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手作業が多いリンゴ農家だからこそすべきこと。

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ITを駆使して儲かる農業を実現する。
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ITを駆使して儲かる農業を実現する。<br/>手作業が多いリンゴ農家だからこそすべきこと。

2017年08月01日

森山さんが考える、リンゴ農家の未来について、全3回でお送りします。第1回は作業コストを計ることの大切さやリンゴ農家の抱える課題についてお届けします。

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日本のリンゴ生産方法発祥の地で知られる青森県弘前市。その地で先祖代々続くリンゴ農園を経営する森山聡彦(もりやまとしひこ)さん。リンゴの生産プロセスを可視化するためのツール「ADAM(アダム)」の開発や、加工専売品の生産に取り組みます。森山さんが考える、リンゴ農家の未来について、全3回でお送りします。第1回は作業コストを計ることの大切さやリンゴ農家の抱える課題についてお届けします。

木を識別して、1つのリンゴを作る作業コストを正確に計算する

「ADAM(アダム)」は、リンゴを生産するための作業を記録できるクラウドのシステムです。リンゴの木に「ツリータグ」と呼ばれる識別タグをつけて、タグに印刷されたQRコードをスマートフォンアプリで読み取ることで、それぞれの木に、いつどんな作業をしたか記録できます。作業コストを正確に把握することで、効率を下げている作業を改善したり、カットすることができます。

ADAMを開発する前から、ツリータグを使った作業記録は行っていました。現在のツリータグは、六面体に切った木に、木の種類・植えられている場所・QRコードが印刷されたビニールが巻かれ、木から吊り下げられています。開発当初は、合成紙を直接木に巻いていたのですが、色があせてしまったり、木が成長した時にダメージを与えてしまっていたので、改良を重ねて今の形に落ち着きました。

大規模農園を続けるために、法人化することは必須だった

大規模なリンゴ農園を経営していくためには、作業の可視化は必須でした。私の家は、明治中期から140年続くリンゴ農家です。長男の私が継ぐことは早くから既定路線でした。大学卒業後、マウンテンバイクの競技に打ち込みながら、家の農園で働きました。35歳の時に自転車競技をやめてから、リンゴ農園の仕事に集中しています。

リンゴづくりに集中すると決めた当時、我が家では8.7ヘクタールもの広大なリンゴ畑を持っていたのですが、法人化はしていませんでした。作業自体は外部の人に手伝ってもらっていましたが、いわゆる家族経営で、土日も休みなく仕事をするのがあたりまえでした。その状態で継続させることに限界を感じたので、法人化することに決めました。

法人化するなら、社長は経営に集中して、実作業はスタッフに任せるべきです。そのために、まずはリンゴの木を識別する必要がありました。私の農園では20種類以上のリンゴを作っていますが、アルバイトの人が木を見ても、種別を判別できません。それどころか、どこまでが自分たちの農園か分からずに、気がついたら、隣の畑の木を手入れしていることもあります。判別できるのは、私のように小さい頃から毎日畑に出ていた人間くらいです。

ツリータグで木を識別すれば「●●地区の☓☓の木に△△の作業をして」という風に指示を出すことが可能で、仕事が効率化できます。また、木ごとに作業記録をつけることで、一つのリンゴを生産するためにかかっている労働コストを計ることができます。経営において、商品の原価を計算するのは当たり前のこと。そんな背景があり、ツリータグを作りました。

最低賃金以下の労働価値だった

実際に作業記録を取り、かかっているコストを見て愕然としました。作業コストを販売価格で割り戻すと、労働が生み出している価値は最低賃金以下だったのです。品種によってはマイナスでした。つまり、その種類のリンゴを作れば作るほど赤字になります。手間に対して利益が少ないとは思っていましたが、想像以上でした。

リンゴの生産は手作業が多く、人手がかかります。全ての実に日光が当たるようにするために余分な枝を切る「剪定(せんてい)」、余分な実を取る「摘果(てきか)」、日光を当てて赤く色を付けるための「葉取り、実回し」など、機械ですることが困難な作業ばかりです。また、多くの農家は、実ができる前に余分な花を取る「摘花(てきばな)」や、品質を高めるために一つ一つの実を袋で覆う「袋掛け」などもします。

しかし、手間をかけても、価値向上につながらないこともあります。例えば、袋掛け。たしかに、色味が鮮やかになって販売価格が向上したり、保存期間が長くなったりはしますが、その分作業コストが上がり、利益が下がることがほとんどです。つまり、価値のない労働を増やしているわけです。

リンゴ農家も後継者不足が深刻ですが、儲からないのであれば当然です。弘前のリンゴ畑が存続するためには、きちんと儲かる仕組みを作らなければダメだと思いました。

省力化してもおいしいリンゴは作れる

そこで、価値を生み出さない作業をやめることにしました。また、大幅な赤字になっている品種の生産を減らし、利益の出やすい品種に絞りました。

効率化・省力化することに、批判的な意見をいただくこともあります。日本のものは手間暇かけて作られているから高品質なのだと。しかし、効率的に作られている海外のリンゴと比べて、スーパーに並んだ時の販売価格はほとんど変わりません。省力化すると、たしかに品質の低いリンゴも増えますが、それは仕分けて流通させなければよい話です。むしろ、仕分けを自動化できれば、今市場に出ているものより、品質が高いものだけに絞ることもできます。

アメリカでは、リンゴ農園での季節アルバイトが時給3,000円を超えるという話も聞きます。これまで200年続いた日本のリンゴの生産方法も、転換点に差し迫っているのではないかと思います。

【関連記事】

捨てる摘果を使った新たな可能性。加工専売品による利益の改善を。

弘前の未来を担うリンゴ農園に。マイナススタートを乗り越えるために。

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