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伝統的な農林水産業を残し 地域のブランド力を高める「世界農業遺産・日本農業遺産」

伝統的な農林水産業を残し 地域のブランド力を高める「世界農業遺産・日本農業遺産」

2017年10月01日

伝統的な農林水産業を保全し、次世代に継承する取り組みが始められています。国連食糧農業機関(FAO)では「世界農業遺産」として認定を進め、静岡県の茶草場農法や熊本県阿蘇地域の草原の維持と持続的農業など、8つの地域が認定されています。また日本国内では、「日本農業遺産」が設けられ、2017年3月に第1回目の認定地域が決定し、鳥羽志摩の海女漁業や真珠養殖業、埼玉県武蔵野地域の落ち葉堆肥農、静岡水わさびの伝統栽培など8地域が認定されました。

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世界農業遺産とは

世界農業遺産は、社会や環境に適応しながら、何世代にも渡り、形づくられてきた伝統的な農林水産業と、それに関わって育まれた文化。ランドスケープまたはシースケープ(土地または海の上に農林水産業の営みを展開し、それが呈する一つの地域的まとまり)、生物多様性などが一体となった世界的に重要な農林水産業システムを国連食糧農業機関(FAO)が認定する仕組みです。2002年より開始され、世界では17ヵ国38地域、日本では8地域が認定されています。

世界農業遺産の認定を受けた地域では、世界農業遺産の保全のための具体的な行動計画を定め、これに基づき、伝統的な農業、農法(林業、水産業を含む)や豊かな生物多様性などを次世代に確実に継承していくことが求められます。

世界農業遺産に認定されるメリット

地域固有の農林水産業の価値が世界的に認められることで、地域の人々に誇りと自信をもたらすとともに、農産物のブランド化や観光客誘致を通じた地域経済の活性化が期待されます。また認定地域同士の交流、国内外との連携強化なども、のぞめます。

世界農業遺産の認定基準

FAOによる世界農業遺産の主要な5つの認定基準は、
(1)食料及び生計の保障
(2)農業生物多様性
(3)地域の伝統的な知識システム
(4)文化、価値観及び社会組織
(5)ランドスケープ及びシースケープの特徴
となっています。
世界に類を見ない、日本を代表する伝統的で特徴的な農業、農法を有しているか。また伝統的、特徴的な農業、農法を核とした持続可能な農林水産業システムが構築されているか。そして上記の必須5基準に示される事項が相互に関連性を持ち、バランスの取れた内容となっているかが認定の基準になります。

世界農業遺産の審査の手順

1 申請書作成

申請者となる協議会等が都道府県、学術機関と連携、協力、また地方農政局と連絡、調整し情報提供を行い、申請書を作成します。

2 農林水産省による承認を得る

申請者は申請書を作成し、農林水産省に提出します。農林水産省は、世界農業遺産等専門家会議の評価を踏まえ、国連食糧農業機関(FAO)に認定申請する地域を決定します。

3 国連食糧農業機関(FAO)による認定へ

申請者は農林水産省を通じて国連食糧農業機関(FAO)に認定を申請。書類審査及び現地調査を経て認定されます。

 

世界農業遺産に認定されている国内8地域

世界では17ヵ国38地域が認定されており、日本では8地域が認定されています。

トキと共生する佐渡の里山(新潟県佐渡市2011年認定)

佐渡市では、トキをシンボルとして多様な生き物が生息できる環境を整えるために、トキの主な餌となるドジョウなどが生息する水田において、「生き物を育む農法」に島全体で取り組んでいます。環境に配慮し育てられた米は、「朱鷺(トキ)と暮らす郷」の名称でブランド化され、食と命を育む生き物と共生した持続的な農業が展開されています。

能登の里山里海(石川県能登地域2011年認定)

