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三井住友カード株式会社

単なる寄付で終わらない、三井住友カードの「持続可能な森づくり」~地域性にこだわり、多様性のある森づくりに取り組む奈良県天川村の事例~

公開日:2022年11月21日

2018年より、「Have a good Cashless.」をブランドメッセージとして、キャッシュレスを通じた社会課題の解決を目指す三井住友カード。その一環として、利用明細を紙からWEBへ切り替えるデジタル化の利便性を追求しながら、削減できたコストを使って持続可能な森づくりを目指す「三井住友カードの森」の活動を実施しています。 

 

全国に5箇所ある「三井住友カードの森」では、植樹だけでなく間伐も行いながら、森を健全な状態に戻していく作業が行われています。その際に当社が大事にしているのが、地域との密な交流です。現地での植樹や間伐体験、役場の方との対話を通して、森づくりを深く理解し、支え合える関係性を築きたいと願っています。 

  

本記事では、当社が寄付を通じて森づくりを支援している奈良県天川村の村役場 産業建設課 主査の福西恭介さん、2019年より林学職として奈良県庁で働いた経験をもとに、天川村での森づくりに尽力していらっしゃいます「天川村の森づくりのアドバイザー」杉本森林総合監理士事務所の杉本和也さん、三井住友カード株式会社 マーケティング本部 金子真友の対談により、「持続可能な森づくり」の事例を紹介します。 

 

 

三井住友カードの森の看板前にて 

 木質バイオマスも活用、サステナブルな森づくり 

 ー奈良県天川村は、村の面積の約97%が森林と豊かな自然に恵まれています。なぜ、この地域への寄付を決めたのですか? 

 

金子: 

当社では、土地に合った適切な木が植えられていて、人の手をかけることなく、何十年何百年と森が在り続けられるような「持続可能な森」を支援する取り組みとして、2020年から寄付をスタートさせました。一般社団法人more trees(モア・トゥリーズ)さんを活動パートナーとして、現在5ヵ所の地域の森に寄付をしています。 

 

天川村への寄付は2021年から始まりました。天川村の森づくりは多方面にわたり、全国的にもサスティナブルな取り組みといえます。地域のアイデンティティであるキハダの森の再現を進めながら、木質バイオマスを使った地域振興により雇用創出・人口増加を図るなど、森づくりで終わらない村の仕組みづくりにトライされている点に魅力を感じました。 

 

ー持続可能な森づくりを通じて、持続可能な地域づくりに取り組まれているのですね。天川村における、現在までの林業の取り組みを教えてください。 

 

福西: 

最盛期の1955年には約5,700人が暮らしていた天川村ですが、現在の人口は約1,300人です。かつては多く存在していた林業従事者も、わずか40人弱に減っています。森林資源は豊富にあるものの、社会情勢の変化により林業で生計を立てるのが困難になったためです。生業を求める者が村を離れ、人口は減少するばかりです。 

 

2011年の紀伊半島大水害では、村内でも数カ所の山が深層崩壊を起こし、甚大な被害が出ました。復興に取り組むなかで、村全体で森林の多面的機能保全を図りつつ国土保全を考えていかなければならないという認識が深まりました。この経験が、森林の多面的な機能を意識した持続可能な森づくりに積極的に取り組む村の政策方針につながっています。 

 

杉本: 

その具体的な取り組みが、キハダを中心とした地域性にこだわった多様性のある森づくりと、林地残材を活用した木質バイオマスエネルギー利用の取組です。

天川村の特産品に「陀羅尼助丸(だらにすけがん)」という千三百年の歴史があるとされる和漢胃腸薬があります。その主原料となるキハダの樹皮(黄檗(おうばく))は過去には地域で潤沢に採取できたのですが、拡大造林で広葉樹林が減少し、現在では他の地域から購入しています。原料確保の将来に不安もあることから、スギ・ヒノキの伐採跡地に村の気候風土に適したキハダを中心とした多様性のある森づくりを進めようという機運が高まりました。

 

森づくりの様子 

福西: 

木質バイオマスとは、木材に由来する再生可能な資源を指し、それを使って発電したエネルギーを木質バイオマスエネルギーといいます。天川村では、村役場、森林組合、商工会の三者で一般社団法人天川村フォレストパワー協議会を設立し、2016年から木質バイオマスエネルギーの活用を始めています。 

