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自然と調和した状態で農業を続ける。次世代のために土台を作りたい。

自然と調和した状態で農業を続ける。次世代のために土台を作りたい。

2017年08月24日

福島県二本松市で農家民宿を営みながら農業に取り組む菅野正寿(すがのせいじ)さん。農家の長男として生まれ、農業を通して自然と向き合い続けてこられました。そんな菅野さんに農業の役割についてお話をうかがいました。

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菅野さん略歴

・福島出身

・農業大学校を卒業後、実家の農業を継ぐ

・農家民宿「遊雲の里」を経営しながら農業を営む

有機とは自然に沿った無理のない営み

私が管理するあぶくま高原遊雲の里ファームでは、「旬のものを届ける」というコンセプトの元、自然と調和した農業を心掛けて野菜や米を作っています。米の種類はコシヒカリとコガネモチ。野菜はトマト、ニンニク、ジャガイモ、ダイコンなど多種類育てています。

1年を通して作物の「旬」を大事にするために、春は田植えや畑の種付けをし、夏から秋にかけては野菜の収穫、そして冬はモチの加工という流れで生産活動をしています。東日本震災が起きる前までは春にタケノコやワラビなどの山菜を採っていたのですが、原発事故の影響で山菜は今でも出荷停止の状態です。

私が目指しているのは、環境負担のない有機農業です。私の考える有機とは、有機JAS認定を得るとか有機農法をやるといった手法の話ではなく、自然や地域社会に沿って無駄なことをしないということ。ですから、農薬は使う時もあれば使わない時もあります。ただ、適した時期に種をまき、適した肥料を使っていれば、農薬の量は自然と減っていきます。

さらに、農業を行いながら農家民宿「遊雲の里」を経営し、おいしい食事や農業体験、ホタルと触れ合う機会を提供しています。民宿をやっている理由は様々な方に「農業の現場に来てもらって、自然と調和した生活を体験してもらいたいから」です。

都会で感じた違和感と自然への回帰

私が暮らす地域は山間部で平地が少なく、広くまとまった耕地を確保できません。昔から小さな畑で桑やタバコを育てながら牧畜をして生活するという環境で、実家では養蚕業を中心に生計を立てていました。長男として生まれたので「実家を継ぐものだ」という空気感が漂っていましたが、私自身は継ぎたいとは思っていませんでした。農家の大変な生活から抜け出したいと考えていたのです。

高校卒業後は東京に出て、農業大学校に進みました。継ぎたくないのに農業を学んだのは、いつかは家業を継ぐかもしれないという気持ちが頭にあったのと、宮澤賢治に影響を受けて、将来農業を子どもに教える人になりたいと思っていたからです。

実際に東京に住んでみて「都会は住むべきところではないな」と感じました。時代は高度経済成長の真っ只中。自然がなく、効率化ばかり求める社会に無理を感じたのです。また、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』からも大きな影響を受けました。自然に無理を続けていたら、いつかは自分たちの身に返ってくる。自然と調和した、本当の意味での有機的な生活をしなければならないのではないか。そんな思いから、福島に戻ることにしました。

顔の見える関係で商売をする

福島に戻ってから、自然に沿った形での有機農業を始めました。当初は考えが浅くて、有機肥料さえ使えば有機農法だと思っていたので、今ほど自然と調和した形ではなかったかもしれません。ただ、旬のものを育てる、ということは意識していました。

「産直」という言葉がまだない時代でしたが、農協を通すだけでなく、直接販売をする先を開拓しました。有機農業を手掛ける沢山の仲間に恵まれ、人と関係を築く中で自分なりの販路を見つけていきました。育てた作物を給食に使ってもらったりして「これならやっていけるな」と安心していました。

ところが、2011年に東日本大震災に加え原発事故が発生しました。放射能の影響が懸念され、県から農業を一旦中止するように指示されました。3月27日。日付まではっきり覚えています。結局、2週間後の4月12日には土に含まれる放射性物質の量が規制値より低いことが分かり、農作業を再開。それから、手探り状態でもう一度農業を始めました。

再開した当初は不安でしたが、できた作物からは放射性物質は検出されませんでした。山菜やきのこからは検出されたため出荷できませんでしたが、トマトやダイコン、米などは全く問題なかったのです。しかし、福島県産の野菜は危険だと消費者から思われて、それまで作った販路も失われてしまいました。

震災から6年経ち、現在は家族や周りの農業仲間と協力しながら、販路をどうにかして拡大しようとしています。そのために、消費者と「顔の見える関係」を構築し、正確な情報を届けることを心掛けています。

食べるだけではない農業の役割

私は、農業が果たす役割は、単なる食料の生産活動に留まらず、生物の多様性や人間同士のコミュニティーを育むものだと考えています。特に米作りは、日本の根幹をなすもの。ホタルやカエル、トンボなどの生き物は田んぼが荒れると姿を消してしまいます。それを餌にしていた鳥や動物も減少するので、生物多様性が一気に失われてしまうのです。他にも、田んぼはダムの役割も果たしていますから、なくなったり荒れたりすると、一気に水が流れて土砂崩れなどが起こります。

また、米作りは地域の盆踊りや祭りなどを含め、日本の地域コミュニティーの形成に深く関わってきました。米づくりをはじめとする農業がないと、生物も人間も調和を取ることができません。農業がなくては、日本の美しい里山は存在し得ないのです。

これだけの役割を持っている農業が次世代まで継続するために、私は土台を作りたいと考えています。

先日、畑で冬を越したニンジンをたまたま見つけました。ほとんどの人は、食べる根の部分しか見たことがないと思いますが、収穫せずに置いておくと、次の年に花を咲かせるのです。根の大きさは、収穫時期と比べてかなり小さくなっています。ボロボロになりながら次の世代のために花を咲かせる姿を見て、私もそうありたいと思いました。次世代のために力を尽くしたいのです。そのために、これからも適地適作の農業を続けながら、民宿を通して自然と調和した農業の大切さを伝えていきます。

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