生産者と消費者の交流を生むECサイト「ポケットマルシェ」がつなぐもの – マイナビ農業

マイナビ農業TOP > マーケティング > 生産者と消費者の交流を生むECサイト「ポケットマルシェ」がつなぐもの

マーケティング

生産者と消費者の交流を生むECサイト「ポケットマルシェ」がつなぐもの

生産者と消費者の交流を生むECサイト「ポケットマルシェ」がつなぐもの

2017年10月27日

出品者を農家と漁師に限って展開するECサイト「ポケットマルシェ」は、2017 年9月にサイトオープン1 周年を迎えた。生産者と消費者をダイレクトにつなげるサービスは「食べること」の裏側にあるストーリーに光を当て、共感の輪を拡げている。東日本大震災を起点に、東北の生産者と向き合ってきた代表の高橋博之(たかはしひろゆき)さん。人と人をつなげるサイトの目指す先。「ポケットマルシェ」に込めた思いとは。

  • LINE
  • twitter
  • facebook
  • Google+
  • Hatena
  • Pocket

ポケットマルシェ

生産者と消費者の距離と時間を縮める「ポケットマルシェ」

「ポケットマルシェ」は、農作物や水産物を生産者から直接購入できるECサイト。「スマホひとつで、どこでもマルシェ」をコンセプトにした「生産者も消費者も、できるだけ手間を省いて簡単に」商品のやり取りができるサービスが好評を得ている。近年、特に注目を集める生産者から消費者への直接販売。個人で始める生産者にとってハードルとなるのは、出品からはじまって、伝票作成、配送の手配、顧客管理、入金など一連の煩雑な業務が発生すること。その業務を、スマートフォンを使って処理できるのが「ポケットマルシェ」の魅力だ。一方の消費者は、事前にサイトに登録することで、ワンクリックで注文することができることはもちろん、生産者とコンタクトを取ることも可能なので、生産者の横顔を知った上で、商品を購入できるメリットがある。
例えば、漁師のAさんが水揚げしたばかりの新鮮な「魚」。Aさんはスマートフォンを使って船の上で魚を撮影し、商品情報のコメントを加えて、その場でサイトにアップ。それを見た消費者Bさんが購入希望をクリックすることで注文が成立。サイトを利用するに当たって、Bさんは注文時に住所を登録しているので、注文が入った段階で、提携した運送会社が自動的に配送伝票を発行する。ドライバーがその伝票を持参し、商品を集荷するシステムとなっているため、Aさんは箱詰めするだけで商品を発送することができる。顧客管理と入金管理は運営会社の「ポケットマルシェ」が担う。
「新鮮なものを新鮮なうちにとか、生産者と消費者が交流できるとか、それが簡単にできるなど、メリットを掛け合わせたのが最大の特徴」と話す代表の高橋博之さん。サイトを通して一番伝えたいのは、商品の裏側にある生産者のストーリーだ。「利便性や効率を追い求めてきた私たちは、自分が口に入れる食べ物を、誰がどこで作ったのかを知る機会が減ってしまった」。食べることは命を維持することに直結する行為。だからこそ、「ポケットマルシェ」は、食べ物を作る人(生産者)と食べる人(消費者)のコミュニケーションを重視する。

ポケットマルシェ

東日本大震災から見えてきたもの

「生産者と消費者が直接交流する場が必要だ」と思った高橋さんが「ポケットマルシェ」に至るまで、その前段には東日本大震災がある。岩手県花巻市の出身。18歳の時、進学のために上京し、20代のほとんどを東京で過ごす。代議士秘書やフリーランスのライターなどを経て、29歳で花巻に戻る。社会課題に正面から向き合う覚悟を決めた30歳で、岩手県議会議員に初当選。県議の活動を通して、改めて東北の一次産業の実態に直面する。「収入を得るのが大変」「担い手がいない」。課題が山積する農山漁村に、どうすれば希望の種をまくことができるか。答えが見つからない自分へ問いかける日々の中。2011年3月11日に、東北地方を襲った未曾有の震災が、高橋さんに一つの道を提示した。

