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お金の面から農業をサポート。女性税理士が挑戦した農業経営アドバイザー

お金の面から農業をサポート。女性税理士が挑戦した農業経営アドバイザー

農業を経営面からサポートできる資格が、農業経営アドバイザーです。昨年農業経営アドバイザーを取得した吉川さんに、この資格を選んだ理由や試験の概要などについて、実体験をもとにお聞きしました。

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お金の面から農業をサポート。女性税理士が挑戦した農業経営アドバイザー

農業を経営面から支えるプロとして注目を集める「農業経営アドバイザー」。農業経営のあらゆる相談に応えるエキスパートの育成を目指し、設立された資格です。この資格を昨年取得した女性が、税理士・中小企業診断士としても活躍する吉川順子(よしかわじゅんこ)さんです。

農業に関してはまったくの素人だったという吉川さんに、農業経営アドバイザーを取得したきっかけや資格を取得して変わったこと、今後の展望などをお聞きしました。

関連記事:農業家のビジネスをサポート!今、求められる資格「農業経営アドバイザー」

食の安全性への疑問が農業に興味を持つきっかけに

大学卒業後、税理士事務所などに勤務した後、税理士と中小企業診断士の資格を取得した吉川さん。お茶やみかんの生産地として名高い静岡県・沼津市の出身ですが、それまで農業との関わりは薄かったと言います。

「きっかけは、3年前の2014年に中国の友人を訪ねたときの経験でした。家事労働が負担だと言うので話を聞くと、農薬などの不安から、なんと毎日1時間もかけて野菜を洗っているというのです。日本でも中国産農産物の安全性については頻繁に報道されていましたが、その実態を直接目にして、衝撃を受けました」

帰国後、地元沼津が人口減少による産業衰退に悩んでいるという話を聞き、違和感はますます募ります。食の安全性が脅かされる国がある一方で、安全でおいしい農作物が作れる日本の農業は衰退の一途を辿っている。「このミスマッチを解消できないだろうか?」と考えたことが農業に興味を持った第一歩でした。

農業経営アドバイザーを選んだ理由

農業経営アドバイザーを選んだ理由

興味を持ったものの、農業のことはまるで分らなかった吉川さん。まずは体系的に知識を身に付けようと考え、農業に関する資格を探してたどり着いたのが農業経営アドバイザーだったと言います。

「体系的な知識を得るには、資格試験を受けるのが手っ取り早いということは、税理士資格の受験経験から感じていました。既に独立していたので、平日の日中実施の研修・試験に出席できる時間的余裕があることも幸いでしたね。免除科目がない場合、月曜日から金曜日の丸5日間の出席が必要なので、お勤めの方は職場のサポートが必須だと思います」

農業経営アドバイザー試験に臨んでわかったこと

農業経営アドバイザー試験に臨んでわかったこと

2016年秋、吉川さんは農業経営アドバイザーの資格試験に臨みます。農業経営アドバイザー試験は、研修と試験がセットになっているのが特徴。吉川さんの場合は、2日間の研修の後、試験を受けました。(※公認会計士と税理士の有資格者の場合。一般受験の場合、研修は4日間)

「科目数は全部で6科目。うち2科目はレポートとなるため、筆記試験は4科目です。私は税理士の資格を保有していたので、4科目のうち『農業簿記・農業税務』の1科目が免除となり、3科目の受験でした」。

試験対策などは、どのように行ったのでしょうか?「研修で使うテキストについて、事前に連絡されるので、それを購入し、読んでから講義に臨みました。講義中、試験に出そうなところは講師の方が教えてくれましたが、それでも学ぶべき範囲が広く、試験の前日はほぼ徹夜で勉強しました。4科目受験の方は、もっと大変だったと思います」。

その後、レポートの提出とグループ面談を経て、2017年1月に晴れて資格取得。合格率63%(※1)の関門を突破しての合格でした。しかし、資格取得以上に得たものは大きかったと言います。

吉川順子

「日本の農業を盛り上げよう、という動きが全国で高まっていることを肌で感じられたのが大きかったですね。受験者の方はJAや銀行など金融機関の方が多かったのですが、どうしたら日本の農業をよくできるかを真剣に考えていらっしゃいました。普段から農業と接している方と話をして、ますます農業への思いが深まりました」。

日本の農業において、「これまでの良いところを活かしつつ、変えるべきところはどこか」、そんな前向きな話が受験者同士で交わされたと言います。

農業のあらゆる悩みを、経済面からサポートしたい

農業のあらゆる悩みを、経済面からサポートしたい

農業経営アドバイザーとして、今後どのような展望をお持ちなのでしょうか?
「私は税理士でもあるので、農家の方のお金に関する悩みにお応えしたいと思っています。また中小企業診断士として各種勉強会に顔を出すようになり、ネットワークが大幅に広がりました。マーケティングやITなど各専門家とのつながりもできて、橋渡し的な仕事も可能です。農業にまつわる多様な悩みを、ざっくばらんに相談いただけたらと思っています」。

お金の面だけでなく、農業への思いを共有できる専門家。その存在は、農業を志す人にとって、非常に心強いパートナーとなるでしょう。

「農業は決して特殊ではない。新しく就農される方にもフラットな気持ちで頑張ってほしい」という吉川さん。税理士として様々な業界のお金の悩みに応えてきたプロフェッショナルだからこそ、その言葉には重みがあります。

「私自身、独立以来さまざまな人に助けられて、今日まで来ました。だからこそ私も、農家の方にとって気軽に相談できる相手になれたらと思います。そして、少しでもその方の負担が軽くなれば、それは私にとっても嬉しいことです」。

食の不安から農業に興味を持ち、スキルを活かして農業の発展に寄与する存在に。農業の未来にまたひとり、心強い味方が誕生しました。

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吉川順子

吉川順子
税理士・中小企業診断士。農業経営アドバイザー。静岡県沼津市出身。
静岡大学在学中、中国に1年間語学留学(湖南省岳陽市)。卒業後、英会話講師、税理士事務所を経て、2014年10月、吉川順子税理士事務所を開業。その後、2016年9月、中小企業診断士登録。2017年1月、農業経営アドバイザー登録。

吉川順子税理士事務所
http://77junko.com/

※1 農業経営アドバイザー制度について(日本政策金融公庫)
https://www.jfc.go.jp/n/adviser/council/pdf/reference-01.pdf

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