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プロが教えるイチゴの育て方 甘くする栽培方法の工夫とは?

連載企画:農家が教える栽培方法

プロが教えるイチゴの育て方 甘くする栽培方法の工夫とは?

赤くて甘い、大人にも子どもにも人気のイチゴ。家庭菜園でも人気のある作物ですが、期待して収穫してみると……「甘くない!」ということもよくあります。甘くておいしいイチゴを収穫するための育て方のコツを、栽培初心者に向けて、イチゴ農家の小島農園の小島洋一(おじま・よういち)さんに聞きました。イチゴが甘くならない原因と対処法、出てきた脇芽を取るポイントまで紹介しています!

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★今回指導してくださる農家さん★

小島洋一さん 小島洋一(おじま・よういち)さん
栃木県真岡(もおか)市で、育て方にこだわった濃厚な「とちおとめ」と「とちひめ」、「スカイベリー」を栽培しています。親子二世代で10年ほど前に就農し、土作りからイチゴ栽培に取り組んでいます。育てたイチゴは、農園での直販や一般の方を対象にしたいちご狩りのほかに、有名洋菓子店への直販も行っています。

「イチゴ農家になって10年ほどの小島です。正直に申し上げますと、私はとちおとめと、とちひめ以外の品種を栽培した経験はあまりありませんが…」と謙遜しながらも、これまでの栽培の挑戦と工夫を振り返り、家庭菜園でも実践できるコツを語ってくださいました。

イチゴ栽培のコツとは? 水やりの頻度や肥料配合まで!

栽培に適した時期

初心者には、露地栽培のイチゴの旬である5~6月に収穫できる、「一季なり」のイチゴが育てやすいでしょう。一季なりのイチゴを育てる場合、10~11月半ばに植え付けを行って、5~6月の収穫を目指します。
家庭菜園への地植えとプランター栽培、どちらでも栽培可能ですが、10月ごろに苗を購入するのが理想的です。ランナー(親株から伸びる、つる状の芽)の跡がわかるものがよいでしょう。

へそがついたランナー

土作りと肥料

イチゴを育てるには、日当たりが良く、風通しの良い場所がお勧め。そして何よりも、水はけが良いところが望ましいです。たいていの作物は、水はけが悪いと腐ってしまいます。柔らかい土であると、根が伸びやすいためなお良いです。

土作りは、できれば早めにするようにします。肥料をまいて土を混ぜてから、1か月ぐらいそのままにしておいてなじませたいです。ただ、有機質肥料、完熟たい肥の場合はそこまで効き目が強くないので、肥料と土を混ぜてから植え付けまでの間をそこまであけなくてもよいでしょう。

地植えの場合は、定植する2週間以上前に炭酸石灰(できれば、ひな鳥の餌用の粒ほどの大きさのもの)と硫酸苦土を使うとベストです。合わせて、1平方メートル当たり100gほど。苦土石灰をまくと、土のアルカリ性が強くなってしまう場合が多いので気を付けてください。
定植1週間以上前には完熟堆肥約3㎏、有機肥料100gを土全体によく混ぜて耕しておきます。肥料に直接触れるとイチゴの根は傷んでしまいます。
プランターの場合は市販の野菜用培養土を使ってください。

小島さん

私が栽培を始めたころは、「有機肥料が絶対良い!」と思っていましたが、自分で理解できている、慣れている肥料の方が楽です。
初心者の方は化学肥料を使った方が腐敗なども少なく、やりやすい場合もあるかもしれません。有機肥料のような有機物は腐るので、善玉菌と一緒にまくと良いです。最近では善玉菌もホームセンターで売っています。
アミノ酸入り肥料は、イースト菌(ドライイーストでOK)を混ぜて撒くと、悪玉菌が増えにくいです。

追肥

イチゴの場合、追肥は基本的に必要ありません。特に、これからの季節に、土作りなど栽培のための準備をするのであれば、寒い冬の間には肥料の養分が使われないまま春が来る可能性が高いです。 
春先に葉の色が黄色や黄緑色であれば、上記の有機質肥料10gぐらいを株元にやる程度がお勧めです。

水やり

水やりは土が乾いたら水をやる程度でOK。畑ならば、とりたてて雨が少ないというような場合を除けば雨水で育つので、基本的に水やりは不要です。特に冬は、イチゴの木に大きな動きが見られないはずなので、枯れてしまうほどカラカラになっていなければ良いです。
露地栽培であれば、雨に期待すれば良いですし、プランターも萎れなければ大丈夫だと思います。ただあまりに乾燥したまま氷点下の夜が来ると、木が回復できないぐらいまで凍ってしまいます。乾燥しすぎていないか、時々土を触って確かめてみてください。

