若い人が繋いでいかなければ廃れてしまう
著者の湯川真理子さんは大学在学中にシナリオ作りを学び、卒業後はテレビ局の主婦向け番組に関わってきました。NHKの「バラエティー生活笑百科」や毎日放送の「ちちんぷいぷい」などを担当。特に食に関する番組制作を多く手掛けるうちに生産者への関心が高まり、番組内で農家を取材することになります。
農家の高齢化が進むなかで、意欲的に農業を楽しむ若者たちと出会い「幸せと勇気をもらった」という湯川さん。テレビ番組では触れられなかった売り上げや補助金の話、売り方などについて詳しく書かれた事例集を出版したいと考え、「宝は農村にあり 農業を繋ぐ人たち」が誕生しました。これから就農を考える人、就農したばかりの若い農家の方々にとって、必見の情報が満載です。
農家9人の物語
この本には9組の農家が登場します。そのうち6組が30代の若手農家。年間売上、経費、補助金、農地面積、スタッフ数など詳細を公開しているので、貴重な参考事例としても役立ちます。
9組の農家は、以下の9つの章に分けて紹介されています。
※本文より抜粋
【第1章】
塩人参『スウィートキャロットリリィ』を開発
鈴木啓之さん・薫さん(愛知県碧南市)
主な栽培品目:人参、玉ねぎ、馬鈴薯、里芋、他。人参の加工品
売上:2,000万円前後
【第2章】
後継者がいない希少な独活(うど)を未来へ繋ぐ
中井大介さん・優紀さん(大阪府茨木市)
主な栽培品目:三島独活、米
2016年売上:150万円
【第3章】
草刈り大好きから15年、計画と実行で成長する農業女子
北野阿貴さん(大阪府羽曳野市)
主な栽培品目:碓井えんどう、米、軟弱野菜
2016年売上:約150万円
【第4章】
若手だけで念願の出荷組合を作る
小林庸恭さん(大阪府羽曳野市)
栽培品目:ぶどう30品種以上
売上:約800万円
【第5章】
農業女子100人プロジェクト
片山恵美さん(滋賀県東近江市)
主な栽培品目:カボチャ15品目を含む約50品種
売上:220万円
【第6章】
世界に広がれ、大阪発の糠漬け(ぬかづけ)キット
草竹茂樹さん(大阪府阪南市)
主な栽培品目:水なす、ネギ、軟弱野菜全般
【第7章】
発想の転換、10種のサラダミックスがヒット
中島光博さん(大阪府和泉市)
主な栽培品目:西洋野菜、ハーブ、ビーツ
総売上:約2,600万円
【第8章】
99歳の祖父と守り育てる花御所柿
岡﨑昭都さん・富蔵さん(鳥取県八頭郡)
栽培品目:花御所柿、西条柿、輝太郎などの柿、米
売上:400万円
【第9章】
先祖代々の農地を受け継ぎ、新たな挑戦。ブランド野菜に勝機あり
射手矢康之さん・智子さん(大阪府泉佐野市)
主な栽培品目:キャベツ、玉ねぎ、米、加工品
売上:農作物1億3,000万円、加工品1,000万円
主婦の方や“ちょっとしんどい人”にも読んでほしい
「滋賀県の農業女子、片山恵美さん(第5章に登場)は取材中に結婚、出産をされました。最初は畑でデートしてるなんて話をしてたんですよ。畑だと長時間一緒にいられるからうれしいって。それが今は立派なお母さんです。お子さんが生まれても農業を続けていて、辞める気は毛頭ないのだそう。農家の方は常に自然と向き合っているから、特別なたくましさがあります。私自身も、若い農家さんからたくさんのことを学びました」と湯川さん。
昨年10月、この本を出版した際には、何年も前から一緒に仕事をしてきたという原田伸郎(はらだのぶろう)さんのラジオ番組「原田伸郎 のびのび金曜日」(ラジオ関西)に出演。取材を続けるなかでわかった新規就農の問題点などについて、トークを繰り広げました。原田さんからも「悩んでいる人の突破口になるような、何かのきっかけ作りになるような本。ぜひ皆さんに読んでもらいたい」とお墨付きです。
「農業に興味のある人だけではなく、食に関心のある主婦の方や、生き方に悩んでいる人々にもぜひ読んでほしい」と湯川さんは言葉を強めます。読めば元気をもらえる、必読の実録集です。
「宝は農村にあり 農業を繋ぐ人たち」
著者:湯川真理子
出版社:西日本出版社
定価:1,620円(税込)
写真提供:湯川真理子