能登地域には、日本海に面した急傾斜地に広がる「白米千枚田」をはじめとした棚田や、海の強い潮風から家屋を守る間垣と呼ばれる竹の垣根など、日本の農山漁村の原風景ともいわれる独特の景観が見られます。農耕神事「あえのこと」など、農林水産業にまつわる祭礼が各地で行われています。

静岡の茶草場農法(静岡県掛川周辺地域2013年認定)

掛川周辺地域では、県の特産品であるお茶の栽培を「茶草場農法」と呼ばれる独自の伝統農法で行っています。茶畑の周りに点在する草地(茶草場)からススキなどの草を刈り取って、秋から冬にかけて茶畑に敷く農法で、この農法で作られたお茶は高い評価を得てきました。

阿蘇の草原の維持と持続的農業(熊本県阿蘇地域、2013年認定)

阿蘇地域では草原を人が管理し続けることで、日本最大級の草原を維持しています。四季を通じて草を焼く「野焼き」、ウシやウマを放つ「放牧」、草を刈る「採草」を中心に草原の管理を行います。阿蘇の野焼きは表面だけを焼くため、土中の植物の種や昆虫に影響がなく希少な動植物が数多く残っています。

クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環(大分県国東半島宇佐地域2013年認定)

降水量が少なく、水の確保が困難だった国東半島宇佐地域では、安定的に農業用水を得るために、小規模な「ため池」を連携させ、効率的な土地・水利用を行ってきました。この地域では、クヌギを利用した原木しいたけ栽培が盛んに行われ、クヌギは切り株から15年程で再生することから、この原木しいたけ栽培により森林の新陳代謝が促されるとともに、水資源のかん養や、里山の良好な環境と景観の保全につながっています。

清流長良川の鮎(岐阜県長良川上中流域2015年認定)

岐阜県を流れる長良川は、漁業者や市民団体による水源林の育成や河川の清掃など、人が適切に管理することで資源を保全するとともに、良好な環境を生み出し、清流に育まれた漁業、農業、林業などの産業が発達している「里川」です。鮎を中心とした内水面漁業が盛んで、鵜飼漁をはじめとした伝統的な漁法が数多く受け継がれ、鮎を使った郷土料理も食文化として根付いています。

和歌山 みなべ・田辺の梅システム(和歌山県みなべ・田辺地域2015年認定)

みなべ、田辺地域は、その土地を養分の乏しい礫質の斜面が占めており、斜面にウバメガシの薪炭林を残しつつ梅林を開墾して、高品質な梅を生産しています。薪炭林は水源かん養や崩落防止等の機能を保持するとともに、ウバメガシからは堅くて良質な「紀州備長炭」が生産されています。地域に住む就業者の7割は梅の産業に関わっており、梅は地域の基幹産業として人々の暮らしを支えています。

高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム(宮崎県高千穂郷・椎葉山地域2015年認定)

険しい山々に囲まれ、平地が極めて少ない環境下で人々は自然を敬い、森林からの恵みを巧みに活用しながら針葉樹による木材生産、広葉樹を活用したシイタケ生産、高品質の和牛生産、お茶の生産、棚田での稲作、焼畑等を組み合わせた農林業複合経営を営んできました。地域に伝わる伝統文化「神楽」は、五穀豊穣などを願う神事であり、現在も各集落で奉納され続け、その継承を通じて地域の絆をさらに強めています。

日本農業遺産とは

世界農業遺産の日本版として農林水産省が制定したのが、日本農業遺産です。2016年度に初となる候補地公募と1回目の選定を行い、2017年3月、8地域が日本農業遺産として認定されました。将来に受け継がれるべき伝統的な農林水産業システムを広く発掘し、その価値を評価することを目的として始まりました。災害が多いなど、日本ならではの独自の観点から、重要度の高い伝統的農林水産業を行う地域を農林水産大臣が認定する仕組みです。日本農業遺産に認定されることで、地域の活性化や農林水産物のブランド化、観光客の誘致など多方面で効果が期待されます。

