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東京のど真中で脱穀機が唸る 筑波大附属駒場中高校の米づくり:脱穀編

東京のど真中で脱穀機が唸る 筑波大附属駒場中高校の米づくり:脱穀編

最終更新日:2018年09月07日

東京・世田谷区にある筑波大学附属駒場中・高等学校では、前身である東京農業教育専門学校附属中学校以来の伝統を引き継ぎ、水田・農業を重要事項に置いて教育を行っています。稲刈りから1カ月後、中学1年生の生徒たちは、校内で脱穀作業を体験。わずかな種籾から育てた稲が無数の米に変わるのをその手でしっかりと確かめます。

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脱穀作業を必ず経験

校庭に溢れる農村のイメージ

 脱穀とは稲穂から米粒の入っている籾を取り出す作業。人の手だけで籾を取るのは大変な仕事なので、脱穀機を使います。そのエンジン音を聞いたことがありますか?ブルブルブルという、あまりシャープとは言えない、どこかのんびりした感じの音から広がるイメージは、青く晴れ渡った秋の空のよう。

その青とコントラストをなす稲穂の黄金色。その二つの色に彩られた長閑な農村の風景です。そのイメージが渋谷に程近い、東京のど真中にある筑駒中高校の校庭に溢れます。

農業から想定外の状況に対処する力を養う

 10月14日(土)に刈り取った稲は約1カ月間、稲架掛け台で天日干しに。そしてこの11月16日(木)に脱穀を実施。学校のスケジュール上、毎年この日程は大きく変えられませんが、今年(2017年)のように天候が不順だと調整するのが大変です。しかし悪天候という想定外の状況でもやるべきことをこなし、普段と同じレベルの能力を発揮するのも将来的には重要なこと。自然相手の農業からはそんな力も養えます。

脱穀機に掛ける

 朝8時半から作業開始。手順や注意事項の説明が終わると、生徒たちが稲架掛け台から稲束を降ろして、それぞれ手にします。水田委員の生徒がその稲束を広げ平らにならして脱穀機に掛けると、選別された籾米が機械の後ろにある口から勢いよく吐き出され、みるみる容器はいっぱいになっていきます。手に残った稲わらには、まだ少し籾米が残っている場合が多いので、最後にそれらを手できれいにこそぎ取ります。この籾米はもち米です。

完了するのは日暮れ前

この作業を中学1年生3クラス123名、高校1年生41名が行います。同校は中高一貫校ですが、高校から入る米作り未体験の生徒が1クラス分いるので、彼らも参加。つまり6年間でも3年間でも在学する生徒全員が、必ず一度は米作りの全工程を経験することになるわけです。作業中、脱穀機が詰まって10~20分間停止してしまうこともしばしば。そのため一日作業になり、完了するのは日暮れ前になるとのことです。

水田委員の生徒にインタビュー

伝統がかっこいい

「思い出のある稲。自分が食べることも、次の入学生に配ることも楽しみ」と話してくれたのは、皆が脱穀機に持ってくる稲束を広げて平らにする仕事(これをしないとすぐ機械に詰まってしまう)を担当した水田委員です。毎年、中学1年生は4月の入学時、前年の1年生が作った米で炊いた赤飯を入学祝としていただくのですが、彼はその赤飯を食べ、こういうものを代々作っていくという伝統がかっこいいと思った、と語ります。

稲刈りや脱穀をやることが嬉しい

幼稚園・小学生の頃から筑駒生と一緒にケルネル田圃で田植えをし、かかしコンクール(目黒区主催)で賞も獲得。幼い頃から同校の農作業に身近に接してきた彼は、さらに「自然に触れることは精神的にもストレス解消になる大事なこと。この学校で稲刈りや脱穀をやること自体、僕にとっては嬉しい。将来も稲刈りをやりたい」とも。他の水田委員も口をそろえて「大変な作業」「もっと楽なものと思っていた」「手作業で籾を取るので指先が痛い」と、しきりに大変さを強調しましたが、その表情は皆、清々しさに溢れていました。

卒業・入学のお祝いと次世代への継承

餅と赤飯

インタビューの中でも出ましたが、脱穀された米はこの後、高校1年生が籾すりをして玄米にし、さらに業者に依頼して精米に。年末の期末試験終了後に生徒たちが餅つきをして、成果をみずからの舌で味わいます。そして3月に卒業生へ、4月に新入生へ贈る赤飯にします。

田植えに持っていく苗づくり

米づくりは播種(種を播く)作業から始まります。毎年新しい中学1年生、高校1年生が自動温度調整・自動散水ができる温室で苗を作ります。田植えを行う5月下旬を目途に40センチ程度の葉を伸ばすまで育成。その瑞々しく美しい緑は、学校のシンボルの一つにもなっています。こうした1年間の米サイクルが学校創立以来、ずっと繰り返されているのです。

教員も農業を体験し学ぶ

「脱穀機は昭和時代から使ってきたもの。仕組みが見える、昔ながらのやり方で進めているのには意味がある」と語るのは水田統括者の先生(技術科)。同校の先生方も生徒同様、ここに来て初めて農業を体験し、学ぶという人がほとんどです。そしてまた、ほとんどの人が大いにそれを楽しみ、米作りの伝統に愛着を覚えるようになると言います。

伸びしろの大きい人材を育む農業教育

一つ一つの工程を踏まえ、汗を流し、土や泥に触れながら米を生み出す。現代では得難くなったこの貴重な体験は、若い心と頭脳に何を刻むのでしょうか。その教育効果を数値化するのは不可能ですが、本物に携わることで、詰め込み教育では得られない様々な能力が培われることに学校は信念を持っています。

農業体験によってもたらされる力は長期的なもの。おそらく大学入学後、あるいは社会に出てからの能力の伸び・展開にあらわれるのではないでしょうか。

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