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京都の老舗 林万昌堂に聞く! 良質な栗の条件と、甘栗が作られるまで

京都の老舗 林万昌堂に聞く! 良質な栗の条件と、甘栗が作られるまで

6,000年以上も昔から人々に親しまれている栗。日本や中国では特に人気があり、横浜中華街を歩けば天津甘栗を販売する屋台も多く見かけます。そんな甘栗に魅了され、甘栗がどのように作られるかを知りたい方は多いでしょう。今回は、おいしい甘栗ができるまでの流れを京都の老舗「林万昌堂」の代表取締役 林 雅彦(はやし・まさひこ)さんに伺いました。

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味付けは一切なし!甘栗の甘みは栗本来のもの

甘栗とは、釜の中に栗と石を入れ、石を熱することで栗に温度を伝えて、栗本来の甘みを十二分に引き出したもの。日本では、天津甘栗とも呼ばれます。林さんは言います。

「多くの方に誤解されていますが、甘栗の甘みは人工的な物ではありません。皮を剥かずに栗を焙煎して販売するため、味付けはできないのです」。

甘栗は、栗にもともと備わっている本来の甘みや風味を活かします。そのため、栗選びには糖度が高い良質な品種を選ぶことが重要です。

種類が大切。甘栗に適した「良質な栗」とは?

林万昌堂では、中国の青竜満族自治県(せいりゅうまんぞくじちけん)という地方で生産される「河北栗子(かほくりつ)」と呼ばれる栗を使用して、甘栗を製造・販売しています。この地域の地質は鉱山質であり、土中のミネラル分が豊富。さらに、降水量が少ないため、栗の木は深く根を張り、実へたくさんの養分を送ろうとします。こうした要因により、栗の甘味はいっそう高まるのだとか。

「国産の在来品種は、実に含まれる糖度は10%程度。しかし、河北栗子の糖度はその3倍の30%にのぼります」と、林さん。ほかにも、河北栗子には国産品種と比べてフェノールと呼ばれる分泌物が少なく、栗の実を皮から剥がしやすい性質を持っています。そのため、河北栗子は甘栗に適しており、風味豊かな甘栗の原料となるのです。

栗の収穫から、美味しい甘栗が提供されるまでの流れ

「その日に売る甘栗は、その日焼き上げたもののみ」。1874(明治7)年の創業以来、この理念を掲げてきた林万昌堂は、次の流れを経てお客さんへと甘栗を提供します。

1.甘栗に適した栗を栽培する村から、良質な栗を調達

甘栗づくりの第一歩は、良質な栗の調達から。林万昌堂は、1992年から毎年、生産者の村を訪れ、河北栗子を買い付けていると言います。この地域の栗は品質こそ良いものの、認知に乏しく、栗としては二級品のように扱われてきたのだそう。しかし、林万昌堂との取引が進み、同社が良質な栗を毎年販売する事により、日本国内での認知は瞬く間に広がりました。今では、同社が上海で甘栗販売を行っている事も相まって日本や中国の甘栗の製造・販売業者の間でもナンバー1のブランドを確立しているのだとか。

林さんは言います。「私たちが初めて村を訪れたころは、夜に裸電球がぼんやり灯っている農家が立ち並んでいるような村でした。しかし、取引が盛んになるにつれて、村は年を追うごとに豊かになり、今では豪華な建物の家も多く見受けられます」。

2.日本に輸入され、規格選別が行われる

村から仕入れた栗は、選別加工場で80kg単位の麻袋詰めされ、コンテナーに乗って日本の港に到着します。そして、店舗に運ばれるまで、専用の冷蔵庫の中で保存されます。

冷蔵庫からは使用量に応じた量の栗を出庫しその都度、良品選別・規格選別されます。腐った栗や乾燥したものは事前に取り除かれ、栗に含まれる水分の割合や規格の大小によって選別されます。これにより、栗の焙煎時にムラなく火を通すことができ、焼き上げを一定に揃えることができます。

3.店舗にて、選び抜いた栗を焙煎

規格選別された栗は店舗に送られ、焙煎されたのち、お客さんへと提供されます。この時、甘栗は以下の流れで焙煎されます。

・釜に火を入れ、釜の中の石が一定の温度になると栗を投入する
・栗へ均等に温度を伝えるための石と栗が程よく混ざり合うように、水あめを入れてスコップでかき混ぜる
・割れた栗や虫食いの栗は残さず取り除く

見た目はどの栗も同じように見えるため、焼き上がりの見極めは経験をもとにした勘頼りです。
職人の五感が頼りであり、もっとも難しいポイントなのだとか。

「栗はとても素直です。加熱の丁度よい頃合いにはブクブクと文句を言い始めます。そのまま加熱しすぎると
堪忍袋の緒が切れて、はじけてしまいます。だから、栗が文句を言い始めると、火を切って様子を見るのです」。

焼きすぎては割れてしまい、火が足りなくても甘味が引き立たない。丁度いい頃合いを見計らって焙煎することが重要なポイントなのだと言います。

近年では、国産の栗にも甘栗に適した品種が登場している


林万昌堂は、風味豊かな甘栗を提供するため、これまで良質な栗の条件を満たす中国の品種を使ってきました。
しかし、近年では茨城県つくば市の果樹研究所で「ぽろたん」と呼ばれる、中国の栗と似かよった特徴を持つ国産品種が開発されました。栗に含まれる糖度は20%と従来の国産品種と比べて倍の糖度を持っています。

「当社はぽろたんを使って2017年から試験発売を始め、お客さんからは好評を得ています」と、林さん。現在は、丹波地方の生産者と提携してぽろたんの生産に取り組んでいると言います。今後はさらにぽろたんの美味しさを多くのお客様に知ってもらえるように、国内の生産者を募って、積極的に買い付けを行っていくそうです。日本の栗農家の、今後の発展に注目が集まります。

林万昌堂

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