鳥の殺処分を減らしたい思いから作られた『ネズサル』
全国各地で猛威を振るった、2005年の鳥インフルエンザ。各地の養鶏業者やウズラ農家は、飼育している鳥を殺処分せざるを得ない状況に追い込まれ、大きな被害をこうむりました。
株式会社くればぁは、愛知県に本社のある企業です。地元の農家から鳥インフルエンザの被害状況を聞いて、「自社のメッシュ製造技術を活かして、鳥の殺処分を減らしたい」と考えるように。同年、『ネズサル』の開発をスタートさせました。
鳥インフルエンザの感染経路は主に2つあるといいます。一つは、鳥インフルエンザに感染した渡り鳥のフンを、ネズミが食べてしまうこと。そしてもう一つは、渡り鳥のフンが落ちている水たまりの水をネズミが飲み、鳥インフルエンザに感染した状態で、鶏舎に侵入してしまうことが原因だとされています。
「そこで弊社は、元々あった鳥インフルエンザ対策の防鳥ネットや、ネズミを退避させる機能を付与した亀甲金網を、養鶏場へのネズミ侵入防止ネットとして改良しました。そして、2016年に販売をスタートさせたのがネズサルです」。
ネズミが嫌いな成分を練り込んだオリジナルネット
ネズサルのネットには、ネズミの嫌いな臭いであるハーブの香りや、唐辛子やマスタード、ワサビなどの辛味成分が練り込まれています。ネズミを寄せ付けないハーブの香りと、ネズミがネットをかじった際に辛さを感じさせる2段階の対策としました。そして「ハーブの臭いがするネットは、かじると辛い」ということをネズミに学習させることで退避に繋げています。
「ネットをかじることで、ネズミがフラフラしたり、気持ちが悪くなったりする効果もみられています。ネズミは、ネットのハーブの臭いをきっかけに、ネットをかじると自分の具合が悪くなることを思い出すようになります。そのため、次に近寄った際も、ハーブの臭いを感じただけで逃げていくようになるのです」。
また、ネズサルは小さいネズミが入り込まないよう、網目の大きさを10ミリで製作しており、徹底した侵入対策が施されています。
鳥インフルエンザウイルスを破壊する成分
「ネズサルは鳥インフルエンザなど、ウイルスの表面にエンベロープと呼ばれる膜を持つウイルスの活動を、不活性化させることができます」と加藤さんは語ります。
エンベロープを持つウイルスは、エンベロープが破壊されると不活性化されます。ネズサルには、エンベロープを破壊する成分も付加されているため、鳥インフルエンザに感染しているネズミがネットに触れた際に、付着したウイルスを不活性化させることができます。
そのため、ウイルスがネットに残ることを防げるのです。(※)
ネズサルの効力は海外からも注目されています。2016年には、鳥インフルエンザが流行していた韓国から注文が殺到して対応が追い付かず、一時は注文を停止したほどだそうです。
「現在、多方面から案件も入っており、量産体制を整えているところなんですよ。ネズサルは農業分野はもちろん、工場のコードの噛害・侵入対策にも効果的です。今後は国内外問わず農業以外の業種にも目を向けて、販売していきたいと考えています」。
※インフルエンザの拡大リスクを軽減する化合物の作製に成功
『ネズサル』の効果的な取り付け方法
ネズサルは、愛知県の養鶏場や飼料業者、個人農家、JAに納品されており、利用者から多くの評価をいただいています。県外の方も、株式会社くればぁのオンラインショップから購入可能です。
では、ネズサルは養鶏場のどこに取り付けると、より効果的なのでしょうか。
「まずはネズサルを適当なサイズにカットし、鶏舎の入り口に設置します。もしくは、ネットを曲げて、卵の搬送ベルト部分に設置しても良いですね。そうすることで、コンベアベルトからネズミが侵入するのを防ぐことができます」。
ネズサルの取り付けは、針金やインシュロック(結束バンド)で留めるだけ。どんな場所承知いたしました。でも設置できるのが嬉しいところです。
さらに、ネズサルはネズミだけでなく、イタチやテン、ハクビシン、ネコ、コウモリなど、様々な動物による被害も防げるといいます。
今後は韓国や中国、タイ、インドネシアなどアジア圏をはじめ、海外各地に展開している養鶏業者向けにネズサルのロット拡大を進めることで、海外販売も視野に入れたいそうです。
ネズミによる被害防止に一役買ってくれる『ネズサル』。日本だけでなく、世界中の養鶏農家の心強い味方になってくれそうです。
株式会社くればぁ
画像提供:株式会社くればぁ