漁師

食べ物の裏側にあるストーリー

大津波が襲った東北の被災地では、復興支援にかけつけたボランティアと被災者の交流が生まれた。都市で生活する人と、自然とのかかわりの中で生きる漁師。今まで出会うことのなかった両者が交わり、時には、支援に向かったボランティアが、地元の人々に生きる力をもらい、元気付けられる姿を目にした高橋さん。災害時だけでなく、日常においても、両者が連携する場面を作ることはできないかと考えた。
生産者から届けられる食物があるから、都市に住む人々も生活できる。農家や漁師がいてくれるから、自分たちが食べられる。そのような当たり前の状況は、生産者の努力があって成立しているということを忘れてはいないか。消費者は、生産物を値段だけで判断し、評価していないか。まるで工業製品かのように、規格や時期などの理不尽な要求を続けて良いのか。消費者の意識を変えていかなければ、農業、水産業に希望を見出すことはできない。「食べ物の裏側にいる生産者の思いを伝えたい。生産者と消費者をつなげたい」という使命感から、彼は行動を起こす。

食べる通信

食べものを物語とともに届ける「食べる通信」

2013年7月。髙橋さんの思いは「東北食べる通信」という形を持った。コンセプトは「食べもの付きの情報誌」。東北の農家や漁師を特集したタブロイド版16ページの情報誌と、そこに登場した生産者が収穫した「食べもの」がセットになって、月額2,580円(税・送料込み)で、消費者の手元に届く。「生産者の思いを届ける」のに、一番説得力がある方法は、その人が作った(獲った)食材を情報とともに直接届けることだと考えた。もともと新聞記者志望だった自身が取材交渉から行い、生産者から聞いた話を8,000字にまとめる。生産者の物語と、そこで語られる食材が送られてくるスタイルが好評を博し、毎号用意する1,500部は完売が続く。創刊間もない頃は、新しい形ならではの困難も。作物は自然が相手。気候の変化や災害で、どうしても予定の数を確保できず、発送が遅れたこともあったが「事情を誠実に伝えることで、読者の農作物に対する理解も進んだ」。今では「自然の状況に合わせることが楽しみ」という生産者を応援する姿勢で、到着を心待ちにしてくれる読者もいる。生産者に直接コンタクトをとる読者も現れた。「生産者と消費者をつなげたい」という思いは、全国に伝わり「東北食べる通信」創刊から4年経過した2017年7月、全国39ヶ所で各地の「食べる通信」が発行されている。「食べる通信」の活動を通して、高橋さんの中に芽生えた「一次産業を情報産業に変える」というミッションの次のステージが「ポケットマルシェ」。全国の生産者と消費者がつながる、新しいマーケットプレイスだ。

都市と地方を“かき混ぜる”

かつて、東北にはその土地ごとに伝統芸能があった。その数は1,000を越すと言われている。伝統芸能は、豊作への祈り。食べること、生きることへの願いを表わすもの。われわれ日本人が食物を大切にしてきた証でもある。
「今、自分たちが生きるこの時代であっても、食物を大切にする心は受け継いでいくべき」。
人が80年生きるとして、1日3食。8万7,600回の食事。「限られた食事の中で、時折、食材やその生産者に思いを馳せることは、自分自身が生かされている実感を取り戻す機会にもなる」。人は一人では生きていないのだ。
地方創生が叫ばれる今日だが、高橋さんは「地方だけでの自立は不可能」だと考える。「都市と地方を“かき混ぜる”」という表現で、両者が併存することの重要性を訴える。
震災は都市住民の意識を変えた。ボランティア活動を通して、自ら足を運ぶことで、命の源である食糧供給地としての地方の重要性を知った人も多かった。
「都市が頭なら、地方は体」。両者が手を携えあう、その在り方のひとつの姿を「食べる通信」で提示した高橋さん。今よりもっと、生産者と消費者の距離を縮めることと、交流を深める機会の創出を「ポケットマルシェ」というサービスで実現していく。

■ポケットマルシェ

  • LINE
  • twitter
  • facebook
  • Google+
  • Hatena
  • Pocket

関連記事

カテゴリー一覧