マルシェ出店から体験農業コーディネート 情報発信まで
食彩ネットワークでどんな活動をしているのでしょうか。
「『三浦半島 食彩マーケット』の活動の柱は三つあります。
一つ目は、京浜急行横須賀中央駅のリドレ横須賀という商業施設で、毎週第3土曜日に行っているマルシェです。これは食彩マーケットが主催していて、『三浦半島 食彩マーケット』の名前で開催しています。これ以外にも、他の団体が主催するマルシェやイベントに出店することもあります。
二つ目は『観光』で、三浦で農業、漁業体験をしたいといった問い合わせの対応を行っています。特に最近は、県内外の中学校から「農作物の生産現場を実際に見学したい」という問い合わせが増えています。見学希望の人数は20名から180名までと幅広いのですが、ツアーコーディネートを旅行代理店と共同で行います。
そして三つ目は『情報発信』です。メディアの取材対応のほか、インターネット、アプリ、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの運営も含めた情報発信を行っています。最近では会員の方と一緒にアプリを開発したり、農産物加工品のパッケージデザインを請け負ったりする仕事も行っています」。
「食彩ネットワーク」誕生のきっかけは直売所案内アプリの開発
「三浦半島 食彩ネットワーク」設立の経緯を教えていただけますか。
「東京で紙媒体の編集の仕事をしていたのですが、インターネットメディアの時代がやってくると実感し始めた2000年ごろから、東京での忙しすぎる生活から離れて暮らしたいと思うようになりました。そこで2010年に三浦半島に引っ越し、その後プログラマーとして独立しました。
移住してきてから、三浦にはバラエティに富んだ野菜の直売所や朝市が多いことに気づきました。三浦半島の中でも地域によって採れる作物が異なりますし、2013年に、三浦野菜の魅力をいろんな人にもっと知ってもらいたいと思ったのが最初のきっかけです。
妻(当時は結婚前)が協働パートナーとなって、『おいしいを探そう!三浦のおやさい』という直売所の場所を案内するアプリの制作を開始しました。
しかし直売所を探すにもなかなか情報がなく困っていたところ、現在の食彩ネットワーク会長である高梨農場の高梨雅人(たかなしまさと)さんから、「活動はしていないものの、三浦半島の食材を直売する組織がある」と教えてもらいました。そのメンバーに取材して、情報を掲載していき、ようやくアプリが完成しました」。
「ちょうど三崎開港祭というイベントがあり、アプリの宣伝もかねて特設マルシェに出店しようと、取材した農家や漁師さんたちに野菜や海産物を出品してもらい、販売を行ったのです。
このイベントが予想以上に好評だったことから、その組織役員会から『団体を一度仕切り直して、新しいネットワークを作り事務局をやってくれないか』と依頼されました。
ただ、私は任されるのであれば、利益も出て意味のある事業として回したいと思っていました。そのためには、食に関する情報を発信したり売ったりするスキルも必要で、農家だけでなく、飲食店やWebサイトの制作ができるクリエイターなど、異業種の方々を巻き込んだ新しい団体にしようと思ったのです。そうして、2014年2月に『三浦半島 食彩ネットワーク』を立ち上げて、事務局の任につきました」。
異業種のメンバーだからこそ広がる活動
活動の内容はどのように決めているのですか。
「現在、食彩ネットワークには25人ほどの農家や漁師、精肉店や飲食店、料理研究家などが会員となっています。一時は、イベントへの出展など周りからのオファーを受けているだけの状態が続き、このままだと活動も停滞してしまうと思ったことがありました。
月に一度の定例会で、私や妻がファシリテーター(進行役)として消費者の生の声を聞きたい、新しい商品開発がしたいといった会員の方たちの想いを汲み取るようにしています。そのような意見から、食彩ネットワークが主催者となってマルシェやイベントを企画するようになり、活動が活発化してきました。
年齢層も業種も異なる会員から意見を出してもらうということは、私たち夫婦が農家の仕事をしているわけでもなく、三浦半島出身者でもない“よそ者”だったことも幸いしているのかもしれません」。
「三浦半島の食に携わるプロの方々の仕事について、魅力を伝えられるよう食彩ネットワークの活動を行っていますが、少しずつ名前が知られるようになってきています。マルシェなどイベントのことも、農業、漁業体験も、メディア発信も『三浦半島の食に関することなら食彩ネットワーク』というように、ひとくくりで認知されてきたことにとても可能性を感じています。
当初このプロジェクトは、『地域のために何かやりたい』と常々考えていた妻にけしかけられて始めたところもあるのですが、食彩ネットワークの活動を続けていくことで、やりがいや面白さに気づいて、どんどんモチベーションが上がってきたというのが本当のところです。我々のような、農業とは異なる職種の人間が関わることで、農業や漁業のこれまでとは違った見せ方ができるのは面白いですね。これからも三浦半島の「食」と「職」の魅力を伝えることを基本に、他の地域の方と交流したり、「おもしろさ」や「楽しさ」で共感できる新しいネットワークを広げていきたいと思っています」。
「よそ者」として三浦半島にやってきた桑村さんご夫妻ですが、地元の人達の信頼と実績を着実に築いています。異なるジャンルのスキルをもった人材が農業や漁業に携わることで見えてくる『新しいまち作り』の可能性を感じます。
三浦半島 食彩ネットワーク
https://miura-shokusai.net/