生から、わずか3日後のことでした。

仮設住宅建設の様子

菊田:

建設資材等が十分に集まるか、どれだけの時間を要するのか、何もかも不透明な状況のなか、町の製材工場をあげて部材の製造が行われました。結果的に震災発生から3ヵ月足らずで、町内に93戸の木造仮設住宅を建設し、大船渡市・陸前高田市の被災者を受け入れました。

木造仮設住宅

菊田:

スピーディーな建設が実現したのは、震災前から木造仮設住宅の設営キットの作成と生産体制の検討を進めていたためでした。国へ提案するための図面や仕様がほぼ完成していた矢先に、震災が発生したのです。もとより町が持っていた森林資源と林業・木材産業の技術に、「隣人のために」という思いが加わり、形になった復興支援でした。

仮設住宅は従来のプレハブ工場の長屋タイプではなく、戸建てタイプとしました。入居者からは「木のぬくもりが感じられる」、「隣の音が気にならない」など、おおむね高い評価をいただきました。昨年度に最後の入居者が退去するまでの10年間、微力ながら被災された方々の復興を支援できたのかなと思います。

森林環境学習へも注力。三井住友カードとのコラボも視野に

―持続可能な森づくりに向き合うなかで、どんな課題を感じていますか?

菊田:

林業は肉体的にハードですし、人手不足が常態化しているのは課題です。インターン生を受け入れるなどして人手を募っていますが、十分とはいえません。環境面の変化としては、野生動物が増えており駆除作業の負担がかかっています。例えば、20年ほど前は鹿の駆除は年間40頭ほどでしたが、現在は1,000頭を超えるようになっています。岩手にはいないといわれていたイノシシもいたるところで見かけますし、ニホンザルによる被害も出ています。

金子:

全国5箇所の三井住友カードの森の関係者の方とお話して、森づくりの形は地域の数だけあると学びました。そして、森林育成の効果が実際に表れるのは今植えた木々が成熟する50年後、100年後です。長く支援するためにも、社内では森づくりの成果を何らかの形で定量化していく必要性を感じています。

林野庁では、森林整備によって脱炭素に貢献した企業を称える「グリーンパートナー」など企業における森づくりの成果の定量化(CO2吸収量の全国共通算定ツール)が進んでいる現状もあります。

当社は、グリーンパートナー2022として認定されており、林野庁の指標で換算すると年間のCO2吸収量は218トンです。これまでの貢献を目に見える形で発信できたのは、喜ばしいことでした。

―今後、持続可能な森づくりにどのように取り組んでいくのか、展望を聞かせてください。

菊田:

住田町では、適地適木の考え方を大事にして、土地に合った森づくりを地道に進めていきます。2012年からカーボンオフセットのクレジット販売にも取り組んでいるのですが、在庫がなくなりつつあるため、森林整備をするなかで創出を図りたいところです。同時に、FSC認証の取得をさらに拡大させていきたいです。

広い世代に向けて取り組んできた森林環境学習にも、引き続き注力します。保育園児や学生が自然の遊びを楽しむ教育プログラムや、住民が主体となって企画する森林内でのウォーキングなど、自然の恵みに触れる機会を今後もつくっていきます。

このような取り組みを三井住友カードさんとコラボレーションできたら、町民が地元の森林をより大切に思ったり、三井住友カードのみなさまにも、より住田町の「三井住友カードの森」に愛着を持っていただいたりできるかと考えています。

金子:

教育コンテンツはデジタルで発信もできますし、当社のお客様にも環境保護への気づきを得ていただく機会になるかもしれません。コロナ禍で実現が難しかった現地訪問がようやく叶ったところですし、森林保全を中心に、広い視野で取り組めたらいいですね。

全国的な活動としては、引き続き各地の持続可能な森づくりを支援していきます。お客様が安心して楽しく購買行動ができるのは、地球環境の豊かさがあってこそ。そういった意味で環境を整えることは、広い意味で当社があり続けることにつながります。

当社が率先して持続可能な森づくりを行い、それを発信する重要性も感じます。お客様が日々決済するシーンにおいて、少しでも環境保全を意識するきっかけを提供できたらと願っています。

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