サトイモの原産地と品種
サトイモは、独特の粘りがおいしいサトイモ科サトイモ属の野菜です。近年、一般家庭での需要は低迷していますが、和食業界など、プロフェッショナルの間では根強い人気を誇ります。
原産はマレー半島付近の熱帯地域で、その周辺では現在もサトイモが主食なのだそうです。
サトイモの株の中心には大きな親イモがあり、そこから子イモ、孫イモと増えていきます。親イモは食用に向かず、子イモを食べる「子イモ用品種」、親イモを食べる「親イモ用品種」、親イモも子イモも食べる「親子兼用品種」の3種類に分類できます。植物学上は、「葉柄用品種」も存在します。
鮮度のいいおいしいサトイモの見分け方
鮮度のいいサトイモは、泥付きの場合、皮が茶褐色で少し湿っています。皮に傷やひび割れがなく、固くしまったものを選ぶようにしましょう。泥が落とされているときは、皮の縞模様がはっきりと見えるものがおすすめです。避けた方が良いのは、日焼けして緑色がかったもので、品質があまり良いとは言えません。
サトイモの栄養
サトイモのおいしさの理由の一つが、独特の粘りです。これは、ガラクタンという食物繊維の一種が含まれているためです。胃腸の粘膜を保護し、血糖値の上昇を抑える役割があると言われています。
またサトイモにはカリウムが多く含まれるため、体内の水分量を調節し、ナトリウムの排出を助け、むくみの予防や高血圧を防ぐ効果が期待されています。高カロリーのものが多いイモ類の中で、もっともカロリーが低いのがサトイモです。余分な脂質を排出し、整腸作用のある食物繊維も豊富に含まれています。
サトイモの保存方法
サトイモは熱帯原産の野菜なので、寒さに弱く、摂氏5度以下の場所に長く置くと低温障害を起こして果肉が変色することがあります。
家庭で保存するときは泥がついたまま新聞紙に包み、乾燥しないように気をつけながら常温で保存するようにしましょう。サトイモの水分によって新聞紙が湿り、そのまま放置するとカビ臭くなってしまうことがあります。サトイモが水分を多く含むようなら、1時間ほど天日干ししてから新聞紙に包んで保存すると良いでしょう。
サトイモの旬の時期
サトイモは年中需要があるため通年市場に出回っていますが、品種によって旬の時期が変わります。「石川早生(わせ)」は7月から8月の夏、「土垂(どだれ)」は秋冬、「京芋」は1月から2月など、時期も大きく異なります。
サトイモの下準備
ぬめりがない煮物にする場合は、皮をむき、たっぷりの水に入れて煮立てます。吹きこぼれそうになったら火を止めて、流水で洗い流し、ぬめりを取ってから煮汁で煮るようにしましょう。
うま煮のように少量の煮汁で煮込む場合は、塩を振ってもんでから表面のぬめりを水洗いするだけでも、ぬめりを抑えることができます。
サトイモを煮るとえぐみを感じることがありますが、これはサトイモに含まれるチロシン由来のホモゲンチジン酸やアクの成分であるシュウ酸が原因です。下ゆでしておけば、えぐみや苦味を抑えることができます。
サトイモをおいしくするワンポイント
サトイモをむいている時に手が痒くなってしまうのを防ぐには、一度サトイモを洗って少し乾かすのがおすすめ。かゆみの原因である、ぬめりの発生を抑えることができます。
きれいに皮をむきたいときは、上下を切り落として、包丁のむきを縦に揃えてむくと綺麗に仕上がります。「六方にむく」と呼ばれるこの切り方は、切り口が六角形になる技術で、和食でよく使われます。
どろっとしている部分を切り取り、カビがついている場合は、かたく絞った布巾で拭き取りましょう。傷がひどいものは、煮えにくくおいしくないので使わないようにした方が良いでしょう。
サトイモの種類
サトイモにはたくさんの種類があります。その一部をご紹介します。
京芋
太く長い見た目が特徴で、別名「タケノコイモ」と呼ばれています。ホクホクと仕上がるので煮物に向いています。
ヤハタイモ
楕円形をしていて強い粘りがあります。山梨県甲斐市八幡地区の地方品種で、郷土料理の「のっぺい汁」に欠かせない食材です。
ハスイモ
高知県で主に生産され、葉柄を食べる品種で、断面は白くスポンジ状になっています。シャキシャキとした歯ごたえがあり、刺身のつまや汁物、すき焼きなどに使われます。
八つ頭
調理した際、粘りが少なくほっくりとした食感に仕上がります。親イモと子イモが塊状につき、ごつごつとした形が特徴です。
セレベス
赤みがあり、ぬめりがあまりありません。子イモ用品種のひとつです。
煮物や汁物、ソテーのほか、サトイモの炊き込みごはんもおいしいメニューです。素朴な味わいですが栄養も豊富で健康に良い食材なので、ぜひ食卓に一品サトイモ料理を加えてみませんか。
参考: 「野菜と果物の品目ガイド〜野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)