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生産者の試み

サツマイモ×耕作放棄地の活用×島おこし

サツマイモ×耕作放棄地の活用×島おこし

2017年08月19日

長崎県・五島列島の中でも山間部の多い新上五島町(しんかみごとうちょう)では、地形的な制約や鳥獣被害の拡大により、農業人口が減少し、耕作放棄地率は90%を超えています。そんな中、島で栽培されたサツマイモのみを使い、芋焼酎を製造している酒造会社が、自社で畑を開墾し、原料の調達と耕作放棄地の解消に力を入れています。

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山間部が多いため豊かな土壌が少なく、潮風を受ける新上五島町。島の畑で昔から作られてきたのが、サツマイモでした。今から約200年前、大村藩外海地区(現在の長崎市北西部)から五島地方に多くのキリシタンが移住し、未開の山間部に集落を開きました。人々は急こう配の土地を開墾して段々畑を造り、サツマイモなどを栽培して、命と信仰をつないできました。

山の斜面を切り開いて造られた段々畑。農業従事者が減り、今では貴重な風景となりつつある。

収穫したサツマイモは、家屋の床下に掘られた「いもがま」に保管され、保存食として重宝されました。サツマイモを薄切りにし、赤土や石で造られた「じろ(かまど)」で湯がいて天日干しにした「ゆでかんころ」は、もち米と一緒にふかしてつき、「かんころ餅」として食されてきました。かんころ餅は、現在では砂糖や水あめ、ごまなどを加えて郷土菓子として親しまれ、島の土産品の定番となっています。秋には、各家庭の庭先に建てられた「やぐら」と呼ばれる干し台にかんころが並べられ、正月に向けてかんころ餅をつく光景があちこちで見られます。

島の人たちにとって最も親しみがあり、愛着のあるサツマイモですが、その生産量は年々減少しています。長崎県五島振興局農業普及振興課によると、2014年に540トンのサツマイモが栽培されていましたが、わずか2年後の2016年には、天候不順なども影響して365トンにまで減少しました。

サツマイモを活用した新たな島の特産品開発と、美しい段々畑の景観を取り戻すため、2008年に新規酒造免許を取得した酒造会社「五島灘酒造」が誕生しました。地元農家が「焼酎原料用いもづくり研究会」を立ち上げ、トラクターを共同購入して新たに約7町歩(7ヘクタール)の休耕地を開墾し、焼酎の原料となるサツマイモ「黄金千貫(こがねせんがん)」を生産。芋焼酎「五島灘」として、島内外で親しまれるようになりました。ほかにも、「紅さつま」や「きんぼけ」といった品種作りにも挑戦し、新たな焼酎を開発してきました。

五島灘酒造の蔵。島内限定で販売されている希少な芋焼酎「五つ星」のロゴが大きく掲げられている。

しかし近年、協力農家の高齢化により、いもづくり研究会の作付面積が縮小してきました。五島灘酒造では、年間100キロリットルの製造量を目指していますが、今年の出荷総量は約33キロリットルになる見込み。1キロリットルあたり1トンのサツマイモが必要ですが、今年収穫できたのは26トン。不足分の7トンは、これまでに貯蔵庫でストックしていたサツマイモを使用して、芋不足を乗り切りました。このままの生産量ではあと3から4年でストックしているサツマイモが底をついてしまいます。五島灘酒造が選択したのは、必要なサツマイモはできる限り自分たちで作るという道でした。

新上五島町の美しい自然の中で育ったサツマイモのみで造られた五島灘酒造の焼酎。

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