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畜産する都立高校 覚悟を持って動物に愛を注ぐ畜産科学科の実習

畜産する都立高校 覚悟を持って動物に愛を注ぐ畜産科学科の実習

最終更新日:2018年09月11日

都立瑞穂農芸高校にある東京で唯一の畜産科学科は、さながら山間の小さな農場です。牛舎、豚舎を中心に放牧場や作物を育てる畑、堆肥を作る場所も設けられており、生徒たちは動物の世話をはじめ、多岐にわたる農作業のほとんどを自分たちで手がけています。恵まれた環境の中で毎日動物と触れ合い、生徒たちは畜産科学科でどんなことを学び取っているのでしょうか。

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酪農類型の実習 乳牛の世話と生乳の提供

畜産

酪農女子に訊く

「動物が好きだから、動物に関わることをやりたいと思って入学しました。最初は牛の大きさにびっくりしたけど、すぐに慣れました。今はかわいいいですよ」。
取材インタビューに対して、屈託なくそう語ってくれたのは、畜産科学科3年生の高原さん。彼女は酪農類型の生徒で、瑞高祭では同類型のリーダーを務めました。

類型専門コース

ここでいう「類型」とは専門コースのこと。畜産科学科では1年生で農業全般について学び、畑仕事をして農作物を育てたり、トラクターなど農業機械の操作も習得します。そして2年生から酪農・養豚・実用動物の各類型に分かれ、専門的な体験学習を行います。
実用動物とは同校が平成5年から設けている、イヌ、サル、モルモット、フェレット、マウス、ウサギといった愛玩動物や実験用動物で、繁殖技術の基礎などを学びます。それを活かし、ペット関連の職場や専門学校、研究員養成施設などに進む生徒もいます。

生乳は「東京牛乳」に

例えば高原さんの選んだ酪農の場合、毎朝7時半から牛舎で管理作業を開始。一旦教室に戻った後、1時限目の最初に搾乳実習。搾った生乳は、集乳車が集めに来るまでタンクに保管します。そして放牧、給餌、掃除、夕方の搾乳と、普通の酪農農家と変わらない作業を平日は5~6人、休日は3~4人の当番制で行います。
こうした毎日の管理・搾乳はもとより、直腸に手を入れて子宮はどこかを探ったり、人工授精を行ったりする実習もあります。
生徒が搾った生乳は、多摩・八王子地域の酪農農家の生乳を原料とする「東京牛乳」(協同乳業(株)による東京都地域特産品認証商品)になります。もちろん相応の報酬も得られます。この収益は畜産科学科運営の貴重な財源になります。

生産品の収益は運営費に

畜産

実業意欲向上プログラム

ここでは動物は必要教材。1学年35名の生徒たちが全員、自ら体験できないと授業になりません。そのため、最低限の頭数を確保し、養うためのエサ代、飼育用施設とその管理費用など多大な経費が必要になるのです。
学校で生徒が生産したものを販売すると、その収益金は東京都に入りますが、都では畜産科学科運営の必要経費に理解を示し「実業意欲向上プログラム」を実施。通常予算とは別枠で、生産力・販売実績への評価として、収益全体の半額を学校に還元する仕組みです。
毎日搾る生乳をはじめ、食肉用の豚の出荷、加えて堆肥の販売などによって、近年は学校全体で年間950~1,000万円を得ており、生徒の勉強と労働を兼ね合わせた活動が、学校運営を支えていると言っても過言ではないでしょう。

養豚類型の実習 豚の種付けとブランド肉の研究開発

畜産

養豚男子に訊く

もう一人、取材インタビューに応じてくれたのは養豚類型3年生の田所さんです。
授業では子豚の耳刻(個体を識別するための印)、去勢(雄の睾丸の除去)、そして種付けなどを実習。オス豚とメス豚をコントロールして自然交配させる方法や、人工授精のやり方を学びます。

「お茶豚」の開発に挑戦

また、彼は西多摩地域の名産品である狭山茶の廃棄分を餌として豚に与え、この地域ならではの付加価値のあるブランド豚肉を開発するというプロジェクトに挑戦しました。
茶葉を食べさせると、カテキン成分が肉のコレステロール値を下げ、臭みを減らし、肉質向上に役立つと言うのです。
生徒間で試食した結果、あっさりしている、臭みが少ないといった評価が得られ、実験成功。研究発表を行い、レポートは記録資料として学校に保管されます。いつかこの試みが活かされ、「東京お茶豚」といったブランド肉が市場に出回る日が来るかも知れません。

「産業動物」という意識を持って関われるか

畜産

校長に訊く 覚悟を持って関わる

インタビューした2人をはじめ、畜産科学科に入学するのは、やはり動物が大好きな生徒ばかり。「愛情をもって関わるのは大前提ですが、難しいのは」と話してくれたのは、小堀紀明(こぼりのりあき)校長です。
難しいのはそうした生徒らに牛や豚などの動物は皆、人間の生活に役立てるための「産業動物」だと強く意識させること。感情のバランスを取り、覚悟を持った上で関わらなくては、勉強も将来の仕事もできません。これは感受性が豊かな若い人たちにとって、そう簡単なことではないでしょう。
しかし、楽しそうに動物と関わり、そこで行う仕事をしっかり説明する生徒たちを見ていると、やはり彼らは畜産の専門家になる資質を持っているのだと頼もしく感じます。

若い力が地域の農業にも活力を

同校の卒業生の中には教員として、実習の指導者として、あるいは地域の農家の一員として後輩たちの育成に関わる人も少なくありません。そうした強い先輩・後輩の絆の中で長年築かれてきた瑞穂農芸・畜産科学科の伝統。代々重ねられてきた果敢な試み、若々しい発想や熱意が、地域の農業にも目に見えない、大きな活力をもたらしていることは間違いありません。

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