イチゴの特徴と育てる際の注意点
イチゴは植えつけ苗から病気や害虫を持ち込むことが多く、草からもハダニやオンシツコナジラミが移ってきます。実が地面に接すると、うどんこ病や灰色かび病が発生するので注意が必要です。
アブラムシやハダニは、コレマンアブラバチやチリカブリダニ、ククメリスカブリダニといった天敵を利用した防除システムが確立しています。また薬剤散布をする場合は、葉裏や地面に接する部分を重点的に行ってください。
イチゴがかかりやすい病気
うどんこ病
小麦粉のような灰白色から白色の粉状のかびが発生する病気。イチゴの葉裏や実を覆い、光合成を阻害、生育に被害を招きます。
イチゴの残渣(ざんさ)※で越冬し、18~25℃の温度でよく発生しますが、露地栽培ではあまり見られません。堆肥の施しすぎに注意し、窒素過多にならないよう適切に行うことが防除のポイントです。被害を見つけたら白いかびを落とさないように被害葉を取り除きます。
※残渣…溶解・ろかなどのあとに残った不溶物。
炭疽病(たんそびょう)
くさび形にくぼんだ黒褐色の病斑ができてひどくなると黒点が現れて穴があいて、しおれて枯れることもあります。
25~28℃が適温で、梅雨時期から秋にかけて発生がピークとなります。特に「女峰」や「とよのか」などの品種に感染しやすいので、注意が必要です。
土壌消毒をして水はけのよい土づくりをし、多湿状態にならないよう心掛けることが防除のポイントです。発病してしまったら症状が出ている部分を取り除くか、株ごと抜き取ることで被害を最小限に抑えましょう。
灰色かび病
水のシミのような病斑に灰色の粉状のかびがつき、腐ったような状態になっていきます。施設栽培で多発する病気で、20℃の多湿状態や収穫前に発生しやすいのが特徴です。
発生した際は、すぐに被害部分を取り除かないと伝染するので、葉や実をこまめにチェックしましょう。ビニールマルチをして下葉を取り除くことが防除のポイントです。
病気と勘違いしやすい症状
病原菌や害虫が原因ではなく、植物の生育に異変が起こる現象のことを「生理障害」と言います。その原因は「栽培環境」と「栄養分」の2つに大別され、それぞれの不足や過多によって様々な症状が起こります。
イチゴの葉は、カリウム欠乏やマンガン欠乏によって葉色が変わるなどの変化が現れます。生理障害か病害虫の被害なのか疑わしい時は、栽培環境と施肥を改善しましょう。病害虫が原因ではないため殺菌剤や殺虫剤は効きませんが、症状の元となる要員を改善すれば症状の悪化を食い止めることができます。
なお、生理障害が起きるような環境は、病害虫の被害が起こりやすい状態です。両方が原因となって進むこともあるので、日当たりや土壌の水分など、栽培環境の見直しが必要になります。
イチゴに寄せ付きやすい害虫と対処方法
クルミネグサレセンチュウ
近年、被害が目立ってきた土壌中のみで生息する害虫です。根から盛んに侵入し、養分を吸収します。そのため、根腐萎凋症を引き起こし、収穫期に被害が拡大します。
土中密度が高い土で連作すると増殖するため、被害の出る植物の連作は避け、土中密度を下げる効果があるマリーゴールドやギニアグラスを間作に栽培することが防除のポイントです。
ハスモンヨトウ
年4~5回の発生で周年食害する害虫。秋には幼虫が集団で食害するので大きく穴が開きます。幼虫は緑色から次第に黒褐色へと変化します。防虫ネットのトンネル栽培や黄色灯の利用が効果的です。
また、ハスモンヨトウは薬剤抵抗性が高いので、幼虫が小さいうちの防除が大切。幼虫が分散する前に捕殺するか、BT剤を散布することで被害を食い止めましょう
ワタアブラムシ
葉裏や新芽に群生するアブラムシの一種。吸汁し生育を妨げるだけでなく、甘い排泄物をねらうアリが寄ったり、すす病を発生させて光合成を妨げたりするなど、二次被害を引き起こします。
対策としては、防虫ネットのトンネル栽培が有効です。また、天敵であるテントウムシ類やヒラタアブ、アブラバチなどに住処をつくらせ攻撃させます。増殖のスピードが早いため、定期的にチェックし、早期に発見することが大切です。
施設栽培では抵抗性のある個体の出現が見られるため、系統の異なる2~3種類の薬剤をローテーションで使用することをおすすめします。
イチゴには、他にもナミハダニやカンザワハダニ、アザミウマ、コナジラミ、ナメクジなどといった害虫も発生することがあります。
葉や花托の状態をこまめにチェックし、症状が現れたらすぐに取り除くなど、早期発見と適切な対処法をマスターすることはおいしいイチゴの生産には欠かせません。防除対策を万全にし、大切な作物を病気や害虫から守りましょう。
参考:「病害虫百科」(万来舎)