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売上アップ、地域振興に 「農業のシェアリングサービス」メリットは

売上アップ、地域振興に 「農業のシェアリングサービス」メリットは

農家の畑の一区画や、育てている農作物を消費者とシェアする「FARMFES(ファームフェス)」と、田んぼや果樹などのオーナー権を取得して、好きなときに里山に訪れて収穫体験ができる「里山シェア」。2つのシェアリングサービスのメリットとは。

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自動車や自転車、服、場所など、モノを「所有」するのではなく「共有」するサービスが、さまざまな分野で増えてきています。この流れは農業においても同じで、多くのシェアリングサービスが誕生しています。今回は、農業界におけるシェアリングサービスについて、2つの事例をもとにご紹介します。

ケース1:農場をシェアする

全国の農家が、自分の持っている畑の一区画や育てている農作物を消費者とシェアするサービスで、2017年2月より始まったのが「FARMFES(ファームフェス)」です。一般の方が、農場の一部の区画を「自分の農場」として契約すると、その区画に購入者のネームプレートが立てられ、農家が購入者の代わりに作物を栽培。収穫したら、それを購入者に届けるというシステムです。

「とちおとめ農家の1平方メートルの畑が1年契約で総額6,000円」のプランや、「無農薬栽培コシヒカリ16.5平方メートルの1年契約で12,000円」などのプランがあります。現在ファームフェスが契約しているのは全国100以上の農場で、野菜や果樹の農家が多いそうですが、畜産農家の契約プランもあります。「日本初のJASオーガニック認証を取得した薩摩黒豚1頭が子豚から成豚になるまでの1年間契約プラン」は、契約料12万円で、成豚になったらカットされた豚肉16キロが送られるというものです。

ファームフェスを利用する方で最も多いのが、子どもの入学祝いや家族の誕生日、記念日などのプレゼントとしての利用です。同社代表取締役の小平勘太(こびらかんた)さんによると、「プレゼントとしての利用が多いことは私たちも意外だったのですが、自分の農場を持つということは、一般の方にとっては非日常の体験で、それがギフトとしての需要に結びついているのかもしれません。また、モノのプレゼントとは違い、農場ギフトは農作物が育って収穫するまでの過程が一つのプレゼントなので、その場で終わらないというところが面白いと言われることが多いです」とのこと。ファームフェスでは、ギフトプランのほか、カタログギフトの販売なども始めています。最近では、ふるさと納税の返礼品にファームフェスで紹介している商品の一部を紹介することも開始しました。ふるさと納税をした方に、農場の一区画で栽培された作物が届く仕組みです。


写真提供:FARMFES

このサービスを利用する農家は、何か新しい取り組みをしてみたいと考えたり、売上アップや収入の安定を目指したいと思う方が多いそうです。普段は直接やり取りをすることのない一般消費者と密なコミュニケーションをはかることができ、ロイヤルカスタマーの獲得につながりやすいという点や、作物を収穫する前に区画契約料が入るため、キャッシュフローがよくなるといったメリットがあるそうです。

「消費者にとっては、農家の親戚ができたような感覚に、農家にとっては、自分の作物のファンができたような感覚になって欲しいですね」と小平さんは話しています。

ケース2:里山をシェアする


写真提供:アグリメディア

野菜を育てる畑のほか、果樹畑や田んぼのある地域で「里山シェア」というサービスが運営されています。神奈川県が進めている「かながわ県西地域活性化プロジェクト(※)」の一環として、神奈川県小田原市の北側に隣接する大井町で、株式会社アグリメディアが2016年9月より開始しました。

利用者は、田んぼ、果樹、畑それぞれのオーナー権を1年契約で取得でき、普段は里山にいるスタッフが栽培をしながら、好きなときに里山に訪れて田植えや稲刈り、収穫などの体験ができます。たとえば「標準プラン」は畑 12平方メートル、みかんの木 1本、田んぼ お米12キロ分がセットになって、月額14,000円。併設された温泉施設の利用が月4回まで無料で、味噌作りやそば打ちといった体験イベントは無料で参加できます。もちろん収穫された作物は持ち帰ることもでき、梱包して送付するサービスも年4回まで無料で、同プランに含まれます。

アグリメディアの武藤弘樹(むとうひろき)さんは「オーナー権を取得してこの里山を利用する方は、神奈川県や東京23区内に在住している方が中心です。里山は、日本の原風景とも言うような山々に囲まれた場所にあるせいか、単なる野菜作りだけではなく『いつか田舎暮らしをしたい』、『週末は自然豊かな場所でのんびりしたい』といった理由で利用されている方が多いようです。さらに里山には、天然温泉がある宿泊施設が併設されいて、オーナーは優待料金で利用できるため畑作業のあと温泉に入れるという点も好評価をいただいています」と話しています。


写真提供:アグリメディア

首都圏に暮らす方が手軽に利用できるようにと、都心部にも数多くの貸し農園がありますが、畑だけでなく、田んぼや果樹のオーナーになれるところが、一般的な貸し農園とは異なる点です。都会の喧騒から離れ、田舎に来たような自然あふれる環境で時間を過ごせるということが、都会の貸し農園にはない魅力ともいえます。

農場や里山のシェアは、一般利用客にとって農業との距離が縮まるきっかけとなります。シェアリングサービスが盛んになっていけば、地域振興にもつながり、社会や人々の暮らしがより豊かなものになっていくことでしょう。

FARMFES

https://www.farmfes.com

里山シェア

http://satoyamashare.com

(※)かながわ県西地域活性化プロジェクト:http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/0602/kenseipj/

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