小島さん

「水を切るトマトは甘い」というような話がありますよね。それを真似して、春になってから水を切ってイチゴの栽培を行いました。結果は、甘い実ができる時もあるけれど、木が弱る上に、病害虫に負けてしまい、失敗でした。春からは雨があまり降らないようであれば、水やりは行った方が良いと思います。

寒さ対策

根元にわらなどを敷いておくと寒さ対策になり、また、土の乾燥対策にもなります。わらを敷くのは、関東の場合10月上旬以降から。
品種によっても違ますが、イチゴは一般的に寒さに強く、特にホームセンターで売っているような1季なりのものはマイナス5~6℃くらいまでなら特別な措置は必要ありません。寒さを体験することで、春には花がよく咲くので、必要以上に苗を温めるのは避けます。ただし、雪には要注意! 雪に埋もれると、苗が傷んでしまいます。防雪を兼ねて、ホットキャップなどのカバーをするのも一手です。

ランナー

途中でランナーが出てくることがあります。12月~3月ごろに出てくるランナーは、元(茎から生えている部分の根本)から切るように抜きます。

手でつかんでいる左側のところに見られるようなランナーは、取り除きたいもの

なぜ甘くならないのか? 原因はここにあり!

イチゴが甘くならない原因はいくつか考えられます。

日当たり

イチゴを育てている場所の日当たりはよいでしょうか? 日照時間が長く、日当たりの良い場所で育てたイチゴは、良く育って実も甘くなります。
プランター栽培の場合、春先に暖かくなってきたら、日当たりの良い、暖かいところに置いておくといいでしょう。立地条件などでどうしても日当たりがよくない、日照時間が短いといった場合、プランターごと移動する方法を試してもいいかもしれません。

葉は適度に残す!

イチゴの葉の取り方について、葉は1本の木で少なくとも8枚ぐらい残したいです。木の勢いが強い時はもっと葉を残しておかないと、実がなるツルが途中で引っかかれる葉がなくなり、結果としてツルが折れてしまって味がしないイチゴになってしまう時があります。

肥料

有機酸、糖、アミノ酸を肥料として与えます。
有機酸はお酢や、クエン酸を水で1000倍程度に薄めて使います。糖は糖蜜(モラレス<※>、黒糖でもOK)を、同様に水で1000倍程度に薄めて使います。アミノ酸は、ホームセンターなどで売っているアミノ酸入り肥料を水で1000倍程度に薄めて使います。
約970mlの水にお酢、糖蜜、アミノ酸を1ミリリットルずつ溶かして、ジョウロで散布します。もっと薄くても大丈夫です。濃すぎる場合は、イチゴの苗にかかると萎れてしまう場合があるので注意してください。この肥料を蕾がつく頃から週ぐらいのペースで施肥します。

小島さん

アミノ酸肥料と同じように、糖蜜もイースト菌を混ぜて撒くと、悪玉菌の抑止になります。また、蕾がつくころには葉の裏に虫がつきやすいで、見つけたらとるようにしてください。

※廃蜜糖。サトウキビから精製糖を作るときにできた搾りかす。

イチゴを甘くするポイント、脇芽を取ること!

左手でつまんでいるのが脇芽

甘いイチゴを収穫するために、小島農園では摘花・摘果ではなく、脇芽を取ることを行っています。

小島さん

摘果をすべき品種もありますが、農家ではブランド価値を高めるため、小粒イチゴを出したくないがために行っている場合が多いです。摘果を行えば、小さい実はなりません。一般的な栽培でしたら、摘果ではなく脇芽をとりましょう。

芽かきというは、イチゴの木の根元から出てくる脇芽をかく(とる)ことです。芽かきをする時期はつぼみが出てくるころから行います。余分な芽をとることで、養分の無駄使いを減らします。苗の根本を確認して、脇芽を見つけたら、つまんで引っ張るようにして根元から抜きます。

芽かきをした後の状態

イチゴを自分で育ててみたい方へのメッセージ

イチゴだけではなく野菜全般に言えますが、水をやらなかったり肥料をやり過ぎたりすると、虫がつくなどコントロールは難しいですが、世話すれば世話しただけ様子が変化に富みますし、実も増えます。イチゴは、一年草の実が成るものの中でも、長い時間待たないといけないものですが、それだけに最初の一粒がなった時の感動はハンパないです! ぜひイチゴ栽培に取り組んでみてください。

小島洋一さん。「夏から土作りをして、おいしいイチゴができるように準備をしてきました!」

小島農園では、12月初旬からスカイベリー、とちひめの販売を開始するとのこと。
「イチゴ狩りは1月~5月GWまでがシーズンです。甘さが自慢のとちおとめのいちご狩りは4月が穴場。とちおとめ、とちひめは農園のある直売所での販売もしています!」
【取材協力・写真提供】小島農園

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