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昭光通商株式会社

【農家の生産性向上へ!】微生物の働きにより水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックをつかったマルチフィルム『ネイチャーマスター®』誕生の背景

公開日:2025年04月15日

素材商社である昭光通商は、2025年2月に生分解性プラスチックでできた農業用マルチフィルム『ネイチャーマスター®』の販売を開始しました。生分解性プラスチックは、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解できるプラスチックです。農業用マルチフィルムは農業で畝の表面を覆うために使用されるフィルムで、農家だけでなく家庭菜園でも利用されるほど普及していますが、その多くはプラスチック原料でできており、作物収穫後に畑から回収し、廃棄をする必要があります。生分解性プラスチック原料でできたマルチフィルムは、作物収穫後に畑にすき込むだけで自然と分解が進むため、プラスチックごみの削減につながると言われています。なにより、就労人口が減っている農家の生産性向上に役立ちます。

 なぜ素材商社の自社で製品開発を行い、販売をしているのか、その背景を合成樹脂本部長 川合秀幸、合成樹脂本部 業務企画推進室長 佐藤恒、海外営業グループ テクニカルセールスマネージャー 福原輝に聞きました。

商品に関する問合せ先:https://www.shoko.co.jp/contact/plastics/

1. 生分解性マルチフィルム「ネイチャーマスター®」について

ーまず、「ネイチャーマスター®」の特徴を教えてください

川合秀幸(以下川合) 「ネイチャーマスター®」は農業用マルチフィルムです。国内で一般的に利用されているマルチフィルムは、プラスチック原料を使って製造されていますが、当社が開発・製造・販売している「ネイチャーマスター®」は生分解性プラスチック原料を使っています。生分解性プラスチック原料の特徴を簡単にいうと、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されることから、プラスチックごみの削減につながる環境負荷の低い原料です。

佐藤恒(以下佐藤) 合成樹脂本部では、長年にわたりプラスチック原料の取扱いをしています。もちろん、生分解性プラスチック原料も長年取扱っています。生分解性プラスチックといっても、その原料や配合割合によって分解の速度などが変わってきます。当社では元大手化学品メーカーの専門商社として培った高い専門性をもとに「ネイチャーマスター®」を開発しました。

福原輝(以下福原) 「ネイチャーマスター®」は当社独自の原料選定、成分配合及び成型方法で生産しているため、分解期間の調整力に特徴があるほか、機械展張時の強度、耐久性、光沢及び高い保湿性を保持しているという試験結果も出ており、実際に利用をされている農家さんからも、同様のフィードバックをいただいています。

ーどのような方からの引き合いが多いですか

福原 中規模~大規模耕作地をお持ちの農家さんからの引き合いが、やはり多いですね。規模が大きくなるほど、農作業を手伝ってくれる人を雇用している農家さんの比率も高くなるため、生産性向上の観点から生分解性マルチフィルムの利用を検討している方が多いです。また、SNS(参考:当社公式SNSは以下のとおり)の情報を見た農家さんからの問合せも増えています。規模もまちまちです。

(参考:当社公式SNS)

【X】https://x.com/_SHOKO_OFFICIAL

【Instagram】https://www.instagram.com/shoko_1947/

【Facebook】https://www.facebook.com/NaturemasterPR

川合 作物の種類や、エリアの特徴はある?

福原 ありがたいことに、全国から引き合いをいただいていますので、エリアの偏りは大きくないです。パンフレット(以下「表」の右下)に作物の一例をあげていますが、他の生分解性マルチフィルムの利用を検討していた農家さんや、実際に利用したことのある農家さんで、この作物覧を見て興味を持ってくれる方もいました。当初に引き合いが多かった作物は、サツマイモ、サトイモ、トウモロコシなどの農家さんでしたが、最近はじゃがいも、たまねぎ、レタスなど幅が広がっています。

2. 「ネイチャーマスター®」開発のきっかけ

ー開発のきっかけを教えてください

川合 構想は2020年からありましたが、実際に生分解性マルチフィルムの開発に着手したのは2021年ごろからです。

佐藤 当社は株式会社レゾナック(旧 昭和電工株式会社)及び味の素株式会社の支援のもとに、化学品並びに肥料の国内販売と輸出入を目的として設立した経緯があり、商社としての素材・原料の手配だけでなく、社内に生分解の知見と、それを加工するノウハウ、そして商社ならではの販売網も持っていたことから、この分野に参入しました。

3.開発の過程

ー開発を引き継いだ後のことを教えてください

福原 前任者の異動等もあり、開発を引き継いだのが2020年10月のことです。当社は素材商社であるため、合成樹脂本部の中には製品の開発・製造・販売に一貫して携わったことがある人材がいない状態でした。私は学生時代に生分解性プラスチックについて学んでいたこともあり、また前部署では自動車メーカー向けの材料開発をしていたことから、技術・開発両面で最適だろうと思われたのか、担当を引き継ぎました。一次産業分野での仕事は初めてであったため、最初は苦労の連続でした。

ー最初から農業用マルチフィルムの開発・製造・販売をする計画だったのですか

福原 開発当初からプライベートブランドの構想はあったものの、生分解性樹脂原料の販売の話が先行して進んでいました。その後ウクライナ戦争の影響もあり、生分解性樹脂の主力調達先が欧州一辺倒ではなくなり、我々は台湾製品を主力にしておりました。一方で製造強化していた中国で過剰生産となり、その結果台湾企業が急遽事業撤退をする、という状態になりました。その経験から、仕入先メーカーに頼らず、独自のコンパウンド製品を作ろう、いっその事、最終製品を作ろうとなり、プライベートブランドの構想が動き始めました。

