労作歌を口ずさめば士気が沸く
農業の際に使う曲は「労作歌」といわれ、さまざまなものが口ずさまれてきました。けれども、「ソーラン節」など漁業の民謡と比べて、一般的に知られているものは少ないようです。それでも、農業と音楽との関わりは深いといえます。農作業にまつわる音楽が生まれた理由としては、単純作業を繰り返す動作や、共同作業を効率的に行うためだといわれています。
アメリカの労作歌「プランテーション・ソング」
農業と音楽とが密接な関係を持つのは世界中同じ。なかでも有名な歌の一つが「プランテーション・ソング」です。その名のとおり、アメリカの開拓時代において、大規模な農園で働かされていた黒人たちが歌っていたもので、「スレイヴ・ソング」と呼ばれることもあります。
プランテーション・ソングは、アメリカ南部の農園で働く奴隷たちが生み出しました。黒人奴隷たちが、厳しい労働環境下で自然発生的に生み出した歌は当初「ニグロ・スピリチュアル」とも呼ばれていました。ほとんどの曲が作者不明で、つらい状況の下で歌われていました。そして、南北戦争を通じて広く知られるようになり、やがてゴスペルなどの源流として脈々と育っていきました。
灼熱の太陽の下でも懸命に生きる人々の様子が、力強い音楽としていまも息づいているといえるでしょう。
農業学生なら知っている 「FFJの歌」がバズった?
先日、「全国の農業高校で受け継がれている歌がある」事実がTwitter上での発言から話題になり、またたくまに拡散されました。
その歌こそが「FFJの歌」。ほとんどの人は聞いたことがない歌ですが、農業系学科の出身者であれば知らない人はなく、つい口ずさんでしまう曲だそうです。
この曲は、農業系学科がある学校の「農業クラブ」の組織である「日本学校農業クラブ連盟」によってつくられ、農業クラブの大会が開催される際に歌われているそうです。ちなみにFFJは、日本学校農業クラブ連盟の英語名「Future Farmers of Japan」の略称です。
歌は1950年の結成の翌年、1951年に制定されました。歌詞は全国のクラブ員から公募し、作曲は堀内敬三氏が手がけました。堀内氏は「蒲田行進曲」や「ラジオ体操の歌」などを作曲した人物です。明るい曲調の歌と覚えやすい歌詞で、農業学生でなくとも、つい歌いたくなるような曲に仕上がっています。サビの「エフ・エフ・ジェ~」が特に印象的で耳に残ります。
農業に携わり始めて間もない若いころに同じ道を志す仲間と歌った曲は、これからも脈々と歌い継がれていくでしょう。
古い民謡や音楽の源流になった歌、学生時代の懐かしい歌など、農業のあらゆる場面で歌は欠かせません。今回紹介したものはほんの一部。あなたはどのような「農業うた」を歌っていますか。音楽のリズムは、大変な作業を調子を取りながらはかどる作業に変えてくれる“お守り”のようなものかもしれません。
上記の情報は2017年12月20日現在のものです。