近年、女性を中心に人気のパクチー。
愛好家のことを「パクチスト」と呼び、パクチー関連の商品も急増しています。
料理に入れるだけでなく、チョコレートやアイスなどにも使用され、その人気の高さがうかがえます。
2016年には大手の検索サイトで「今年の一皿」にパクチー料理が選ばれ、さらに注目度が増しました。
パクチーはエスニック料理には欠かせないものです。
国内の生産地はどこか、またその作られ方や町おこしの様子をご紹介します。
パクチーとは
パクチーは英語でコリアンダーと呼ばれるセリ科の一年草です。
高さは30から80cmになり、白もしくはピンク色の小さな花を咲かせます。
中国では香菜(シャンツァイ)と呼ばれています。
原産は地中海沿岸と言われており、古くから世界中で栽培され、料理用や薬草として用いられてきました。
聖書の出エジプト記にも、その名前が記載されています。
東南アジアでは欠かせない薬味として利用されており、中国でも中華料理の薬味として利用されてきました。
タイ料理では根も使われることがあり、ヨーロッパやインドでは香辛料として、種子も利用されています。
葉や根には、独特の強い香りがあり、人によってはカメムシに似ていると感じるともいます。
この独特な香りは、セルミンとデカナールという芳香成分に由来します。
この成分は乾燥させるとさわやかな香りに変化し、よりエスニックな風味を連想させます。
パクチーの使い方
パクチーは肉・魚料理の臭みを消すのに適した食材です。
また、サラダやお粥の飾り付け、茎を炒める、スープの香り付けに根を使うなど、様々な利用法があります。
葉よりも茎や根が香りが強いため、加熱しても香りを楽しむことができます。
完熟した種子は乾燥させると、オレンジの皮を連想させる甘いマイルドな香りがするので、料理やお菓子、リキュールに利用することもあります。
ホールのままの場合は、ピクルスの漬け汁に加えたり、シチューやマリネに加えたりします。
カレーやクッキーには、粉末にして混ぜ込みます。
パクチーの栽培方法
パクチーは水はけがよく、日当たりのよい肥よくな場所が好きです。
エスニック料理に利用するので夏の暑さには強い印象ですが、実際はトウ立ちしやすく、葉が固くなるので注意します。
家庭のプランターでも栽培しやすい植物です。
プランターに植えて夏の暑さが気になった場合は、半日陰に移すとよいでしょう。
種をまくのは春、もしくは秋です。
パクチーの種は、そのままでまくと発芽率が悪いことが知られています。
種子は2粒ずつ合わさっているので、二つに分けて一昼夜水につけてからまくと発芽率が良くなるといわれています。
直根性(太い根が出て枝分かれしにくい)植物で移植すると生育が衰えるので、庭や鉢、圃場に直接まきます。
水が好きな性質はありますが、過湿は根腐れの原因になるので注意します。
土の表面が乾いたら水を与え、梅雨時期の水やりは控えめにします。
春に種をまくとすぐにトウ立ちして収穫期間が短くなってしまうので、花芽が出たら摘み取りながら若い葉を収穫すると、長く収穫できます。
パクチーの栄養成分
パクチーにはβカロテンが多く、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB2などのいろいろなビタミンが含まれています。
他にもカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分も含みます。
そのため美容効果や疲労回復作用が期待できる食材です。
他にも、体内の毒素や有害金属を体外へ排出するデトックス効果もあるといわれています。
さらに体内の活性酸素が増えるのを防ぐ効果もあると言われ、アンチエイジングも期待できます。
香りによる食欲増進効果もあると言われてます。
ただ、食べ過ぎて具合が悪くなったという例もあるようですので、食べすぎは禁物です。
パクチーの選び方と保管
購入するときは、葉の色が鮮やかで、全体的にみずみずしいものを選びます。
茎にハリがあり、あまり太くないほうがしっかりした香りがあります。
生のパクチーを手に入れることができたら、香りや味が変化しないよう早めに使い切るのがベストです。
どうしても余ってしまった場合は濡れた新聞紙などで根元を包んでビニール袋に入れ、立てて冷蔵庫で保管しましょう。
すぐに使わない場合は葉と根に分け、葉は刻んで密閉袋に入れて冷凍します。根はラップに包んで冷凍庫へ入れましょう。
冷凍した場合、保存期間は1ヶ月くらいが目安となります。
日本における生産地
様々な効能のあるパクチーですが、近年はその人気によって国内でも生産されるようになりました。
主な産地は静岡県、茨城県、北海道、岡山県、佐賀県などです。
静岡県ではメロンから転作した農家の方が多く、メロンの温室で栽培することで通年出荷が可能となり、生産量が多くなっています。
2016年には中国産の種を輸入して育てている農場から、国内初のパクチーの病気が発見されました。
仮に感染したパクチーを食べても、健康に影響はないとの発表があったので一安心ですね。
しかし、今後の国内での拡大が心配され、生産者へ注意を呼びかけています。
岡山県のパクチーは、日本人に合わせたマイルドな香りと味を併せ持つパクチーで、通称「岡パク」といわれ人気が過熱しています。
2016年度には24t出荷されました。
岡山県産のパクチーは糖度が5から6度あり、これは他品種の2倍以上の数値です。
また、味がマイルドなので、単品でサラダや炒め物にすることができます。
岡山県のパクチーは、黄ニラ大使の植田輝義さんが栽培を始めました。
黄ニラ栽培の技術を応用し、さらに自家採取して種を守っています。
最近では給食にも取り入れられるようになりました。
ユニークなPR法で、全国に岡山県のパクチーをアピールしています。
佐賀県の武雄市では、市を挙げてパクチーを特産品にする取り組みが行われています。
生産農家を募集したり、様々なイベントを行って、武雄市を元気にしたいという町おこしプロジェクトとなっています。
佐賀県のパクチーは強い香りと濃い味を目指したもので、タイまで種子の買い付けに行ったほど熱心な取り組みを行っています。
柔らかく、えぐ味のないパクチーとして人気です。
東京都内にはパクチー料理専門店「パクチーハウス東京」をはじめ、専門店が続々と出店されています。
2017年には東京パクチーフェスが開催されるなど、パクチーブームはまだまだ続きそうですね。
ブームだけで終わるのではなく、日本の誇る農産物の一つとして知ってもらえるよう、生産者の皆さんも頑張っています。
気になった方は一度お取り寄せしたり、専門店に足を運んでみてはいかがでしょうか。