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いまの福島を伝えるために。「ねだんのない八百屋」という取り組み。

いまの福島を伝えるために。「ねだんのない八百屋」という取り組み。

福島の農家を束ねて販路の開拓などを行うNPO法人「がんばろう福島、農業者等の会」が始める「ねだんのない八百屋 Stand」という新たな取り組み。その第一弾として開かれた東京・恵比寿での企画店舗を訪ねました。

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いまの福島を味わってもらいたい

東京都渋谷区と港区にまたがる複合施設、恵比寿ガーデンプレイス。休日は家族やカップルで賑わう場所だが、ここでは毎週日曜日に「YEBISU Marche」という市場が開催されている(2017年8月現在)。野菜や米、果物から加工品まで様々な商品を扱う店舗が立ち並ぶが、ある週末その一角に「ねだんのない八百屋 ふくしまStand」という看板を掲げたお店が現れた。

文字通り、売られている野菜や果物に値札は付いていない。かわりに、置かれている料金シートに金額を記入して、自分の好きな値段で買うことができる。

運営しているのは、NPO法人がんばろう福島、農業者等の会。法人の代表であり、企画の主催者である齋藤登(さいとうのぼる)さんに狙いを聞きました。

「この企画は、『福島の農家のいま』を知ってもらいたいと思って始めました。東日本大震災から6年半。いまでも、東京のスーパーで福島産の野菜や果物を見ることはあまりないと思います。たまに見かけても、他の産地より安く売られているのが実情です。福島のことが、ニュースで取り上げられることも減りました。

ニュースが減り、価格が下落してもなお、私たち福島の農家は変わらず真心を込めて野菜や果物をつくり続けています。

農産物は出荷前に必ず放射能測定をしますし、減農薬や減化学肥料によって、トータルな安全性を目指しています。原発事故という途方もないハンディがあったからこそ、私たち福島の農家は世界で一番安全で世界で一番おいしい食べ物を目指さなくてはいけない。その覚悟と希望がつまったお米や野菜や果物を食べてもらい、いまの福島をしってほしい。そんな思いでこの企画を立ち上げました」。

価値をつけるのはお客様次第

お店は11時にスタート。昼過ぎにうかがったときには、お店の前には人だかりができ、桃などの人気商品は既に売り切れていた。梨やトマト、枝豆などいくつかの商品は試食も可能。通りかかったお客さんたちは、思い思いに商品を手に取り、料金表に買いたいと思った金額を記入する。

「値段はお客さんが決めてください。1円以上ならいくらでもいいですよ」。

初めての体験で戸惑っているお客さんもいる。いくらでもいいと言われたら、利益が出ないような値段をつけられてしまうのではないか。実際の反響について、齋藤さんはこう語ります。

「とんでもない値段をつける人は、いまのところいません。むしろ、全体で見れば普段の売上よりも多いほどです。みなさんスーパーで普段買っているものの値段を把握されているので、試食していつもの味と比較して値段をつけてくれるのです。

また、目の前に生産者がいることも大きいと思います。作り手の顔を見て、直接話を聞きながら選べるので、安心感があるのではないでしょうか。それに、作った人を目の前にして、変な値段はつけられないのではないかなと思います」。

福島を思い出すきっけかに

マルシェに出品している野菜の生産者も、その売れ行きを見守っていた。トマトやパプリカなどを育てる菅野正寿(すげのせいじ)さんに話をうかがいました。

「普段、マルシェに直接来ることはあまりないのですが、お客様と直接話して自分の野菜が売れている姿を直接見られるのは嬉しいですね。どんな値段をつけてもらえるか見当もつきませんでしたが、思った以上に売れている印象です。

今回、話を聞きつけて、二本松出身の人も何人か来てくれました。いまの福島を知ってもらいたいと思って企画しましたが、福島を思い出してもらうきっかけにもなったようで、良かったです」。

実際に購入してみると、値段をつける難しさがよく分かる。一般的な販売価格が想像できるものもあれば、全く見当がつかないものも。また、目の前に生産者がいるので、少なからず緊張感がある。値段をつけるというのは、自分が感じた評価・価値を伝えること。目の前で値段を伝えるというのは、自分の人間性を問われているような感覚だ。

今回の取り組みには、確かな手応えがあったと齋藤さんは話します。

「一般的に、ものを買うときは値段がついているのが当たり前で、自分で値付けする経験をしたことがある人は少ないと思います。やってみるとわかると思いますが、自分で値付けをすると責任感も感じますし、ものへの愛着もわきます。一般の方がそういう感覚を持ち、農業を身近に感じてもらうことが大事なのではないかと思います。

売れ行きを見ている雰囲気では、売上も悪くなさそうです。いつも自分たちで考えてつけている値段と、お客様がつけた値段の平均値を比べてみるのが楽しみです」。

ねだんのない八百屋「ふくしまStand」は、これからも様々な場所での出店を予定しています。多くの人に、「いまの福島」を知ってもらうための活動は、今後も続いていく。

※ふくしまStandの野菜や果物は、里山ファーデンファームWEBショップでもお買い上げいただけます

http://www.nihonmatsu-farm.com/

 

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