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“食べられる花束” 農家の朝穫れ野菜で作る「ベジブーケ」が可愛い!

“食べられる花束” 農家の朝穫れ野菜で作る「ベジブーケ」が可愛い!

まるで花束のように、季節の野菜を束ねた「ベジブーケ」。色とりどりの野菜やハーブ、エディブルフラワーで作るブーケは、花束に負けない美しさですが、決定的な違いは、飾って楽しんだ後に「まるごと食べられる」こと。千葉県印西市の小山美千代(こやま・みちよ)さんが、自家製の野菜を使って、一つ一つをオーダーメイドで製作しています。農家でもある小山さんに、ベジブーケを通して伝えたい想いを伺いました。

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農家の娘に生まれて-珍しい野菜の魅力を伝える


一見、カラフルな大輪で作った華やかなブーケ。近付いてよく見ると、ベースはキャベツなどの葉物、ポイントとして際立つ鮮やかなパプリカや、サンゴのような形が特徴のカリフラワー「ロマネスコ」など、すべて野菜で作られたものだと分かります。

日光の下でツヤツヤと輝くブーケは、普段気が付かない“野菜の美しさ”を教えてくれます。枝豆はスズランのような可憐さを発揮し、真っ白なカブや温かい橙色のニンジンから伸びた繊細な根も、全体に上品な効果を与えています。

このベジブーケ®は、フラワーアーティストで農家の小山美千代さんが、約160種類にもなる旬の自家製野菜から、12~15種類を組み合わせてアレンジメントを施したもの。「贈られる方の健康と、ちょっとのサプライズを意識して作っています」と、小山さんは微笑みます。

野菜ごとの形状や、追熟していくさまを目で楽しむだけでなく、「食べてもらうところで完結する」(小山さん)というのがベジブーケの最大の特長。使った野菜の品種を書いた紙を同封し、珍しい野菜にも興味を持ってもらうような工夫をしています。野菜の葉や実だけでなく、ハーブを根ごと使うこともあります。その心は、「花材としてユニークな形状ということもありますが、庭先や家庭菜園にそのまま植えてもらい、野菜作りに関心を持ってもらいたい」という、農家ならではの思いです。

小山さんの実家は江戸時代から続く農家で、1969年に両親が「伊藤苗木」を創業しました。小学校高学年から母親に連れられ、都内のフラワーアレンジメント教室へ通うなど、小さな頃から花を飾ることに親しんでいました。小学校の謝恩会では、黄色のフリージアを使って装花を仕上げたところ、周囲の評判は上々で「お花が大好き」に。

短大卒業後はインテリア業界に就職するも、花の世界への憧れを捨てきれず、アルバイトをしながら夜間学校でアレンジメントを学び、都内で花屋を経営するに至ります。その後、長女の出産を機に、脱サラした夫とともに実家へ就農。フラワーアーティスト業の傍らで行う農作業で触れる、野菜の造形美に魅了されていったといいます。

実家では、当時から希少種を含む40~50種類の野菜を作っていました。“SNS映え”がうたわれ、カラフルな西洋野菜が受け入れられる現代とは違い、就農当時は「珍しい野菜が売れない時代」。オクラさえ珍しいとされ、売りにくい商品だったといいます。丹精を込めて育てた多品目野菜のうち、西洋野菜やハーブが売れ残り、「なぜだろう」と悔しい思いをしたという小山さん。そこで、花のように美しく束ねて“魅せる”ことでその良さを発信する、ベジブーケを思い付きました。

現場スタッフなど身近な人に向けて作り始めたベジブーケでしたが、ホームページ上での本格的な発信をきっかけに、全国から注文が殺到するようになりました。今年は印西市のふるさと納税の返礼品にも選ばれ、ファンを広げつつあります。

野菜づくしのウエディングブーケ、友情から生まれた「動物」ブーケ

「結婚式にベジブーケを使いたい」というオーダーも増えています。「野菜が大好き」というカップル用に、花嫁のブーケから装花、両親贈呈用の花束までをすべて野菜やエディブルフラワーで製作。「忘れられない結婚式になった」という新郎新婦の言葉は、小山さんの宝物です。
ベジブーケの持つ瑞々しい生命力ゆえか、テーブルに飾るとブーケを中心に「前向きで明るい会話が生まれる」(小山さん)といいます。結婚式では、引き出物としても活用できるのもポイントです。

商品ラインナップの中には、動物向けのベジブーケというユニークなものもあります。きっかけは、「飼っていたウサギが亡くなってから、友達がふさぎ込んでいる。命日にお供えするブーケを作って欲しい」という、飼い主の友人からのオーダーでした。小山さんはウサギの好物を調べ、ニンジン・水菜・カブ・ラディッシュなどの野菜でブーケを作ったといいます。特別にタンポポも根から掘って束ねました。愛犬家向けの「DOGベジブーケ®アレンジメント」は、ブロッコリーに黒豆の目と赤唐辛子の舌を付けて、プードル犬に見立てた可愛らしい作品です。

小山さんがベジブーケ作りで一番大切にしているのは、「用途に合わせて旬のものを使うこと」です。日持ちや贈りもの年齢、性別、雰囲気の希望を聞いて、その時一番美味しい野菜を選び、デザインを考案します。アレンジは、一つとして同じものが出来上がったことはありません。「華やかに」というリクエストには、鮮やかな色のミニトマトやエディブルフラワーを使い、男性に贈るブーケには、ブロッコリーなど食べ応えのある野菜を使う―といった具合に、受け取り手を想って一つ一つ束ねます。

色つや・日持ちUP 堆肥から手作りの有機野菜

ベジブーケ

栄養士の資格も持つ小山さん。「お金よりも大切な“健康”を贈れるプレゼント」とベジブーケの魅力を語ります。

ベジブーケ作りに使う野菜は、土づくりからこだわった有機栽培です。畑の裏山で集めた腐葉土から作った自家製堆肥のお陰で、味が濃く、色つやが映えて日持ちがする、ブーケ作りに適した野菜ができます。朝に収穫した「一番美しい状態」(小山さん)というもぎたて野菜を使えるのは、農家ならではの特権です。

「農家の仕事は、汚れるし、暑かったり寒かったりで大変。でも、食べ物を自分で生産できるってすごいこと。それをベジブーケを通じて、一緒に作っている仲間や消費者の方にも感じてもらえれば」と、小山さんは願いを込めます。昨季は、天候不順で資材となる野菜の確保に苦労しました。「一年を通して安定してベジブーケを届けられるよう、賛同してくれる生産者さんが増えてくれれば」と、今後の広がりも期待しています。
受け手と“農”への愛情、そしてオリジナリティあふれるベジブーケを、大切な人の誕生日や記念日に贈ってみてはいかがでしょうか。

野菜のブーケ『ベジブーケ』オフィシャル・サイト
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