日本農業遺産の認定基準

世界農業遺産と共通の上記の5つの認定基準があります。さらに日本農業遺産独自の基準として、自然災害や生態系の変化に対する回復力、多様な主体の参加、6次産業化の推進があげられます。

世界農業遺産への認定申請にかかわる承認と日本農業遺産の認定に関する次回の公募は、2018年初旬を予定しています。

日本農業遺産の審査に必要な書類

申請には以下の書類が必要です。
(1)世界農業遺産への認定申請に係る承認及び日本農業遺産への認定申請について (実施要領様式あり)
(2)都道府県の意見書(任意様式)
(3)学術機関等の意見書(任意様式)
(4)申請者の概要(任意様式)

日本農業遺産の審査の手順

農林水産省による審査は以下の手順で行われます。
(1)一次審査(書類審査)
(2)現地調査
(3)二次審査
(4)承認・認定地域の決定
(5)推薦書及び認定証の授与

日本農業遺産に認定された8地域

2017年3月、日本農業遺産として認定された地域は8地域。そのうち、宮城県大崎地域、静岡県わさび栽培地域、徳島県にし阿波地域の3地域は、世界農業遺産への認定申請が承認されました。

「大崎耕土」の巧みな水管理による水田農業システム(宮城県大崎地域)

歴史的に冷害や洪水、渇水が頻発する自然条件を耐え抜くために、巧みな水管理や屋敷林「居久根(いぐね)」による災害に強い農業、農村を形成しています。

武蔵野の落ち葉堆肥農法(埼玉県武蔵野地域)

江戸時代に農業的価値の低い原野で、落ち葉を堆肥化し畑にすき込む(※)ため、何もない原野に落ち葉を集める林が人工的に整備されました。住居、耕地、平地林(肥料採取地)を一組とした開発が行われ、現在まで落ち葉堆肥農法が継承されています。

(※)すき込む:肥料や堆肥、緑肥などを加えながら耕すこと。

盆地に適応した山梨の複合的果樹システム(山梨県峡東地域)

痩せた傾斜地において、土壌や地形、気象等に応じてブドウやモモなどの果樹の適地適作が歴史的に行われ、我が国独自のブドウの棚式栽培が発達しました。

静岡水わさびの伝統栽培(発祥の地が伝える人とわさびの歴史)(静岡県わさび栽培地域)

日本の固有種であるワサビを、沢を開墾して階段状に作ったわさび田で、肥料を使わず湧水に含まれる養分のみで栽培する伝統的な農業を継承しています。

雪の恵みを活かした稲作・養鯉システム(新潟県中越地域)

水の少ない山間地において、横井戸や雪解け水を利用した稲作と養鯉が伝統的に行われ、突然変異の色鯉を育種した錦鯉の発祥の地。

鳥羽・志摩の海女漁業と真珠 養殖業 持続的漁業を実現する里海システム(三重県鳥羽・志摩地域)

リアス式海岸が連続する地形と豊かな藻場が形成された生態系を活用し、アワビなどの海女漁や世界に先駆けて発達した真珠養殖を営んでいます。

急峻な地形と日本有数の多雨が生み出す尾鷲ヒノキ林業(三重県尾鷲市 紀北町)

急傾斜地において、密度管理を適切に行い、長い年月をかけてゆっくりと育てることで、 高品質なヒノキを持続的に生産する独自の伝統技術が発達しました。

にし阿波の傾斜地農耕システム(徳島県にし阿波地域)

急傾斜地に茅をすき込んで土壌流出を防ぎ、独自の農機具を用いて斜面を階段状にせずに耕作する独特な農法で、在来の雑穀など多様な品目を栽培している。

日本農業遺産はまだ始まったばかりの認定制度です。地域の農業や農法を存続させたり、地域の付加価値をつけていくために、これらの認定制度を利用していくことも考えてみてはいかがでしょうか。

世界農業遺産・日本農業遺産

http://www.maff.go.jp/j/nousin/kantai/giahs_1.html

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