 

天川村が活用している木質バイオマスは、森林を健全な状態に保つための間伐後に通常は山林に放置されている未利用間伐材を薪の原料として村民から買い取って活用する形となっています。買い取った丸太を薪に加工し、村内の温浴施設に導入した薪ボイラーで熱エネルギーとして活用しています。 

 

 

 温浴施設の裏にあるボイラー

それ以前は化石燃料を活用しており、年間にかかるコストが約700万円でしたが、木質バイオマスエネルギーに置き換えたことにより、約250万円に削減、同時に環境負荷も抑えられるようになりました。2021年には介護施設を建設して、そこにも薪ボイラーを導入して木質バイオマスを有効活用しています。 

 

未利用間伐材は地域振興券と引き換えにした買い取りとしているため、村内の経済活性化にもつながっています。 

 

キハダの森、苗木づくりを三井住友カードが支援 

 ー天川村の森づくりにおいて、三井住友カードでは具体的にどのような支援をしているのですか? 

 

金子: 

キハダを中心とした森づくりでは、伐採を終えた地への植林と植えた木を保護する取り組みが進んでいます。こういった活動への寄付に加え、寄付を開始した2021年12月に私を含む数名の社員が現地を訪問して、植林と植えた木にネットを張る作業を体験させていただきました。 

 

 

2人がかりでのネット張りの様子 

 

金子: 

その際に驚いたのが、ネット張りが想像を超える大変さだったこと。鹿などの動物が葉っぱを食べてしまわないよう保護するためのネットであり、動物が鼻を入れたりできないよう、たわみや隙間がないように張らなければなりません。急斜面での作業ということもあって、大人2人がかりでもすごく時間がかかりました。森づくりは「木を植える、切る」だけではなく、さまざまな関連作業があり、多くの材料費も必要なのだと学びました。 

 

訪問では、育苗施設も見学させていただきました。キハダをはじめ、村内に自生する母樹(種子を採る樹木)から種子を取ってきて、育てているとうかがいました。苗木づくりへの寄付は、一定期間内のVisaのタッチ決済の回数等に応じて寄付をする当社の「タッチハッピー」という活動に紐付いたものです。2022年4月〜9月の対象期間中には4,000万回を超えるVisaのタッチ決済が行われ、約1万本の苗木に相当する寄付となりました。寄付の一部は天川村の苗木づくりに充てられています。 

 

育苗施設の様子

 

筒の中で育て、地にしっかり根付く丈夫な根を育てます 

 

杉本: 

育苗施設では、キハダに加え、将来経済価値が見込めそうな木を選び、数種の苗木を育てています。100年、200年と長く続いていく持続可能な森を育てるには、森林の多様性も重要です。1種類の木だけを植えると、病気や害虫被害など健全性を維持することが難しい森になります。持続可能な森は地域に適した多様な樹種で構成することが大変重要です。そういった意味でも、三井住友カードさんと共に進めるこの森づくりは、山村地域の環境保全をはじめ地域経済の持続にも寄与するほか、幅広い視野からは国土保全や地球環境保全にとっても大変有意義な活動であると言えます。 

 

金子: 

「三井住友カードの森」の活動を通じて、森づくりは一朝一夕では完成しないことを学びました。1本の木が育つまでには、成長が早いスギやヒノキでも50年、広葉樹なら80〜100年、中には150年かかるものもある。木を育てる間には、天候不順や野生動物の阻害など予想外のことが多く起こる。さまざまな仮説に基づき、トライアンドエラーを繰り返しながら、50年、100年とかけて森づくりの正解を見つけていくのですよね。支援する側としても、長期的に活動を続けていかなければいけないと強く感じました。 

 

最大の課題は、所有者不明の放置林の整備 

ー持続可能な森づくりに向き合うなかで、どんな課題を感じていますか? 

