武士政権のはじまりと「鎌倉野菜」が生まれた鎌倉のまち
神奈川県沿岸部にある鎌倉市は、日本的な風情あるまち並みや歴史ある寺院で有名なまちです。12世紀末に源頼朝が鎌倉に幕府を開いたことで、初の武士による政治が始まり、1230年代には鎌倉は政治、軍事、外交、文化などあらゆる面で日本の中心地となりました。現代においては、映画『海街Diary』で、極楽寺駅、七里ヶ浜、長谷寺など鎌倉の名所がロケ地となり、漫画『スラムダンク』などの作品の舞台にもなっています。
多くの人が訪れる名所がある一方、隠れた路地に入ると丁寧な暮らしぶりを感じさせる住宅街、山や畑などが見られます。鎌倉の気候は、三方を山に囲まれ南側が海に面している地形の影響を強く受けています。冬の冷たい北東風は丘陵にさえぎられ、夏の涼しい南西風が海から吹いてくるため、冬は暖かく、夏は涼しくすごしやすいのです。海と山が近く温暖な気候の鎌倉市は、ミネラル成分を多く含む肥沃な土壌を持ち、湘南は気候が良いため露地野菜を育てる生産者が多く見られます。
そんな鎌倉市で今、注目されているのが、特定の品種や産地を指定して商品化したブランド野菜の一種「鎌倉野菜」です。他と比べ圧倒的な味の濃さがあり、色鮮やかな美しさが特長です。1年を通し約100種類以上の野菜がつくられています。
農家とお客さんの距離の近さが生んだ珍しい品種
鎌倉市で採れた野菜を地域ブランド化したものが鎌倉野菜。今日のように知られる様になった経緯には諸説あり、約20年前にメディアに鎌倉野菜として取り上げられたことや、レストランが色とりどりの鎌倉産の野菜を使って「鎌倉野菜のサラダ」「鎌倉野菜のバーニャカウダ」をメニューに出したことがきっかけとも言われています。
黒大根や紫パプリカなど、西洋野菜を含む珍しい野菜が多いのも鎌倉野菜の特長です。鎌倉市では直売所が盛んで、生産者が「いかに消費者の目を引き、満足度を高めるか」を考えて栽培・販売した結果、色とりどりの珍しい野菜が増えていきました。直売所で販売するときの華やかさを意識するだけではなく、お店のお皿に盛りつけた様子まで想像して栽培するそうなので驚きです。
このように生産者と消費者の距離が近く、共選出荷しない直売農家が多いことで、少量多品目での野菜づくりが盛んになっています。
「お客さんの顔が見えるとやる気が出るし、新しい品種に挑戦して珍しい野菜を喜んでもらえるのが嬉しいんだよね」と鎌倉野菜農家の方は笑顔で答えてくれました。鎌倉市を訪れる際は、そういった農家の想いをぜひ肌で感じてみてください。
鎌倉野菜の味の濃さ活かした、色鮮やかなパスタ料理
オーナーの緒方(おがた)さんが、本物のカプチーノとエスプレッソが飲めるイタリアンカフェにしたいとオープンしたのがお店のはじまり。お客様の要望に合わせて料理も提供するようになり、13年前から鎌倉野菜を使うようになりました。当時はあまり意識せず使っていた地元の新鮮な野菜が、近年鎌倉野菜として知られるようになってきたそうです。信頼できる野菜を生産者の顔を見ながら買いたいとの想いが強く、野菜ごとに仕入れる生産者が決まっているそう。「ホタテと鎌倉野菜 アーリオ・オーリオ」は、お客様から野菜の味が濃くておいしいと評判のメニュー。手を加えすぎないことで鎌倉野菜のしっかりとした旨味を楽しむことができます。色鮮やかで珍しい野菜がたっぷりで目にもおいしい一品です。
【名称】Dolce far niente(ドルチェ ファール ニエンテ)
【住所】鎌倉市雪ノ下1-5-34
【電話番号】0467-22-5202
【営業時間】11:00-21:00 月曜11:00-17:30(L.O17:00)
【定休日】無休(臨時のお休みはHP上でお知らせ)
【メニュー】「ホタテと鎌倉野菜 アーリオ・オーリオ」※写真はパスタセット
旬の鎌倉野菜をおみやげに
鎌倉野菜を使ったおみやげをつくろう!との想いで始めたお店。鎌倉野菜だけを使った無添加・保存料なしのピクルスは、野菜の質を生かすため食感を残し、ボイル加減も厳しくチェックし「鎌倉野菜工房」のイチオシ商品です。すべて手づくりで、ピクルスを瓶に詰めるのもピンセットを使い、ひとつひとつ丁寧に愛情を込めて詰めているそう。保存食ではなく「食べる野菜」であることをモットーに、冷蔵での保存ですぐに食べてもらえるようにしています。ピクルス以外にも、湘南育ちの野菜や果実で作ったジャム、湘南の新鮮な魚介類を使ったスモークもあります。お客さんに“楽しんでほしい”“もう一度食べたい”と思ってもらえるような商品をつくりつづけています。
季節ごとの野菜でつくっているので1年を通していろいろな味を楽しんでみてはいかがでしょうか。
【名称】鎌倉野菜工房
【営業時間】11:00-19:00
【定休日】無休
【住所】鎌倉市小町2-12-27 鶴ケ岡会館1F 25A
【電話番号】0467-55-9628
【メニュー】いろいろ野菜のピクルス
朝採りの鎌倉野菜を使ったイタリアン
鎌倉市に36年間住み、畑を30年間つづけてきたオーナーが、毎朝収穫する野菜やハーブを使った料理を頂けます。メニューはその日採れた野菜から考えるので、開店10分前に決まることもあります。季節を感じる露地野菜のしっかりとした味を生かしつつ、メインの料理を邪魔しない野菜の料理。素材の力を大切にしたお料理からはオーナーの「食」への愛があふれます。「どうすれば喜んでもらえるか?」というあたたかな想いで、一人ひとりのお客様との時間を大切にしているので、居心地の良い贅沢な時間を過ごすことができます。オーナーのもう一つの顔は、ワインソムリエ。過去になんと150回のワイン会を開催、イタリアでワイナリーツアーをしていた経験もあり、お料理に合うワインを選んでくれるのも楽しみのひとつです。
【名称】オステリアジョイア
【営業時間】11:30-15:30 18:00-22:30
【定休日】 水曜(祝日の場合翌日)・第3火曜
【住所】鎌倉市御成町 13−40ヒラソル鎌倉1A
【電話番号】0467-24-6623
【メニュー】ランチメニューBコース
前菜 パプリカのムースと夏野菜のパスタチオ
パスタ 茄子とえびのスパゲティ
メイン 黄めじマグロのタリアータ