ー具体的にどのような苦労がありましたか

福原 発売開始するまで、たくさん苦労がありました。まずは初めての成膜試験を行った時のことです。農業用マルチフィルムを作るためには、インフレーション成型加工を行います。初めて成膜テストを行った際に、大手需要家の方にもお立ち会い頂いたのですが、なんとまともなものが1本も製造できなかったのです。その場で製造条件を変更して試してもらいましたが、やはり製造できず。正直なところ、「終わった…」と思いました。その後の調査で、原料に課題があるとわかり、改良に繋がりました。あのときにあきらめなくてよかったです。

佐藤 あの時の福原さんの落ち込みは、よく覚えています。そのあと本当によく原因究明をしたよね。

福原 「農家さんのためになる製品を作る」という気持ちはずっと持っていたので、今にして思えばそれだけで乗り切ったように感じます。次に、試作品第1号の試験での出来事です。農家さんが農業用マルチフィルムを畑に張る場合、一般的に展張機械を使います。その際にフィルムの端を畑に埋め込み、ピンと張りながら機械展張することから、マルチフィルムには破けないだけの強度が求められます。生分解性マルチフィルムは一定速度で分解させる必要があるため厚くしにくく、強度と厚みのバランスに苦慮しました。

佐藤 それもあって、一般的に生分解性マルチフィルムはプラスチック原料のマルチフィルムと比較して薄く、その結果機械展張したときに破けた、という話は農家さんからもよく聞きます。

福原 はい。だからこそ、試作品第1号が破けることなく機械展張できたときは、本当にほっとしました。その後は一定期間で分解されるかを定期観測していきます。太陽光、雨、気温などの外部環境にさらされて、作物収穫までの期間はマルチフィルムが分解されずに残るか(参考:マルチフィルムは地熱の上昇を抑え、地中の保水力を保つ効果もあることから、収穫までに分解をしないことがベストです)、その後一定期間で分解が完了するか、それこそ我が子を見守るような気持ちで見守りました。予定通りに進んだ際にはほっとしました。余談ですが、試作品第1号試験にご協力いただいた農家さんから収穫した作物をいただいたのですが、その時には感極まって涙が出ました。

川合 生分解性マルチフィルムは、分解に一定の日数がかかる(参考:当社製品は90日前後がターゲットの製品と、120日前後がターゲットの製品があります)ことから、マルチフィルムを展張したあと、見守る気持ちは本当によくわかります。先日埼玉県の農家さんの展張を見に行った際にも、機械展張に耐えられる強度であると数多くのテストで確証はあるにもかかわらず、実際に張る場面をみると「無事に張れるか」という気持ち一心で見守りました。その後も想定どおりに分解が進むかとても気になっているので、現場から続報を聞くと本当にほっとします。

福原 自分はこの事業に関わってから家庭菜園を始めたのですが、自分で実際に作物を育て、収穫し、畑を耕すことで、農業についての知識をアップデートさせていきました。

ー初の販売実績について教えてください

福原 実は私にこのミッションを任命した当時の本部長が2022年に急逝しました。一時期は急逝のショックと、事業への理解者がいなくなることへの不安が大きかったのですが、現社長である渡邉と現本部長の川合が自分の思いを理解してくれ、逆に引っ張ってくれて製品化までたどり着くことができました。新規事業は経営層の理解がないと進みづらいと思うのですが、失敗しても「初めから上手くいかないよ」と励ましてくれ、初めて販売できたときは一緒に喜んでくれました。急逝した本部長をはじめ、この3人の経営陣だからこそ、製品になったのだと思います。心から感謝したいです。また、ここで終わりではなく、拡販するという重大ミッションを与え続けてくれるエピソードはまたの機会にお話します。

川合 私は2023年から生分解性プラスチック原料の事業に関わりました。本事業がプラスチック廃棄物削減はもとより、農業の諸問題の解決に寄与する事業であると理解し、会社としてはもとより、個人としてもコミットし、大きく育て、日本の農業の発展のために微力ながら貢献をしていきたいと考えています。

佐藤 新規事業の立ち上げは苦労がつきものです。今後の事業拡大について、合成樹脂本部としても、継続してバックアップしていきたいと思います。

4.未来への展望

ー農家さんへ伝えたい思いはどのような内容ですか

福原 肥料、資材、機械等の物価上昇は避けられず、一方で農作物の取引単価はあまりあげられない中、すべては「農家のみなさんのために」という思いで製品を開発し、また販売を進めています。少しでも農家のみなさんの生産性向上に寄与し、日本の農業を盛り上げていければと考えています。

ー今後、予定している取組みについて、可能な範囲で教えてください

佐藤 まずは国内で「生分解性マルチフィルムといえばネイチャーマスター®」と農家の皆さんに認知していただき、実際に使っていただくことが重要であると考えています。まだ生分解性マルチを利用したことがない農家さんも多いことから、先行利用のユーザーさんの声を集め、みなさんにお知らせしていくことで、少しでも安心して手に取っていただき、農家さんの生産性向上に寄与できれば、と考えています。

川合 国内をしっかりとつかんだ後には、商社である当社の流通網を使い、海外展開もできると考えています。日本同様に農業就労人口が減少している地域がターゲットになるでしょう。

福原 農家さんの声を聞いていると、分解速度を現在の90日ターゲット、120日ターゲットと比較し、もっと短い期間で分解するマルチフィルムへのニーズや、温暖化の影響を踏まえて白マルチ、虫対策の銀マルチへの要望などもいろいろと出てきました。多くの農家さん、しいては他分野での需要家のためになる製品開発は続けていきたいと考えています。

(左)テクニカルセールスマネージャー 福原輝(中央)合成樹脂本部長 川合秀幸(右)業務企画推進室長 佐藤恒

商品に関する問合せ先:https://www.shoko.co.jp/contact/plastics/

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