たくさんの飲食店が立ち並ぶ恵比寿。その地に東京野菜を始めとした、国産の野菜をふんだんに使った料理が楽しめる店「WANOBA ワノバ」があります。WANOBAは、東京野菜の地産地消をテーマに、様々な調理法で野菜を楽しむことができます。料理を提供する器にもこだわり、日本の伝統工芸品を多数使用しています。五感で感じる私服のひと時を演出してくれます。
そんなWANOBAの店長であり料理人の水谷亮介さんに、東京野菜への思いや調理法のこだわりをお伺いしました。
——WANOBA誕生のお話やコンセプトを教えてください。
WANOBAは野菜を中心に提供する店です。オーナーが、日本の古き良きものを新しい形で提供したいという思いで、日本古来の伝統野菜や豆腐を使っています。

WANOBAで使われる日本の伝統工芸品の数々
WANOBAのすぐ近くに、wabistという雑貨屋も経営して、そこで販売している食器の使い方をていじしたいという考えもあって、この店ができました。食器などの伝統工芸品の生産者と、お客様を繋ぐ場所。そんなイメージの店です。
——それでWANOBAで使われている器は、伝統工芸品が多くあるのですね。店内のシックな雰囲気に溶け込んでいて、とても素敵です。
料理に使う食材へのこだわりを教えてください。
安心できる野菜を使った料理を届けたいという思いがあります。八百屋や農家と直接やりとりをして、新鮮で安全な野菜を送ってもらっています。特に、東京の野菜を中心に仕入れています。八丈島など、遠方からも届きます。
旬の野菜を用意しているため、メニューはその時々で変わります。おすすめメニューは毎月旬の野菜を使った料理です。また、グランドメニューも季節に合わせ、年に4回変更しています。
——農家が送ってくれる新鮮な旬野菜を、メニューに取り入れて提供しているのですね。
どうして東京野菜を使おうと思ったのでしょうか。
身近なものを使いたいという思いですね。地産地消を意識しました。
全国から良い野菜を送っていただいていますが、新鮮さを第一に考えると、距離が近い東京で採れたものが一番新鮮に決まっています。東京に店を構える以上、遠方の食材は採れたてを手に入れるということが難しいですよね。
この店で提供する一番採れたてでおいしい野菜は、東京で採れたものなんじゃないかなという結論に至りました。
——一番新鮮なものを届けたいという思いが、東京の野菜を使うきっかけとなったのですね。
野菜の調理法のこだわりはありますか?
野菜の調理法は、焼き・蒸し・生の三つが中心です。その他に季節によって、揚げることもあります。それぞれの野菜に適した調理法で提供しています。
例えば、ジャガイモ一つとっても、種類によって調理法を変えています。フライドポテトならこれ、サラダならこれなど。

WANOBAこだわり野菜—焼き
旬の野菜をこんがり焼いたシンプルな一皿。野菜によって焼き上がりも調整し、おいしい瞬間を逃しません。

WANOBAこだわり野菜—蒸し
野菜の甘みが一番出る、蒸し野菜。ストウブ鍋でじっくり蒸された野菜は、旨味がギュッと詰まって、この野菜ってこんな味だったんだと驚くほど
——同じ野菜でも調理法が違うだけで、こんなに味わいが変わるのですね。普段食べている野菜とは濃さが全然違います。
伝統工芸の器で料理を提供するということについて、どのようにお考えですか。
日本に本来ある文化だったり、伝統工芸の良さをお客様に直に感じていただきたいと思います。全国から選んだ、メイドインジャパンの良いもの、たくさんの工芸品を、自分一人で集めるのはなかなか難しいですよね。そんな工芸品を身近に感じていただく。欲しいなと思っていた人には、WANOBAで実際に使っていただくのは、とても良い機会だと思います。」
——WANOBAで野菜を盛って出してもらうのと、器だけみているのでは、使う時の印象が全然違います。伝統工芸品を扱っていることで、それを理由にお店に来たい、という価値にもなりますね。
これからどんなことに挑戦していきたいですか?
この野菜ってこういう食べ方があったんだ、というのを「もっと野菜やWANOBA自体を知ってもらうことに力をいれたいですね。探求を続けながら、
今は野菜を主に使っていますが、今後はフルーツも取り入れていきたいと思っています。

東京野菜と林檎のサラダブルーチーズドレッシング
僕は元々パティシエなんです。その経験を活かして、馴染みのあるフルーツもどんどん取り入れていきたいです。サラダにリンゴを入れるように、メーン食材をブルーベリーやオレンジで煮たり。国産にこだわって作ろうと思います。」
練馬、清瀬、府中近辺で採れた東京野菜を使ったサラダ。濃厚なブルーチーズのドレッシングが大人な味わいを演出します。くるみとリンゴの食感がアクセントに。ワインに合うサラダです。
——サラダを始め、料理にフルーツを入れるのは珍しいですね。少し懐かしい雰囲気もあります。
お客様へのメッセージをお願いします。
知ってもらいたい、ということに関してさらに言うと、普段お客様自身で作らないようなものをWANOBAで提供するのはもちろんですが、お客様も作れるようになってもらうとうれしいですね。ご来店いただいた際には、この料理は何が入っているのなど質問もしてください。レシピもお伝えしますよ。
お客様との距離をもっと近づけたいと思っています。お客様が知らないことをどんどん開発して、それをお伝えして、それがお客様にとって当たり前になってくれればと思います。
食べることを楽しんでいただきたいと思います。冷めないうちに、おいしく食べてもらえたらうれしいですね。」

究極のフライドポテト
ジャガイモは北海道のものをベースに、東京清瀬市で採れるジャガイモを合わせて使用。
じっくりと20、30分ほど弱火で揚げるフライドポテトです。じゃがいもと一緒に丸ごと揚げるニンニクは嫌な臭みがなく、ほくほくとおいしくいただけますよ。ハーブのさわやかな香りで、パクパク止まらない美味しさです。
カウンターからテーブル席、個室にお座敷など、様々なシーンで利用できるWANOBA。ランチの時には、お子さま連れの人も多く来客するそうですよ。
野菜へのこだわりはもちろん、お客様がどう楽しんでくれるかを大切に、料理を提供する水谷さん。これからのWANOBAがどう変化していくのか楽しみです。