2012ロンドン大会から始まった「飲食提供に係る基本戦略」策定
検討会で議論されている「飲食提供に係る飲食戦略」とは、オリンピック、パラリンピック会場で、選手に提供する飲食の基本的な方針を示すものです。この基本を決めておくことで、具体的な会場設営や飲食提供パートナーへの情報提供に役立てられます。飲食提供に係る基本戦略は、ロンドン2012大会で初めて策定、公表され、前回のリオ2016大会でも策定されました。
基本戦略を議論する飲食戦略検討委員には、公益社団法人 日本栄養士会、一般社団法人 日本ホテル協会、公益社団法人 日本給食サービス協会などの関係者や、元オリンピック、パラリンピック選手などが名を連ねています。
2020年東京オリンピック・パラリンピック大会で使用される食材の調達
東京2020大会における食材の調達については、栄養面や衛生面などの基本的なことはもちろんですが、「持続可能性」の観点から基準が定められています。農産物については、食品安全、環境保全、労働安全を確保するためのGAP(Good Agricultural Practice)と呼ばれる取り組みを行い、その実施状況について第三者による認証等を受けることが求められています。
畜産物についても同様ですが、食品安全、環境保全、労働安全に加えて、アニマルウェルフェア(家畜が感じるストレスを低減し、快適に過ごせる環境で飼育すること)への配慮が必要です。
これらに加え、食品ロス対策や、環境に配慮した資材の利用、日本の食文化の発信といった視点でも、専門家たちの議論が重ねられています。
リオ2016大会で飲食提供をする対象となった人数は、選手、オリンピック役員等の関係者、プレス、大会スタッフとボランティアを含め、18万5,000人。これに、現在想定されている観客数約800万人を加えると、膨大な飲食物が必要となります。
リオ2016大会での食事提供
前回のリオ2016大会関係者から聞き取り調査を行った「飲食提供レポート」によると、リオ大会選手村のメインダイニングは、ジャンボジェット5機が格納できるほどの広さで5,300席あり、24時間営業。利用した選手、関係者は1日に延べ約1万5,000人から2万人に及びます。料理は、「ブラジル料理」「ワールドフレーバー」「アジア・インディア」「ハラール」「ピザ・パスタ」「サラダ・デザート」の6つのゾーンで提供され、メニューは8日間のローテーションで作られました。
このほか、選手村の中にはバーベキュー、野菜料理を提供するオープンタイプのレストランも設けられ、アスリート同士の交流やミーティングの場としても活用されました。選手たちが気軽に軽食を手にできるよう、果物やマフィン、コーヒーなどを提供する「グラブ&ゴー」というスタイルの飲食提供場所も、選手村内に7カ所設置されました。
さらに、世界中から報道関係者が集まる国際放送センターとメインプレスセンターにも、午前8時から午後8時まで利用できるレストランが設置され、サラダの量り売りやお菓子、日用品なども販売されたそうです。
オリンピック・パラリンピック会場で求められる食事
世界各国から集まった選手たちが、コンディションを整えて最高のパフォーマンスを発揮できるようにするため、食事は重要なポイントとなります。そのため、選手村で提供する食事は栄養面のほか、衛生面にも気を配り、アレルギー表示を行い、ドーピングコントロールに配慮することも必要です。様々な文化背景がある国々の選手が集まるので、宗教上の配慮を行ったり、飽きがこないためのメニューサイクルを考慮することが求められます。
試合前の選手が口にする食事は、十分なカロリーを必要とするものや、体調管理が必要なものなど、競技や選手によって異なります。
また、観客向けの食事については、おいしさはもちろんのこと、品揃えや価格、商品のわかりやすさ、待たせずにすぐ提供できる工夫などが求められます。
飲食戦略検討会議の第6回会議は9月に開催予定で、その後「飲食提供に係る基本戦略」は、2018年3月頃に公表される予定です。
安全で円滑な運営と共に、日本の食文化を伝える場として、どんな大会運営ができるのか。今後も注目です。
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 公式ウェブサイト