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沿線の土地を有効活用 関西私鉄各社が「農業ビジネスに参入」

沿線の土地を有効活用 関西私鉄各社が「農業ビジネスに参入」

最終更新日:2018年09月06日

関西の私鉄各社による農業ビジネスが広がっています。日本の農業や地域の活性化、安心・安全な食の提供などを目指し、各社が農業へ参入している背景には、耕作放棄地や高架下といった未活用地を沿線に多く所有していることが影響しています。農園運営などを開始している南海電気鉄道株式会社、阪神電気鉄道株式会社、近鉄不動産株式会社の3社に話をうかがいました。

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沿線の耕作放棄地を農業に利用 地域活性化を目指す「くらし菜園 羽倉崎」(南海電鉄)

南海本線羽倉崎駅から徒歩約20分の場所にある「くらし菜園 羽倉崎」では、農業の知識や習熟度、目的に合わせて農業体験ができます。沿線では豊かな農村地帯が広がっていますが、農家の高齢化や後継者不足が課題です。今後、さらなる耕作放棄地の増加が予想される中、「土地を活用し、人々が集まる場を提供するとともに、地域の魅力発信を通じた沿線活性化を目指したい」と、南海電気鉄道株式会社が株式会社泉州アグリとパートナーシップを結び、2017年4月に開設されました。

未経験者でも安心して参加できるのが「体験コース」です。プロの農家の指導のもと、手ぶらで自分のペースで農業を体験できます。また、既に家庭菜園等を楽しんでいる方や、就農を考える方向けには「週末農園塾コース」が用意されています。専門家による座学と実習の指導12回がセットになっており、農業の基礎知識と技術を身につけることができます。利用者は、「家族に安全なものを食べてほしい」「農作物が出来る過程を子供たちに伝えたい」といったヤングファミリー層のほか、「定年後は郊外で農業をしながら生活したい」「農地購入や就農を検討している」というシニア層、「自分で食べるものは自分で作りたい」といった農に関心がある女性など、幅広いのが特徴です。

沿線外からの利用者も増えており、これまで南海鉄道沿線に来る機会が少なかった人が、新たな魅力を発見するきっかけにもなっています。

2017年11月5日には、南海高野線三日市町駅からバスに乗って行ける場所に「くらし菜園 沿線ファーム河内長野」が新たに開設され、「小麦プロジェクト」が開催されています。プロジェクトでは、小麦の栽培に取り組んでいる河内長野市清水の里山で、小麦の種まきから収穫までの一連の流れを体験した後、人気のパン屋のオーナーシェフの指導のもと、自分で栽培した小麦を使ってパン作りを体験できます。

農業体験以外にも、様々な取り組みが行われています。南海沿線の特産品販売イベント「南海沿線のおいしさ発見!沿線マルシェ」を、難波駅で継続的に開催。当日朝に泉州近郊の農場で収穫した新鮮な朝採り野菜を中心に、泉州ブランド野菜や四季折々の旬の野菜、加工品などを生産者自らが直接販売しています。

また、よい土作りには欠かせない微生物の量や土の健康状態を把握する、立命館大学発の土壌診断技術「SOFIX技術」に関するセミナー開講など、地域とのつながりを深める試みも多くあります。

今後は、泉州、和歌山県等の沿線地域における「もの」「こと(体験)」の魅力を農業体験やワークショップを通じて伝え、大阪難波の都心から沿線地域へ交流する人を増やしていきたいそうです。様々なニーズに即した新しい農業体験コースや、沿線マルシェの更なる魅力向上などを企画しており、新たな取り組みが期待されます。

くらし菜園 羽倉崎 

大阪府泉佐野市南中安松862

http://kurashi-saien.com/

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鉄道高架下に植物工場 無農薬で育てる野菜「阪神野菜栽培所」(阪神電鉄)

阪神間において、古くから市街地化したエリアを沿線としている、阪神電気鉄道株式会社。周辺道路の渋滞緩和などのため、高架化や地下化など鉄道の立体化に早期から取り組んできました。

立体化に伴ってできた都市部の高架下の活用方法を検討する中、「消費者に近いという地の利を活かして、新鮮な野菜を新鮮なうちに届けられるのではないか」と、農業ビジネスへの参入が始まります。

