コンセプトは「体験型博物館」
東京農業大学「食と農」の博物館は、2004年4月に学校法人東京農業大学が、一般社団法人進化生物学研究所の協力のもと、開館した博物館です。見るだけの博物館ではなく、耳で聞いたり、触ったり五感で体感できる「体験型博物館」がコンセプトで、入館料は無料です。
都会的な外観の建物は、建築家の隈研吾(くまけんご)氏による設計で、建物内の展示空間とカフェ、隣接する進化生物研究所「バイオリウム」が有機的に融合するようなイメージで作られています。
入口には見上げるほど大きな鶏のオブジェがあり、入る前から期待が高まります。1階は企画展とカフェ、2階は常設展といったフロア構成になっています。
121点の鶏の学術標本と280本の酒瓶は圧巻
「食と農」の博物館で最も特長的な展示が、驚くほどたくさんある鶏の剥製です。国の天然記念物に指定されている日本の鶏や外来品種、合わせて121点が展示されています。内訳はニワトリの先祖とされる野鶏4品種、天然記念物の指定を受けている16品種を含む日本鶏26品種、外国種11種類で、系統図などもあります。
「食と農」の博物館でもう一つ有名な展示が、280本に及ぶ酒瓶のコレクションです。東京農業大学には醸造科学科がありますが、「醸造」と名前がつく教育機関を有する大学は、日本全国でここだけです。醸造科学科の卒業生が経営する全国の蔵元から取り寄せた酒瓶はライトアップして展示されており、とても美しく見ごたえがあります。
酒瓶だけでなく、古い酒器や日本酒造りの道具も展示されています。酒器は醸造学科の創立者、住江金之(すみのえきんし)氏の収集によるもので、酒の文化や地域ごとの特長を、200点もの展示品から知ることができます。日本酒造りの歴史についても、実際に使われていた古道具を見ながら学ぶことができます。
このほかにも、さまざまなテーマの企画展が行われています。標本作成や食育講座といった、子どもから大人まで楽しめるイベントも随時開催されています。
動物園、植物園のくくりを取り払った「バイオリウム」
博物館に隣接している温室「バイオリウム」では、一般財団法人進化生物研究所(※)が世界各地を調査し、収集してきた貴重な動植物を観察することができます。アフリカ、オーストラリア、マダガスカル、中南米などに存在する熱帯系の動植物が生体展示されています。また、バイオリウムの奥にあるミニ・ミュージアムでは、生きた爬虫類や昆虫を展示しています。
バイオリウムとミニ・ミュージアムも入場無料です。事前に有料ツアーに申し込むと、進化生物研究所の研究員から、動植物について詳しい解説を受けることができます。(料金は大人500円、小人250円。団体割引あり)
※一般財団法人 進化生物研究所:1950年に東京農業大学農学科教授の近藤典生(こんどうのりお)博士が設立した「東京農業大学育種学研究所」を母体として、1974年に財団法人の認可を取得。生きた動植物や実物の標本を収集し、研究の中心におく、日本では珍しい研究所。
カフェには東京農大のオリジナルメニューも
博物館1階にはオープンカフェ「Cafe Petit Radish(カフェ プチ・ラディッシュ)」があります。地球上で最も多くビタミンCを含む果実といわれるカムカムを使用した「カムカムドリンク」、オホーツクで育成したエミューの卵とオホーツク海の海洋深層水で作った「笑友(エミュー)生どら焼き」など、オリジナルのメニューが提供されています。
食べ物や農業に興味を持っている方なら、一度訪れてみる価値のある博物館です。博物館内には、今回ご紹介した展示以外にも日本で使われてきた古農具や古民家の再現ジオラマ、クリオネの生体展示のほか、たくさんの展示があります。
企画展の内容やイベントについては、博物館ホームページで最新の情報をチェックしてみてください。
東京農業大学「食と農」の博物館
東京都世田谷区上用賀2-4-28
03-5477-4033
開館時間:4月~11月10:00~17:00 12月~3月10:00~16:30(入館は閉館の30分前まで)
入館料:無料
休館日: 月曜日 (月曜が祝日の場合は火曜)、毎月最終火曜日、大学が定めた休日
http://www.nodai.ac.jp/campus/facilities/syokutonou/