奥多摩は本ワサビの名産地
昭和記念公園の「たまたまわさびそば・うどん」の一番のポイントは、ワサビです。
ワサビは北海道から九州まで日本全国で栽培されています。長野県の安曇野地域は特に有名です。長野は生産量1位で、全生産量の3分の1を占めます。ワサビの栽培には、水が綺麗で涼しい気候が必要です。
農林水産省の平成27年特用林産基礎資料を見ると、生産量の順位は、2位静岡県、3位岩手県と清流に恵まれた土地が続きます。
そして、実は東京都もワサビの生産量では全国トップ10に入ります。西端にある奥多摩の清流でも、ワサビが育っています。特に奥多摩のワサビは、古くは将軍家献上の記録もあって、今でも町の特産品の一つです。
たまたまわさびそば・うどんを作った、昭和記念公園パークス共同体 収益グループ 飲食物販リーダーの塩原利晴さんは「奥多摩のワサビは、あまり辛くなく、風味が豊かなところが特長」と話します。
多摩地域の特産品を3つ重ねる
たまたまわさび・うどんは、奥多摩の特産品である本ワサビを筆頭に、多摩地域の特産品が3つ使われています。
温泉玉子は、多摩地域の北部、武蔵村山・かたくりの湯でボイルしたもの。お客様からは「玉子が生ではないので、やわらかすぎず固すぎず、麺によくからんで美味しい」との声もあるそう。
タレはやはり多摩地域の主要拠点である立川の老舗石坂商店の「もとだれ」を使用しています。もとだれは、超特選醤油、かつお節、かつお節エキス、みりんをベースとした濃厚調味料として人気です。石坂商店の店主からの「もとだれはうどんにも合う」という一言もヒントとなり、メニューが出来上がりました。
ネーミングへの遊び
もうお分かりのとおりで、たまたまわさびそば・うどんのネーミングは「多摩」と「温泉玉子」のタマから。漢字では、玉多摩山葵蕎麦・うどんです。
ネーミングの第一人者として、「東急Bunkamura」「日清oillio(オイリオ)」などを手掛けた岩永嘉弘さんは、ネーミングの基本パターンを4つに分けています。
素ネーミング、足し算ネーミング、引き算ネーミング、掛け算ネーミング。たとえば、「カロリーメイト」は「カロリー」と「メイト」と足しているといった具合。
たまたまわさびそば・うどんは、正に足し算で組み合わさっている例ですね。
でもそこに、偶然にという意味の「たまたま」という言葉と、また音が重ねられた語感によって耳に馴染みやすくもなっている。ちょっとした遊び心が垣間見られるような。
昭和記念公園の地産地消メニューは他にも
昭和記念公園の地産地消メニューは、たまたまわさびそば・うどんだけではありません。
他にも、「ベリー・ベリーフロート」というドリンクが販売されています。
これは、立川市内の果実農園で作られたブルーベリーとラズベリーを一度凍らせてクラッシュ。そこにやはり多摩地域にある昭島市の地下水を汲み上げ、炭酸水にして加えています。さらにヨーグルトアイスを乗せた甘酸っぱいドリンクです。
これもやはり多摩地域の特産品を重ねています。
そして、足し算のネーミング。ベリーは果物の「BERRY」でもあり、とってもの「VERY」ともとれます。とってもベリーで、ネーミングにも面白みがあります。
昭和記念公園では、ネーミングから、メニューのアイデアが作られていくこともあるそうです。
地産地消は連携の仕組み
地産地消と言うと、一品だけを使ってメニューを作る場合もありますが、このようにいくつかの地産品を重ね合わせることもできます。
すると、地元感は高まりますし、商品特性が強まっていきますよね。作物だけでなく、加工品を組み合わせるのもアリ。
たまたまわさびそば・うどんの場合、3つの特産品を重ねていましたが、実際にそれをメニューに作るのが立川にある昭和記念公園内のレイクサイドレストランであることを考えると、多摩地域が4つ重ねられた逸品だとも言えます。メニューを食べて、その美味しさにタレを買いに行ったお客様もいるなど、広がりも生まれました。キャッチーなネーミングそのまま、正に多摩のメニューです。
ひとつのメニューから、たくさんの顔が見えてくる。地産地消は、地域連携のきっかけづくりにもなっていきます。
販売等に関するお問い合わせ先
国営昭和記念公園 Tel.042-528-1751(自動音声対応)
写真提供:昭和記念公園