2012年1月に「阪神野菜試験栽培所」を建設。さらに2014年3月に、現在の「阪神野菜栽培所」として規模を拡大して栽培を始めました。阪神本線尼崎センタープール前駅の高架下を利用した、延床面積約836平方メートルの工場は、完全人工光型の水耕式無農薬栽培の設備で、グリーンリーフとフリルレタスが栽培されています。

農薬を一切使わず高架下で栽培された「HANSHIN清らか野菜」は、汚れがついていないため、洗う手間が省け、鮮度が長持ちします。また水耕栽培のため、えぐみが少なく葉がやわらかいのだそうです。

阪神電鉄沿線の百貨店やスーパーで販売されているほか、ホテル、レストランなどで食材としても利用されています。「どんな料理にも合わせやすい」「きれいな野菜で、土がついていないのがいい」「品質・価格が安定しているので使いやすい」「外葉から食べられるので、廃棄する部分が少ない」など好評です。

「今後は、栄養価の高い品種や、露地では通年栽培が困難な品種等の栽培にも取り組み、安全・安心で新鮮な野菜をご提供する農業ビジネスを更に展開していきたい」と話しています。

さらに、高架下等の低利用地の有効活用を図る手法の一つとして取り組んでいるのが、2015年11月より始めたシイタケの原木栽培です。可能な限り初期投資を抑え、ビニールハウス2棟と約4,500本の原木を用いて栽培。新鮮な産地直送の原木シイタケというだけでなく、味、香りなども高評価を得ているそうです。温度や湿度によって収穫量が変化するため、1年を通じて安定させることが難しいですが、今後は空調管理で収穫量を安定させ、販路拡大を目指します。収穫量に余裕ができれば、シイタケ狩りも検討しているそうです。

阪神野菜栽培所

兵庫県尼崎市水明町373-6

https://www.b-mall.ne.jp/t/2701/565578/

植物工場のある住宅地で安心・安全な野菜を提供「近鉄ふぁーむ 花吉野」(近鉄不動産株式会社)

近鉄吉野線福神駅のすぐ近く、奈良県吉野の自然豊かな土地にある住宅地内に農業施設「近鉄ふぁーむ 花吉野」があります。栽培面積約210平方メートルの完全人工光型の植物工場と、栽培面積約5,300平方メートルの農業用ハウスの2つからなる施設です。「日本の農業が抱える様々な課題を解決し、沿線のみならず国全体の農業活性化に貢献したい」と、2007年頃から農業ビジネス参入に向け、検討が進められてきました。

農産物の生産に取り組みながら、農業活性化に向けた具体的方策を検討していくという方針が決まり、まずはパイロット事業として2012年に「近鉄ふぁーむ 花吉野」が誕生しました。

植物工場では、培地にウレタンスポンジを使用した水耕栽培システムを用いており、主にフリルレタスを栽培しています。栽培期間中は農薬不使用で、季節や天候に左右されず計画生産が可能。フリルレタスの場合、播種から約35日で収穫できるそうです。農業用ハウスでは、特殊なフィルム農法を採用し、ミディトマトを栽培。地域の慣行農法に比べて、農薬の使用回数を削減することができるそうです。水分ストレスをかけて糖度を高くした「ごちそうトマト」は、「うちの子どもはトマトを食べないけれど、近鉄さんのトマトだけは食べる」という消費者からの嬉しい声もあるそうです。

農作物は、近鉄グループのスーパーマーケット、ホテル、レストラン等へ提供されています。また、2016年9月に運行を開始した観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」のラウンジ車両でも、お土産用としてごちそうトマトが販売されています。安定した収穫量の確保や、フリルレタス以外の栽培品目を増やすなど課題もあるようですが、販売店や消費者からの評価も高く、今後はさらなる販路の拡大を目指します。さらに「日本の農業を活性化していくため、近鉄グループの強みを活かしながら、沿線農家が手軽に利用できる栽培システム等の新たな事業プラットフォームの構築を目指していきたい」と近鉄不動産株式会社の担当者は話しています。

近鉄ふぁーむ 花吉野

奈良県吉野郡大淀町大字福神

http://kre.lekumo.biz/hanayoshino/

関西の私鉄各社による農業ビジネスへの参入は、未活用地の利用というだけではなく、地域の交流や活性化、安心・安全で新鮮な食の供給など、多方面の活動につながってきています。

鉄道会社の強みを活かした取り組みは、今後もさらに広がっていきそうです。

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