 

福西: 

放置林の問題ですね。経済的価値を失いつつある森林からは所有者の関心は遠のき、適正な管理が行われず放置されることが増え、森林政策の大きな課題となっています。天川村には、所有者が亡くなったり、相続ができていないなど、所有者や所有権界が不明の山林がたくさんあります。持ち主を見つけない限り森林整備もできません。植林後50年以上が経過した山は木が生い茂り、森の様相を把握できない状態です。今年度から所有者を特定するための地籍調査を開始したところで、30年ほどかけて実施する計画です。 

 

杉本: 

森林所有の明確化は大変大事なことですが、整備を実施するには地域の森林作業を担う人材育成も重要であり、並行して進める必要があります。林業の仕事の創出で雇用を生み出すことも重要ですが、同時に林業の楽しさや山村の魅力を広く伝える必要性も感じています。 

 

 

山々に囲まれた天川村 

 

金子: 

お二人のお話をうかがうと、持続可能な森づくりは、森を整備すればいいという単純な話ではないのだとわかります。当社の寄付金はもっとも森づくりに近いところに使っていただいていると思いますが、地籍調査や林業従事者を増やしていくアプローチも重要なことであり、支援ができればという気持ちはあります。 

 

一方で、企業として長く支援を継続するためには、森づくりの成果の定量化を図り、社内の理解を得ることが求められます。1〜3年と短期でビジネスサイクルを回さなければいけない企業と、100年がかりで成果を見出す森づくり。視点の異なる2つの事柄を結びつけて、長期的な支援につなげていく難しさは担当者として一番感じるところです。 

 

ただ、そんななかでも、林野庁のグリーンパートナー2022に認定されたことは、大きな前進でした。これは、林野庁が森林整備によって脱炭素に貢献した企業を「グリーンパートナー」として称える取り組みです。林野庁の指標で換算すると、当社の全国5か所での森づくり活動による年間のCO2吸収量は218トンになります。今後、ますます定量評価の仕組みが整っていくだろうと期待しています。 

 

密接な交流で、相互のモチベーションアップを図りたい 

 ー今後、持続可能な森づくりにどのように取り組んでいくのか、展望を聞かせてください。 

 

福西: 

これまで行ってきたキハダを中心とした森づくり、木質バイオマスの活用はもちろんのこと、先程お話した地籍調査を迅速に進めたいですね。飛行機を飛ばして航空レーザー測量をして、一つひとつの山の所有者を特定していく大掛かりな作業ですが、これをやらないことには放置林が解消しないので取り組んでいきたいことのひとつです。 

 

杉本: 

それに加えて、林業を通じた村の雇用創出や経済活性化も目指します。森林を守るには山村に人が暮らせる環境を構築することが大切だと考えるからです。直近では、J−クレジット(※)の獲得にも試験的な取り組みを始めています。木材を販売するだけではない天川村ならではの収入源をつくりたいと考えています。 

※森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。本制度により創出されたクレジットは、カーボン・オフセットなど様々な用途に活用される。(参考サイト

金子: 

天川村には2021年に訪れたものの、その後はコロナ禍ということで、大人数での往訪は実現できていません。状況を見ながらにはなりますが、当社の社員が森林を感じて、村民のみなさんと交流できるようなイベントを実施できないかと考えています。特に大阪支社の社員からすると距離的に近いこともあり、「天川村にぜひ行ってみたい」という声が多いんです。 

現在の三井住友カードの森の様子

福西: 

みなさんに足を運んでいただけるのは非常にありがたいです。天川村の森林を見て、村民と交流いただくことができれば、環境への共通認識が高まるのではと期待があります。 

 

杉本: 

三井住友カードさんと力を合わせた森づくりが始まってから、林業従事者たちのモチベーションが上がっている様子が見受けられています。「スギ・ヒノキ木材の生産性のみを重視する」といった行政からの押しつけではなく、企業の方が地域に適した森林や林業のあり方を一緒に考えながら支援してくださることで、林業従事者が前向きに取り組めるのだと思います。近年、過疎地域における「関係人口」の重要性が語られますが、三井住友カードさんのように一緒に取り組んでくれる仲間ができると、山で働く者も地域や仕事に誇りを持つことができます。

 

金子: 

そう言っていただけると、私たちも嬉しいです。支援する私たちと森づくりに取り組む地域のみなさんが相互にモチベーションを上げていくために、今後も交流を深めていきたいですね!同時に、当社のお客様にも、「一つひとつのキャッシュレスが環境保全につながっているのだ」という気づきを与えていけたらと。そのお客様の気づきも定量化させて、これらのポジティブなパワーを積極的に社内外に発信していきます。 

 

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