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ニューヨークで大人気の日本茶ブランドに学ぶ「世界市場で成功する農家の秘訣」

ニューヨークで大人気の日本茶ブランドに学ぶ「世界市場で成功する農家の秘訣」

世界中で日本茶への注目が高まり、抹茶ブームも定着しつつあります。そこで、ニューヨークで販売を始めた、静岡のお茶農家のブランド「NODOKA(ノドカ)」をフィーチャー。同ブランドをプロデュースしているホン・スイルさんに、海外市場へのチャレンジについて、そして今後の展望についてお聞きしました。

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あらゆる業界でグローバル化が進む今、農家も国内だけでなく世界の市場に目を向け始めています。今回は、静岡のお茶農家がニューヨークで販売を始めた日本茶ブランド「NODOKA(ノドカ)」をフィーチャーしました。同ブランドをプロデュースし、世界中の日本茶ファンとお茶農家をつなぐ懸け橋となって活動しているホン・スイルさんに、海外市場にチャレンジしたい農家へのアドバイスなどをお聞きました。

日本茶を求めるニューヨーカーと農家の隔たりを実感

生まれも育ちも東京でありながら国籍は韓国というスイルさん。2017年1月までの数年間は、日本発のコンテンツを世界へプロモーションする博覧会「Japan Expo」の仕事のため、ニューヨークに住んでいました。

ニューヨークに移った当初、“Japanese Green Tea”と書かれたお茶の味に違和感を覚えラベルを見直すと、その茶葉は日本産ではありませんでした。ニューヨークは抹茶ブームが定着し、日本茶全体に注目が集まり始めていました。そのためまがいものが出ていたのです。「これほど求められているのに、大都市でさえ日本産の茶葉が手に入らないのはなぜだろう」と疑問に感じたそうです。

それをきっかけに、スイルさんは日本とニューヨークを行き来しながら、たくさんのお茶農家と直接会って話しました。「生産者と消費者の間に、大きな隔たりがあるとはっきり感じられました」とスイルさん。「あれだけ日本茶を求めているニューヨーカーたちが大勢いるのに、日本の農家は、海外で日本茶が好まれていることを知らなかったのです」

そんな中、無農薬・無化学肥料で日本茶葉を栽培する、静岡のお茶農家の増田さんと出会います。お茶の直接販売を検討していたことから意気投合し、共に新たな商品開発を決意しました。

ニューヨークで発売した日本茶ブランドの詳細と反応は?

「この日本茶の誕生ストーリーを伝えながらテストマーケティングしたい」「さらにこの日本茶のファンのコミュニティを形成したい」と願ったスイルさんは、北米を中心に世界中のスタートアップ企業が成功を収めて注目されているクラウドファンディング「indigogo」に参加しました。

その結果、見事に約8,000ドルもの出資を集めることに成功。14ヶ国、61名の人が賛同者となり(2017年7月21日時点)、日本茶ブランド「NODOKA」が誕生しました。

新ブランドの販売はニューヨークでスタートさせることは決めていたものの、商品の名前は英語ではなく、日本語で「安らぎ」や「落ち着き」を意味する言葉をブランドメッセージとして起用しました。

「NODOKAを選ぶことが、食文化や食習慣を考えるきっかけになってほしい」とスイルさん。人種や国籍を超えて多くの人に飲みやすいお茶にするため、NODOKAのプロデュースには細部までこだわりました。

日本で馴染み深い「煎茶」に加え、人気の高い「抹茶」、玄米の栄養が摂れる「玄米茶」、ノンカフェインの「ほうじ茶」と、4種類を揃えました。

さらに全種類とも、サラサラのパウダー状に加工。これは、出がらしに残ってしまう栄養素を無駄にしない「食べる茶葉」という考え方に基づいています。シェイクするだけで水やミルクにも溶けやすいので、どんな人にも簡単に淹れることができるだけでなく、料理やお菓子作りにも使いやすくなりました。

パッケージは禅を彷彿させるイメージで余白をたっぷり使ったデザインとし、伝統的な日本茶から一歩先を行くような、新しい日本茶のブランドイメージを形にしました。

スイルさんはイベントや展示会に出店し、PRのためにニューヨークを訪れています。新しいヘルシーフードに感度の高いニューヨーカーたちは、どこに出店しても多くの人が興味を示し、試飲しては喜び、NODOKAのおいしさを素直に受け入れてくれるそう。そんな反応から、スイルさんは大きな手応えを感じました。

そして2017年夏、満を持して日本での発売が決定。ネットショップのオープンやイベント出店など、NODOKAの良さを伝える企画を進める一方、世界各地から取り扱いの問い合わせやイベントといったコラボレーションのオファーも来ているのだとか。

農家との二人三脚で実現!お茶農家に通う理由

ニューヨークでの業務をパートナーにバトンタッチ。ご自身は現在、日本の茶農家に通い、世界のビジネスパートナーへNODOKAをPRする役割に注力しています。

また、スイルさんはNODOKAがどんな風にニューヨークで受け入れられているかを、こまめに農家へ共有しているそうです。

「写真や動画だけでなく、メールでもらった感想を訳して見せたりするとすごく喜んでもらえて、こちらまでうれしくなります」

これまで、自分たちが育てた茶葉がどんな風に消費者に受け入れられているか知る術がなかった農家にとって、自分たちのお茶が国内外で愛される様子を知ることは大きなモチベーションにつながります。

スイルさんと農家のこまめなコミュニケーションの積み重ねが、農家との信頼関係を確固たるものにしていきました。

将来、一緒に作ってくれる複数の有機農家とも協働し始めたそうです。今後新たなフレーバーが加わることも期待されます。

将来、海外進出を望む農家の方へ伝えたいこと

スイルさんは一緒に活動する農家について、3つのポイントを重視していると言います。

・家族経営の規模で、農業に信念を持っていること
・有機栽培していること
・お茶作りにかける思いや情熱、自身の哲学やストーリーがあること

「お茶の販売を通して感じることですが、世界中で”オーガニック志向”は増す一方です。特に欧米を中心とする先進国では、無農薬有機栽培、かつ遺伝子組み換え作物ではないものに価値を感じる傾向がとても強い。だからこそ日本茶で、しかもオーガニックで育てられた茶葉はとても評価が高く、購入したいという人が多いのです」

最後に、いつか世界の市場に挑戦したい!という農家へアドバイスをお願いしました。

「皆さんが日頃、手間ひまをかけて育てる作物に、自信と誇りを持って、これからも良いものを作り続けてほしいと思います。それを世界に知ってもらうことや、生産者と消費者の距離を縮める仕掛け作りはわたしたちが担うこと。どんな人が育てているのか、どんな人がどんな風に食しているのか、それを両者が知り合うことで新たな可能性や価値をつくり出します。たくさんの消費者を巻き込んで、”文化や価値観はもっと多様で良い”という寛大な社会を作る。農業こそが、そんな未来を実現できると思っています」

たとえ相手が海外であっても、品質の高さは世界共通です。世界に目を向けている農家にとって大切なのは、プライドと信念を持って良いものを作り続けていくということだと思っています。

 

NODOKA
https://www.nodokatea.com/
※写真提供:NODOKA

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