原宿駅から代々木公園を抜けて、歩くと見えてくる大きなフクロウが目印の、「Shiny Owl シャイニーアウル」は、シェフ 三田健美さん自らが全国から選び抜いた新鮮な野菜を使って作る、創作料理が自慢です。名前の通り、真っ白なフクロウのtOwl(トウル)くんが訪れる人を出迎えしてくれます。
そんなShiny Owlの野菜や料理への想いやこだわりを、シェフである三田さんにお話いただきました。
良い料理は、良い食材から。そのためにShiny Owlと農家との信頼関係が大切
——Shiny Owlのコンセプトや大切にしていることを教えてください。
“farm to table”—畑からテーブルへ、というコンセプトです。
農家から届く新鮮な野菜をおいしいうちに食べてもらいたいという思いを込めています。
自ら全国の農家を探していて、良い農家を見つけたら、必ず会いに行くようにしています。電話だけで、この野菜をください、というような距離感では仕事をしたくなくて。一緒に始める前に、必ず会いに行きます。畑まで会いに行く、時間があれば畑も手伝う、そういう人間関係を築いていこうと心がけています。
電話で話すだけだと、農家の大変さも実際にはわからないじゃないですか。会いに行ったり、畑を手伝うことで農家の大変さに気づけるし、サービスで入れてくれた野菜も、どれだけ大切に育てられたものか知ることができます。」
都会にいると、野菜って安く思われがちなんです。その意識を変えていくべきだと思います。機械的に種をまいて薬品を散布してできた野菜にかける愛と、僕が会いに行く農家が育てる野菜に対しての愛は違うと思う。その差が味に出るんですよね。
——おいしい料理を提供するだけでなく、食材がどんな風に作られているかを知ることで、作る側の気持ちや料理も変わってきますね。
自分の目で育っている環境から見て選ぶ、というのは食材への強いこだわりですね。
はい。農家と良いお付き合いをしていく中で、こういうものがこの時期に欲しいから、このくらい作ってくれれば使えるよ、と農家に提案もしています。作ってくれた分は全部もらうから、と。
農家との人間関係、信頼関係は大事だと思います。農家に、どれだけ会いに行けるかも大切。会いに行くことで、こちらの熱意が伝わり、信用してもらうからこそ、提案したように作ってもらえるんですよ。

Shiny農園サラダ
福岡県から直送された、採れたての新鮮な彩り豊かな野菜が並びます。ホウズキやベニクルリ、コールラビなど、聞きなれない野菜も食べてみるととてもおいしいですよ。ニンジンやゴマなど、野菜をたっぷり使用した自家製ドレッシングは絶品です。
Shiny Owlの料理で感動を与えたい。また行きたくなる温かさを感じる店を目指して
——農家が作る野菜の中から選ぶだけではなく、自分の作りたい料理も大事に、欲しい野菜の提案もしているのですね。
Shiny Owlのメニューへのこだわりはありますか?
みんなが知っている料理については、どこよりもおいしく作ろうと思っています。
クリエイティブが信条だから、独創性は大事にしています。おいしいかおいしくないかという話ではなく、僕の料理を食べた時に衝撃的な感動を与えたいと思っています。
東京にはおいしい飲食店はいろいろあるけれど、食べて衝撃を受けるものって実は少ないんじゃないかな、と思います。それをShiny Owl では作り出していきたいです。

ガスパチョとサバのカルパッチョ
トマトは糸島の農家からいただいたものです。千葉県産のタマネギと合わせて、夏に食べたいさっぱりとしたガスパチョに。
化学調味料は一切使っていません。人の温かさが感じられる料理を作ることを心がけています。ファーストフードより、お母さんが作る料理に温かさを感じるように。あえて大雑把な味を加えたりして、料理に人間味を感じてもらえたら、と思います。
なんか行きたくなるんだよねあの店、と言われるような場所が理想です。」
——店の雰囲気づくりについて、どのようにお考えですか?
その店の料理というのは、店の音楽や内装、店員、食器、トイレも含め、全てが合わさったものだと思うんです。
理想だけでなく、今あるフィールドで何ができるのか、という現実的なところも踏まえ、自分が作る一皿に見合ったインテリアを心がけています。

大葉とじゃがいものジェノベーゼ風スパゲティー
違う品種のジャガイモを彩りに。シソもジャガイモも、福岡県糸島のもの。
千葉で採れたトマトは、しっかり赤くなってから収穫されているため、食べなれたトマトとの甘さの違いに驚きますよ。
8月に新しく表参道にオープンする店は、ここよりもシックなインテリアにしています。
気軽に一杯飲みに来られるという場所にしたいと思って。
僕らくらいの年代の人たちが、そういう店あったらいいよねっていう場所を作っていきたいです。
美と健康を作る食事の時間。その場所をShiny Owlで作っていきたい
——新しくオープンする表参道のお店はまた違った雰囲気が味わえるのですね。楽しみです。
これから挑戦したいことはありますか?
魚ですね。漁師と提携して、釣れた魚を直送してもらおうと思っています。そのルートを確立したら、市場を通さずに新鮮な魚をお客様に提供する試みを始めます。
船にも乗りたいけど、船酔いしてしまうところが悩みです。僕が作る料理で、漁師たちをもてなそうと思っています。
——新鮮な魚を食材とする新しい試みが楽しみですね。
魚をに力を入れる理由を教えてください。
肉は、家で焼いて食べてもおいしく食べられると思うんです。でも、魚はお店で食べた方がおいしいですよね。僕自身、外で食べるなら魚が食べたいと思います。
また、美と健康を意識していることも理由の一つです。肉を出すのであれば、馬肉や赤身でメニューを作りたいと思っています。
食べ物が美と健康を作る。そう考えながら料理をしています。
パスタなどの糖質制限メニューも用意しています。炭水化物以外の9品目をとれた上で、500キロカロリーのランチプレートを美と健康を意識して提供しています。

オレンジとバジルとクリームチーズのパウンドケーキ〜バニラアイス添え〜
山形から届いたサクランボは、そば屋の畑で育てられているのだそう。出汁をとった後の鰹を肥料にするのは、そば屋ならでは。甘みがぎゅっと詰まってとってもジューシーなサクランボは、さわやかなオレンジとバジルのケーキにぴったりです。
——味が濃かったり、カロリーが高かったりする外食が多い中、ただ見た目や味が良いという料理ではなく、美と健康にも配慮したメニューがあると、お客さん自身日々の生活でも意識ができるようになりますね。命をつなぐだけの食事ではないということを、お話しから感じました。
最後に、食事への想いを教えてください。
食事と飯の違いは、食事は必ず相手がいて成り立つものだと考えています。一人で食べているのは、飯を食っているだけだと思うんです。僕は、食事の場所を作りたいと思っています。たとえ一人で来ても、食事をしているという感覚になれる場所や料理を作りたい。
“farm to table”というコンセプトを掲げた、新しいことへ挑戦し続けるShiny Owl。8月に表参道にオープンする新店も含め、店のマスコットフクロウのtOwlくんとともに、さらなる飛躍が楽しみですね。

tOwl(トウル)くんも待っていますよ。