作物の特長を最大限に生かして、農家でなければ作れない逸品を作る。元パティシエが全行程を一人で作る果物・野菜の加工品。 – マイナビ農業

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生産者の試み

作物の特長を最大限に生かして、農家でなければ作れない逸品を作る。元パティシエが全行程を一人で作る果物・野菜の加工品。

作物の特長を最大限に生かして、農家でなければ作れない逸品を作る。元パティシエが全行程を一人で作る果物・野菜の加工品。

2017年08月29日

2014年に果物農家として独立した舟久保寿江(ふなくぼ としえ)さん。パティシエから転身し、農作物の生産・加工販売を一人で行っています。畑でお話しをうかがった際、ラズベリーを口に頬張り、「これが農家の楽しみ。収穫量が減るのはわかっているんですけどね」と照れ笑いされていました。舟久保さんの農業に対する思いをお届けします。

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舟久保 寿江さん略歴

・山梨生まれ

・地元のホテルでパティシエとして働く

・果物を使った地産地消に取り組むため農業を学ぶ

・2014年、農家兼加工業者として独立

生産から加工・販売までを一人で

地元の農家さんから畑を借り、ラズベリー・ブルーベリー・カボチャ・サツマイモを自然に近い環境で無農薬で育てています。2017年からブルーベリーの収穫も始まり、育てた野菜や果物をジャムにして販売しています。

畑は2ヶ所で、合わせて50アール程です。目の前には富士山と南アルプスが広がって、雄大な自然を感じながら作業をすることができます。作業は基本的に一人で行い、ラズベリーが収穫のピークを迎える夏の時期は、1日ごとに収穫します。ブルーベリーはジャムにするため、20種類ほど育てています。ベリー類は背丈が低いので、女性でも育てやすい果物です。

丸一日収穫作業をした後は、自宅でジャムを製造しています。ジャムは地元のスーパーへ卸すほか、マルシェに出店して販売しています。

特色を生かしたものづくり

私が農業を始めたのは2014年。農家になる前は、ホテルでパティシエをしていました。ホテルではフルーツがたっぷりのったタルトを出していて、特にブルーベリーやラズベリーを使ったものが人気でした。

しかし、ケーキに使われているのは外国産のフルーツでした。山梨はフルーツ王国と言われるほどたくさんの果物が作られているのに、地元産の新鮮な果物を使わないのはもったいない。地産地消という言葉を知り、地元で採れたものをケーキに使いたいと思うようになりました。

また、自分で果物を作ることにも興味を持ち始めていました。それまでは果物の品種の特色を深く考えずにケーキを作っていたことに気がついたのです。ホテルに限らず、一般的なパティシエは農家を訪れない限り、果物の細かな特長まで知ることができません。自分で果物を作れば、品種のことを深く知れて、特長を生かしたケーキを作れると思いました。

そんな矢先に、私自身の乳製品アレルギーが発覚。乳製品が必需品なケーキを作ることは諦めました。それでも、果物を自分で育ててみようという気持ちは変わらず、社会人向けの農業学校へ入学しました。

農業学校に通う中で、果物を育てるだけでなく、生産から加工・販売まで一人で手がけることを思いつきました。農家であれば、収穫したての新鮮な果物を加工できるし、果物の特性をしっかり学べば、農家だからこそ出せる味があると考えたのです。ジャムづくりなら、パティシエだった経験も活かせます。夢がどんどん膨らみました。

土作りからスタート

地元の農家から耕作放棄地を借りて、ラズベリーを作り始めました。まず最初にしたことは除草と土作りです。祖父が農家だったので、耕運機などの農具は家にありました。

何年も放置された土地は、土を耕す作業に想定以上の時間がかかりました。土の中には石や建築資材などのゴミが埋まっていて、耕運機のロータリーが地中のゴミに絡まって壊れたこともあります。また、土が粘土状だったので、植物の根が下に伸びていきませんでした。

そこで、土の中に空気の層を作るために、米の籾殻やウッドチップを入れました。私の住んでいる地域では、行政がウッドチップを無料で配っていましたし、精米所で籾殻をもらえたので、それほど費用はかかりませんでした。農業を始めたばかりの私にとっては、ありがたいことでした。

 農家でなければ作れない逸品

収穫したラズベリーをジャムにする作業は試行錯誤の連続でした。ラズベリーは甘みと程よい酸味が特長です。それを最大限に生かしながらも、粗糖やレモンの量を調整しました。試作品を作る中で、収穫したものを冷凍してから使うと風味が落ちるので、収穫したものは、その日のうちに加工しなければならないことを知りました。そうやって苦労して作ったジャムのコンセプトは、「農家でなければ作れない逸品を」にしました。

ラズベリーに続いて、カボチャのペーストを作りました。ペーストには、水分が多いものや、水分が少なく甘みが口に残る品種、栗のような風味のカボチャなど、特長の異なる5種類を使用しました。様々な品種です。品種毎の配分を調整し続けた結果、収穫からジャムの完成まで3ヶ月かかりました。毎日配合を変えてジャムを作り試食する。その繰り返しの日々は苦行のようでしたが、丹念に向き合った結果、納得のいく味に仕上がりました。

農家を支えていきたい

現在は、マルベリーの栽培にも力を入れています。マルベリーは桑の実です。山梨県はもともと養蚕が盛んで、そのエサとして桑の木も育てられていました。マルベリーは甘みが強く、ジャムになじみやすいし、桑の葉は煎じればお茶として利用できます。

しかし、他の果物に比べて生産性が低いうえ、地元の方は食べ飽きているので、栽培に力を入れていません。利用価値が高い素材が衰退していくことに、もったいなさを感じています。まずはジャムにして、たくさんの方にマルベリー(桑の実)の存在を知ってほしいです。

また、ジャム作りを通して、農家に少しでも貢献できればと思っています。私は、農家の方を尊敬しています。農家が自然を相手に苦労をしながら作る作物のおかげで、私たちは生きているからです。農家は今以上に尊敬され、評価されて良い存在だと思っています。

今後は、他の農家が作った作物でも加工品を作る予定です。少しでも農業全体が盛り上がったらいいなと思います。

 

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